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「すっちー、こっちこっち! ペンギンのエリアあったよ!」
みことがうれしそうに手を引っ張る。
その手はほんの少しだけ汗ばんでいて、すちは思わず微笑んだ。
「走ったら駄目、転んじゃうよ。」
「だって楽しみすぎて……」
「俺も楽しみにしてたよ。……初デートだし。」
みことはその言葉に反応して、ふと立ち止まり、こちらを振り返った。
「……ねえ、これってほんとに、デートだよね?」
「そうだよ。俺ら、付き合ってるでしょ?」
「うん、でも……まだちょっと、夢みたいで……」
すちは黙ってみことの手を握り、そっと指を絡めた。
「夢じゃないよ。ほら、こうしてちゃんと繋がってる。」
「……うん。」
少しだけ照れたように笑うみことの顔に、すちは一瞬見惚れた。
「……かわいすぎて困る。俺、今日めちゃくちゃ理性使ってる気がする。」
「えっ……なにそれ、こわ……」
「安心して、まだ外だから自重してる。……でも、覚悟しといてね?」
「な、なにを……!」
そんなやりとりをしながら、
ふたりはペンギンの前で並んで立ち、ずっと手をつないだままだった。
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「わぁ、このカフェかわいい……!」
ナチュラル系の落ち着いたインテリア。
壁際の小さな二人席に案内されて、みことはうれしそうにメニューを開いた。
「……パンケーキ食べたい!すっちー、甘いのいける?」
「みこちゃんが食べるなら食べようかな」
「え、なにそれ、付き合い?」
「付き合ってるからね。」
さらっと言われて、みことは少し顔を赤くして下を向いた。
やがて運ばれてきたふわふわのパンケーキを、ふたりで食べる。
「すっちー!…はい、あーん。」
「……みこちゃんがくれるの?」
「うん。恋人っぽいでしょ?」
すちは一瞬、じっとみことを見つめたあと、 スプーンごと口に含んだ。
「……みこちゃん、他の人にもこんなことしないでね。」
「え? しないよ? なんで?」
「……みこちゃんの“恋人っぽい”は、俺だけにしてほしいから。」
みことが目をぱちぱちさせる。
「……うん、するつもりないけど……すっちー、ヤキモチ?」
「言ったでしょ。俺、独占欲強いからね。」
「わ、ほんとにちょっと怖いかも……でも、ちょっとだけ……嬉しい。」
「ちょっとじゃないでしょ。顔、にやけてるよ。」
「すっちーがかっこいいこと言うから、仕方ないじゃん……っ」
ふたりの間に置かれたコップの水。
みことが間違えてすちの方を飲んでしまう。
「……あ、ごめん。こっち、すっちーのだった……」
「いいよ。むしろ……わざとかなって思った。」
「ちがっ……! でも、なんかもう、どっちでもいいや……」
「ふふ、じゃあこのまま、帰りも俺の手、離さないでね。」