テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#切ない
104
第10話
それからは何事も無く一週間が経った。
今日は帰る日。
アニカも「前より強くなったから後で、剣術も教えて欲しいなって……ふふっ」と笑顔で言ってくれた。
彼女は心の余裕が出来るようになった気がする。僕が素振りと実戦をしている間に何があったのか気になるけど何か崩しそうで何も聞けない。
僕はソフィー用のお見上げを買いたかったけど何を買えばいいのか分からないまま立ち止まっている。
アクセサリーなのか、食器なのか、服なのか花なのか全くだ。
「何を探しているの?」
そう言ってアニカが隣に来た。
そう言えば、『アニカ』と呼ぶのはまだまだ恐れ多くてカチカチになってしまう。そんな僕を見て少し寂しそうな顔をするけど、僕にはできっこない。
僕は戦う事以外何もできない、兵器でしか無いやつなんだから……
「ソフィーに何か買ってあげたくても、何がいいのか……」
「それじゃあ、このイアリングとかはどう? このデザインだったらあの綺麗な髪と肌が映えると思うけど、こっちのペンダントも外せないよね……」
アニカは目をキラキラと輝かせて色々なアクセサリーを手に取っている。
全く分からないまま立っていると「やっぱりこれが似合うと思うけど……どうかな?」と言ってアニカがペンダントを掴んだ。
そのペンダントは青い石があしらわれていて、その石はまるでアニカの瞳のように見えた。青い石の周りには白い不透明の石で装飾されて茶色の革の紐で結ばれている。
「どうでしょう……もちろん、ロルフが決める事なんだけど……」
「うん。とってもいい」
僕が頷くとアニカはパッと笑顔になった。
それから、会計を済ましてから街を出た。
それからは強い魔獣が出る事は無かった。
ちょっとしたゴブリンや猪だけだった。急所を一突きすれば倒れてくれる。
最近、あの危険な森に入ってたから感覚がずれたのかもしれない。
二日後。
「おかえり!」
そう言ってソフィーが僕の事を笑顔で迎えてくれた。
「お見上げなんだけど……これで良かった?」
僕が持っていた紙袋を受け取って中身を見ると笑顔になった。
「可愛い! 一生大事にするから」
そう言ってソフィーはペンダントを着けた。とても似合っていた。
これは、アニカにお礼を言わないと……だけどこういう時ってどう言うのが正解なんだ?
……分からない。
「ん? どうしたの?」
「あ、何でもない。最近、魔物が強くなってるから気を付けてね。一緒にいる時は護れるけど、一人の時は逃げて」
「うん。分かってるから大丈夫。お兄ちゃんこそ、無理して体を壊さないでね」
ソフィーは嬉しそうに部屋へ戻っていった。
僕はその日の夜に久しぶりにサンコウの木へ向かった。
「僕は、戦う事以外できない兵器でしか無いけど、家族も護れないのかな……」
そう言って僕は夜空を見上げた。その中の二つが僕の両親だと思う。
なんだか涙が溢れてきた。
こんな事で姫を護る騎士が泣いていいの……?
誰か教えて……
僕には魔法の才能も、気持ちを悟る才能も、人付き合いの才能も無い。
僕は落ち着いてから家に帰った。
アニカと会ってから半年が立った。夏が過ぎて過ごしやすい気温になってきた。
最近はとても魔物が強くなっている。いつものようにソフィーに行ってきますの挨拶をしてから王城へ向かった。
今日はとても嫌な胸騒ぎがするけど、気の所為だと思って考えを振り払った。
今日はアニカと一緒にエルドへ偵察に行く予定だ。今回は南の方へ行くので魔物はそんなに強くないと思う。
でも出発する前に黒い雲が北からこのホルムの大地を覆った。
魔物も活発になったように見える。
「何、あれ……」
僕はそう腰を抜かしているアニカ姫を城の外へ避難させた。
途中に会う魔物もいつもの何倍もの強さで所々に傷を負ってしまった。
アニカは無傷だけど、体力が保ちそうに無い。僕たちは洞窟に避難する事にした。
「ここで休憩してて。僕は襲ってくる魔物を倒すから」
アニカを背にして言ったからどんな表情をしていたのか分からない。だけど、怯えていたのは確実だろう。
実際に、僕も怖い。こんな量の魔物を相手にした事が無いし、僕の手におえない量の魔物が襲ってくる。
でも僕の仕事はアニカを護る事。アニカを安心させる事。ただそれだけの攻撃専用の兵器。
だから、不安気にするなんて以ての外。
僕は手が震えながら、返り血を浴びて、傷を負いながら戦った。
痛い、逃げたい、泣きたい、怖い。そんな気持ちを心の奥でグッと押し殺すのに必死だった。
「ロ、ロルフ……」
そんな声が聞こえた気がした。後ろを振り向くと涙が溢れ出したアニカがいた。僕はその瞬間体に力がはいらなくなって膝をついた。
「っ……」
「ロルフ!」
そう言ってアニカは僕の方へ走った。
駄目だよ。魔物は凄い強いからアニカまで怪我をしちゃう。
アニカは容赦無く襲ってくる魔物の相手をした。水の魔法を巧みに使ってしのいでいるように見えるけど、整った顔に切傷ができたりしていた。
それでもアニカは護るのに必死だった。
そんな時、まばゆい光で広大な大地が包まれた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!