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shk side
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“ ご利用 、 ありがとうございました ! ”
_ そう 、 あのベルマンが
言っていたことを思い出した 。
俺は今 、 空が泣く街に 戻 って 、
レストラン( どこかのメガネの せいで
もはや酒場だが )を開いている 。
… そう 、 無職卒業だ 。
「 まさか 、 ベルマンが生きた人間
じゃなかったなんて思わなかったけど 」
頭を掻きながら笑うと 、 俺の目の前
に 立つベルマンもにこりと微笑んだ 。
『 まぁまぁ 、 生きてるかどうか
なんてどうでもいいじゃないですか ! 』
「 まぁな 。 俺はお前がちゃんと
仕事してくれるならそれでいい 。 」
「 あと 、 もうそろオープン時間
だから 、 ちゃんと脚隠せよ ? w 」
『 わかってますって w
任せてくださいよ ~ ! 』
「 いや 、 結構怖いね 」
_ この街から1度俺は出た 。
だが 、 長年働いていたからか 、
外の世界に慣れることができず 、
戻ってきてしまっていた 。
幸い 、 俺はレストランを開く 許可
を得て 、 俺と唯一の従業員である 元
ベルマンのNakamuと共に開店をした 。
「 あ 、 そうだ 」
「 今日は “ あいつら ” が来るからさ 、
夜はクローズ表示にしといて 」
『 … 皆様が来るのですか ! ? 』
ぱあ と表情が明るくなったNakamuが 、
可愛らしい小型犬のように見えてきた 。
「 うん 、 今日は全員お揃いのようで 」
『 … ふふ 、 楽しみですね ! 』
「 だな 。 Nakamuも酒呑むか ? 」
『 ん ー 、 僕はやめておきますよ 』
『 シャークん様がお呑みに
なったらいかがですか ? 』
「 あ ー 、 んじゃお言葉に甘えて w 」
冗談まじりの会話をし 、 店の看板を
CLOSE から OPEN へと表示変更する 。
「 んじゃ今日もよろしくな 、
ベルマンのNakamu ? w 」
『 もう 、 さっきみたいに
Nakamuと呼んでくださいよ w 』
「 ベルマン呼びに慣れちまったからな 」
『 シャークん様もシェフ
だったじゃないですか … 』
「 今は店長な ! w 」
『 それを言ったら私も
今はウェイトレスですから ! w 』
「 確かに w 」
そんな会話を交わしていると 、
早速たくさんの客が来た 。
このレストランはこの街でもトップ
と言われるほど飯が美味い 。
そう 、 ある記者が言っていた 。
『 ご注文はいかがなさいますか ? 』
脚元を隠しながら接客を す る
Nakamuを見ながら 、 俺も
張り切ろうと持ち場へついた 。
_ Nakamuは 、 よく働いてくれる 。
生きていないからか 、 1度に何人もの
接客ができるから 、 今迄たった2人きり
でこの店を回すことができた 。
そういえば 、 と過去を … ホテル
に 居たときのことを思い出した 。
睡眠時間だと知らせるアレは 、
きっと俺らの動きを見ることが
できていたから 。
俺たちが唯一浸水していない階に
居たとききたあの電話は _
あれ 、 一体どこからだったのだろうか 。
… 何故彼は _
「 … そう考えると 、
アイツって謎しかねぇな w 」
『 9番テーブル 、 雨降り
白身魚のムニエル を2つ ! 』
「 は ー い 」
まあ 、 このことを考えるのは
今日の業務が終わってからでも
遅くはないだろ 。
「 俺も仕事しますかぁ ー 」
_ 今度こそ 、 人を殺めないように 。
「 Nakamu ー 、
業務終了 ! お疲れ様 ー 」
Nakamuの触れられない肩に
そっと手を置くふりをする 。
『 シャークん様こそ 、 お疲れ様です 』
「 もう表示は変えてあるか ?」
『 ふふん 、 バッチリですよ ! 』
「 それなら良かった 。
そんじゃ後は待つだけだな 。 」
『 ですね ! 』
『 あ 、 そういえばなんですが … 』
口をぽかんと開け 、 思い出したように
目も見開くNakamuを見つめる 。
「 ん ? 何かあったか ? 」
『 はい 、 今朝見たんですが … 』
『 僕たちのことが載っている
記事の横に 、 あの方の自作薬が
成功した って記事があったんですよ ! 』
「 … それ 、 本当か ! ? 」
そう驚いていると 、 タイミングよく
チャリン という音が鳴って扉を見た 。
《 よぉ 、 元気してるか ? 》
〈 来たよ ~ ん ! 〉
元気そうにはしゃぐ背の高い男と 、
白衣を身にまとい 、 隈が
見え始めた男 がそこには居た 。
『 あ 、 いらっしゃいませ ! 』
『 “ Broooock様 ” 、 “ スマイル ” 様 ! 』
「 いらっしゃい 。
スマイル … よくやったな 」
俺は白衣を身にまとった
男の頭をそっと撫でた 。
身長差があるから 、 背伸びはしたが 。
《 … あぁ 。 》
全く 、 相変わらず無愛想だな
と思いつつも 、 俺はもう1人の
背の高い方にも話しかける 。
「 Broooockも久しぶり 。
元気してたか ? 」
〈 ん ッ ふふ 、 もっちろん ! 〉
背の高い男の方は 、 今は
この街に留まっていない 。
そういえば 、 “ あの画家 ” も
この街からは離れたと聞いたな 。
〈 最近はどデカいスクープ
がありましたからねぇ ? 〉
ニヤリ と笑う男に呆れながら 、
俺はスマイルからそっと離れた 。
《 そういえば 、 今日
アイツは来てないのか ? 》
スマイルが言う “ アイツ ” は 、
こういった集まりには 1番最初に来る
メガネを掛けた男のことだ 。
〈 あぁ ~ 、 あの *ファッキン* 神父 ?〉
『 *ファッキン*神父って …
きりやん様が可哀想ですよ w 』
「 そういえばそんな
呼び方してたな 、 俺ら w 」
《 そんな呼ばれ方
し てたのかよアイツ … w 》
そう話していると 、
またもやタイミングよく
扉の方から音が鳴った 。
【 んなぁ ゛ ~ … 】
[ コイツヤバすぎ w ク ッ ソ重いし … ]
『 あ ! “ きんとき様 ” に 、
“ きりやん様 ” ! 』
「 いらっしゃいませ ー 」
《 らっしゃっせ ー 》
〈 やっほ ~ 、 きりやん酔ってない ? w 〉
扉を開けたのは “ 元 ” 画家の男 。
彼は確か … 今は
歌の道に進んだと聞いた 。
[ そうそう 、 街中でぶっ倒れてたわ w ]
「 確定で2日酔いじゃねぇか w 」
『 昨日も来てましたし 、
絶対そうですね … w 』
《 アイツ本当に神父か ? 》
そんな風に笑っていると 、
顔色の悪いメガネの男が顔をあげた 。
【 吐きそ 、 】
『 え ~ お客様 、 御手洗 は
通路奥の右手側にございます 』
「 ッ ふ は w 」
中々ないNakamuのボケに
俺たちは一斉に笑いだす 。
【 うぃ … あり 、 】
言われた通り奥へ向かうメガネの男 …
神父のきりやんを笑いながら見守り 、
俺たちは近況報告をし合った 。
「 自作薬 、 内容聞いて
ないけどどんなんよ ? 」
《 あぁ 、 あれな 。 Fishポーション
を改善して 、 地上でも使えるよう
にしたんだ 。 そしたら … 》
〈 その効果を発揮できる患者さんが
来て 、 効果の証明ができたってわけ ! 〉
[ Broooockが説明すんのかよ w ]
〈 まぁ 、 記事書いたのは僕だし ~ ? 〉
『 そういえば 、 Broooock様は
色々な所で記事を書く有名な記者
になったのだと聞きましたよ 。 』
〈 そう ~ ! 凄くない ? 〉
《 凄いと思う 》
「 な 、 えぐいわ 」
〈 でしょ ~ ! 〉
『 きんとき様は 、
最近の調子はいかがですか ? 』
一拍あけてNakamuが訊ねると 、
きんときは少し考えてから頭を搔いた 。
[ 俺も結構成功 … してるかな 、
まだ駆け出しだからわからないけど w ]
[ 意外とこの街の外では流行ってたよ ]
《 へぇ 、 歌ってみてくれないか 》
[ えぇ 、 恥ず ッ ! ]
スマイルの悪ノリに乗っかり 、 俺と
Nakamu 、 Broooockが茶化した 。
「 歌え歌え ~ ! 」
『 聞いてみたいです !
きんとき様のお歌 ! 』
〈 僕も聞きたぁ ~ い ! 〉
[ … しょ 、 しょうがないなぁ 、 ]
俺たちに押されて
きんときが歌い出した 。
歌っている曲は 、 以前にも
聞いたことがある 。
確か _
「 びいどろ 」
そう呟いたとき 、 俺は店の奥
の方にある1枚の絵を見た 。
このレストランを開くと
決まったときに 、 ある画家に
描いてもらった … 画家の 、 最後の絵 。
『 … あの絵 、 素敵ですよね 』
俺が奥の絵を見ていたことに気がついた
のか 、 Nakamuが耳打ちをしてきた 。
「 … あぁ 、 思い出の絵だしな 」
そう考えると 、 今のこの店は
きんときに包まれているのだと思う 。
_ なんか 、 それはそれで
ありかもしれないな 。
胸に手を当てた瞬間 、
綺麗な歌声がぴたり と止んだ 。
《 上手ぇな 》
〈 ね ! 感動しちゃったよ ~
次の記事にしてあげよう ! 〉
[ 何様だよ w ]
『 でも 、 本当に素敵でしたね ! 』
「 だな 、 こりゃ人気に
なること待ったなしだな 」
そう話していると 、 奥の方から
先程より若干顔色の良くなった
神父がとぼとぼと出てきた 。
【 まじしにそ … 】
〈 神父さぁん 、 ちょっと来るの
遅かったんじゃない ? w 〉
〈 今世代最強の歌手の歌声 、
聴けなかったねぇ ~ ? 〉
煽るようにきりやんに
話しかけていく Broooock 。
【 何言ってんだお前 、 】
「 火力高ぇ … 」
[ 今世代最強って … なんかやだな ]
照れたように頬をかくきんときを横目に 、
スマイルが眠そうに口を開いた 。
それに続けて 、 スマイルが仕切り出す 。
《 そろそろ座らね ?
俺疲れたし 酒呑みたいかも 》
〈 いいねぇ 、 僕も呑みたぁ ~ い 〉
【 ぐぅ … 俺も ー ! 】
『 きりやん様は駄目ですよ ~ ? 』
2日酔いだったきりやんを
Nakamuが止め 、 呆れたように笑った 。
「 … きんときは呑むか ? 」
[ いや 、 俺は辞めておくよ 。 ]
「 ん 、 じゃあ代わり になんか要るか ? 」
[ えぇ … ど ー しよ ]
少し困ったように眉を下げ 、
間をあけて突然思い出したように
聞き覚えのある料理名を口に出した 。
[ んじゃ 、 シェフの
きまぐれミートパイで ! w ]
「 了解 w ホテルのときのでいいな ? 」
[ もちろん ! 今回は時間掛けんなよ w ]
「 分かってるって w 」
「 それじゃ待ってろよ 」
[ は ー い ]
_ 今回はミートパイを作るのに
時間があまり掛からなかった 。
「 やっぱ 、 毒が混じって
ないからかな … w 」
やはり作りやすさが段違いだ 。
そう思いながらきんときの元へと運ぶ 。
「 あれ 、 お前らまだ乾杯してないの 」
《 きりやんが酒を盗ろうとするからな 》
「 そういうこと ? w 」
〈 酒カスめ … 〉
【 違うし ー ! 】
駄々っ子のようにゴネるきりやん
を見て笑いながら 、 俺はきんとき
の机にミートパイを置いた 。
「 はい 、 ご注文の “ シェフの
きまぐれミートパイ ” と 、
ついでのカシオレな 」
[ おぉ 、 美味そ ! 上達した ? ]
「 まぁな ! w 」
料理が褒められることには慣れている
と思っていたが 、 こいつらから
褒められるのは慣れていないみたいだ 。
だからか 、 少しばかり照れていると
Broooockが泣きそうな
声色で声を掛けてきた 。
〈 ねぇ この酒カスにお酒あげよ ~ ? 〉
〈 暴走しちゃうよ ~ 〉
「 あぁ … しょうがねぇな 、 w 」
『 では 、 私が持ってきますね 』
『 度の弱いお酒を 』
【 えぇ ~ ! ? 】
まだ駄々をこねそうな様子の
きりやんをスマイルが宥め 、
その隙に素早くNakamuが
お酒を取り出してきた 。
『 シャークん様も席にどうぞ 』
「 … じゃ ありがたく 」
「 Nakamuも座れよ ? 」
『 えぇ … ではカシスオレンジを 』
「 はや 、 準備済みかよ w 」
《 早く呑もうぜ 》
〈 じゃあシャークんが合図を … 〉
[ 俺もカシオレでさんせ ー ん ]
【 おっ酒 ッ ~ ! 】
「 それじゃ改めて 」
「 乾杯 ッ ! 」
“ かんぱ ー い ! ”
_ 元気な6人の声が響いたレストラン 。
俺たちが 、 集まって話せる 大切な場所
「 また 、 全員で話してぇな 」
俺以外が眠った店で 、 小さく呟いた 。
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