テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「え?か、かんなぎってもしかして巫ですか⋯? 」
戸惑いながら問う私の方を向き、コクリと小さく頷いた。そして私はまたとても戸惑った。
「あ、あの⋯巫って何をすればいいのですか?」
「俺の、近くに、いてくれたら、それで、いい」
そ、そ、そんなの!お嫁さんみたいじゃない!でも、私はオリノカミ様のことなんて全く知らないに等しいし⋯。
「ツユ⋯?」
可愛く見えてきちゃった⋯。わざわざしゃがんで、私の名前を呼ぶオリノカミ様が!
「ツユ、話、ある」
「はっ⋯どうしましたか?」
何だかオリノカミ様が真剣な声で真剣な話をしようとしている。どうしたのだろう。
「結婚、しよう」
「え?」
何、一体どういうこと!?
「嫌、だった?」
「そ、その嫌とかそういうのではなくてですね?驚いたというのもあるのですが、ただ少しばかり、まだあったばかりの私が、貴方と結婚するなんて貴方は嫌じゃないのかなって、思ったんです」
「俺、ツユ、好き」
え?す、好きってまだ出会ったばかりなのに⋯?お互いのことだってまだ知りきれていないのに⋯?そう思った瞬間、私はオリノカミ様に向かってこう言っていた
「⋯ならその布、取ってください。私のことが好きなら、それくらいできますよね?」
「⋯できない」
「なんでですか?やっぱり私のことが好きだなんて嘘じゃないですか!」
私は、好きと嘘をつかれたことが何故か悲しくて、強めにオリノカミ様に言い放った。
「⋯」
黙りこくってしまった。俯き、しゅんとした肩をしたまま固まってしまった。流石に強く言い過ぎたと反省し、オリノカミ様に謝ろうとした瞬間、オリノカミ様がゆっくりと近づいてきた。いきなり動き出したので驚き、後ろに下がろうとすると、オリノカミ様の腕が私を止めた。オリノカミ様は私の至近距離へと近づくと、もう一方の手で布を口上まで上げた。そして、私の首元にそっと優しい口づけをした。
「好き、だよ」
耳元で囁かれた言葉が妙に恥ずかしくて、ついオリノカミ様を突き飛ばしてしまった。
「⋯また、ね」
そう、拙い言葉だけを置いて去ってしまった。嫌だから突き飛ばしたのではないと弁明する余地もなかった。知らない部屋、知らない扉。何処へ行けば彼に会えるのだろうか。温もりを持った首元に手を当て、私はベッドに倒れ込んだ。