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「真相を証明するに当たって必要なのは?」
「えーっと…Evidence、Logic、Objectivity、Admissibility?」
確かそうだったはず。
「せぇーかい♡」
「闇鶴さん、言い方!気をつけて下さい」
「…ごめんなさーい」
ふてくされてる…あはは…。
「じゃあ先ずは信頼できる証拠から。」
「えーっと、其れはさっきのデータで充分じゃ?」
「んー…でも良いけど此れは現場で最後に撮るとしてぇ」
なにか嫌な予感がよぎったのは気の所為。
「では、次に理論的な推理と組み立てですね」
「おー、僕が寝てた間に話が進んでるみたいだねぇ。」
「うわぁっ!」
び、びっくりした…。
自由すぎる…
「良いから進めますよ」
「んー…推理も何も今回は証拠が揃ってるし、別に法定に行くわけじゃないからスキップ〜」
「はいはい、わかりましたよ。では次に_」
「いいや、今回は其処までしなくて良い」
何故だろう。基本的に…否、きっと何かあるのかな…。
でも不安。
あの場に戻りたくない。
「あれ、メッセージが来てる………は?」
闇鶴さんの低音。
ソプラノの声がアルトになった。
「おや……此れは許しがたいですね」
「おや…酷いことをするものだねぇ。流石にバレるだろうに」
何だろう…
「暁月さんや素晴さんまで…?」
私が見ようとした瞬間、闇鶴さんは空中に浮いていたであろう文字を消し去ってしまった。
「急いで探偵事務所ニヒルに行くよ。…梨亜は着いてきちゃ駄目」
「え?何故…?」
「いいから!素晴、暁月、行くよ」
「はいはーい」
「了解です」
彼女たちがささっと事務所を出ていった後、私は気になってしまった。
どうしたんだろう…と。
恐怖も有るが、人が居ない道を使い、彼女たちを尾行した。
「アポ無しですいませーん!私達、スペスリストです」
「あれぇ?誰も来ないはずじゃなかったんですかぁ…?グスッ…あのぉ…みんな、しんじゃってぇ…」
部屋には赤。どこを見ても赤。カーテンまでもが赤。
原因は横たわっている竹村唯斗と斎藤泰造だろうか。
ギリギリ判断できたのはアクセサリーのおかげだ。
「でもぉ…見られたからにはぁ…生かして返せないんですぅ」
武器はない…?
「武器がないのにどうやってやるんだい?」
武器がなくてもころせる…。
嗚呼、分かった。
此奴は_
「邪神力_爆ぜて!」
「さがれ!」
幸い、全員躱せたようだ。
「あっれぇ?なんで外れたのかなぁ」
「探偵を舐めないでいただきたいですね。」
「その通りだねぇ。仮にも僕達は上位なのだよ?」
面倒くさいことになったな…。
「それ…何時まで保てるかなぁ!」
「あ゙?僕、めんどいこと嫌いなんだけど?本当に意味がわからない。辞め給え」
「素晴〜?」
あちゃー、反応がない。
「…あらら…闇鶴さん、あちらに避難しましょう」
「うん……ねぇ、暁月…否、紫暮。」
「!…はい、なんでしょう」
「何か、嫌な予感がするの。大事な人が居なくなる予感が…」
「…そうですか…私は貴方様の護衛を務めますね。」
何だろう、頭が回らなく…回らなく?
「……申し訳ございません、”凌葵様”」
そこで私の意識は途切れた。
「邪神力_トゲ!!」
「此れぐらいは僕でも躱せるよ?」
今戦っていて分かった。
邪神力にはクールタイムが有る。
それは恐らく此の場合は10分。
何せ大層なことを言っているが威力が弱い。
「なんで当たらないのよぉ!私は最強なのよぉ!邪神になるのぉ!」
「な_」
一瞬、油断した。
「体術も出来るのかよ…!」
間一髪セーフ…。
次は多分アウトだな…。
「探偵は潰すの!潰せばランクが上がるわぁ!はぁっ!!」
「チッ…埒が明かないねぇ。」
向こうは体力が減っていない。
何故だ?
「…嗚呼、なるほど。お前の邪神力に当たった人は生命力が吸われるって事かな…?」
それなら相当まずい。
応援を呼ぶにしても難しいだろう。
他の上位を呼ぶなら遠い。
否。
僕の役目は、名探偵を守り抜くことだ。
「君に出会えて幸せだったよ、短い間ありがとうね、凌葵」
「邪神力_トゲ!」
10本の細くて鋭利なトゲを躱す。
相手のレパートリーは3個。
爆破、魅了、トゲ。
「覚醒。」
時が止まる。
後ろを振り返れば、驚いているのか焦っているのかよくわからない暁月の顔。
【覚醒を使ったのは貴方ですね。代償と願いは】
「代償は僕の寿命。願いは心愛を倒し、暁月と凌葵を守ることだ」
まだ、凌葵には暁月が必要だ。
【願いを承諾致します。貴方に授ける覚醒は…破滅です】
時間が流れ出す。
「馬鹿!素晴さん!」
暁月の声。
「覚醒_破壊!」
対象は…心愛。
「な、さっきまで一般人じゃ…!」
「残念だったね。覚醒の存在を知らないとは。」
ピキピキと音を立てて心愛が崩れ始める。
「かはっ…な、何よ此れ…はぁ…?さっきまで私が勝ってたのに…?邪神になるのに…私は…」
「覚醒はね。代償を払う代わりに其れに見合った能力をもらえるのさ。」
「…まだ、消えたくないのに…」
もう心愛は体の半分が消えている。
「邪神力_道連れぇ!せめて、後少し功績をっ!!」
「は…っ?」
まだ能力が?
不味い、能力が向かった方向は、凌葵と暁月。探偵を潰すと言っていたから狙いは_
「凌葵!!」
冷静なら大丈夫だったはずだ。
暁月が居たのだから。
でも、僕は冷静になれなかった。
気づけば走り、彼女を庇った。
「ぐあぁっ」
「素晴…さん…?私が居ながらっ…申し訳っ…!」
「黙れよ、紫暮。君は…凌葵を…これからも、守れ」
もう、僕は君たちを守れない。
「あ、あぁっ…!」
最後くらい、笑って欲しかったのだけどねぇ。
「…ん…?…ぇ…素晴…?なんでっ!ねぇ!」
「ああ…ごめんね…起きちゃったかい、凌葵…」
「闇鶴さん、落ち着いて…!」
嗚呼、見ないで。
泣かないで。
僕は笑っている君たちが見ていたい。
「さよ…なら」
僕の意識は其処で終わっている。
「やだぁ!素晴!!ねぇ!」
「闇鶴、さん…もう、素晴さんは…ッ」
ニヒルには、唯、闇鶴さんの泣き声だけが響いていた。
私は途中で手間取ってしまった。
尾行をしていたまでは良かったが、途中で人通りに出てしまったのだ。
でも、ニヒルに居るはずだから私はなんとかたどり着いた。
「…え、泣き声?」
ソプラノの声…。
かちゃり。
事務所の中は、赤。
泣き声の所を見れば、其処には横たわっている素晴さん。
「…ぇ?」
「!?梨亜さん…?」
「あ、暁月さん、此れはどういう状況で…??」
気まずそうに目をそらす彼。
もうわかっている。
なんとなくは。
一応此れでも探偵だったのだから。
自己肯定感が低いからだったと言ったわけじゃあない。
探偵事務所はメンバーが2人以下…つまり1人になると強制解散される。
「…そっかぁ…私の探偵人生も、終わりかぁ…もっと、皆で…すごし…たかった」
駄目だ。
今こんな事を言っちゃ。
「今は一人になりますね」
余計なことを言わないために。
「はい…さぁ、”闇鶴様”一度帰りましょう。本部に伝えなくてはなりませんよ」
「…うぅっ…はぁい…っ…あぁっ…素晴っ…すばるっ…なんでぇっ」
泣き声。
まだ15歳の少女にとって、衝撃すぎるだろうなぁ。
17歳である暁月さんも精神的に来てるだろうに…
私はその場で2人が居なくなる姿を見るしか無かった。
私はもう、居場所もお金も何もかも失った。
ならすることは一つ。
ごめんなさい、暁月さん、闇鶴さん。
依頼料は払えません。
笑顔は、もう無理です。
ごめんなさい。
どうか、私のことは忘れて下さい。
_如月梨亜_
時代遅れの手書き。
良く書くものと紙を持っていたなぁ。
「嗚呼、ごめんなさい。…今行くよ、皆」
「…ごめん…なさい」
こうして、あっけなく数少ない女性探偵は消えた。
第2回、探偵試験を突破した女性探偵は消えた。
女性受験者380名。内、合格者2名。
嗚呼、20年の生涯は迚も不思議だった。
「闇鶴様、お食事は食べられますか?」
「…要らない」
どうせ吐き出す。
「…少しだけでも、食べてみましょう…?」
「…要らない。」
「そうですか…」
私は今日も布団から動かない。
《ニヒルの最後の探偵からメッセージです。アナログのメッセージなため、開封はそちらでどうぞ》
「天使…?嗚呼、はい…こちらですか…紙とはまた珍しい…」
内容は、明らかにもう…。
「…此の手紙は、闇鶴様には見せないでおきましょう」
その手は、暁月自身の部屋にある鍵付きの箱に向かっていた。
3日もすれば闇鶴様は多少回復しました。
「嗚呼、そう言えば…梨亜は?」
私には答えられないこと。
「…遠くの故郷に帰ったそうですよ」
「嘘だ。彼女の出身は此処だよ?確か失焼街の出身でしょ」
「…あの孤児や身寄りのない者が集まる場所、ですか」
「うん。そーだね…で?結局どこに行ったの?」
駄目です。
せっかく回復したと言うのに、また傷つけてしまう。
「其れより、ご飯はどうですか?今日は何時もより甘く仕上げたのですが…」
「此のフレンチトーストは美味しいよ。…じゃない!話を逸らすって、何か?」
駄目だ、隠し事も出来ません。
でも、隠したい。
彼女のためにも、隠したいですが、知っておくべきかもしれません。
「…闇鶴様。少しだけ待っていて下さい」
私は、梨亜さんの遺した手紙を持ってくることにした。
心臓がうるさくなりすぎて気分が悪い。
「…此れが全てです」
「…ぇ?はっ…?梨亜…?何で、なんで?依頼料はあなたの笑顔って言ったでしょう!何でっ」
やはり、こうなった…。
だから見せたくはなかった。でも、隠し通せないんです。
貴方のその美貌の前には、何人たりとも隠せません。
嗚呼っ、純粋な貴方が汚れてしまう。
身近な人の消失を経験してしまう。
2度も経験してしまう。
貴方の泣き声が、絶望する声が、頭の中に今でもずっと、響いているのです。
私はもう、居場所もお金も何もかも失った。
ならすることは一つ。
ごめんなさい、暁月さん、闇鶴さん。
依頼料は払えません。
笑顔は、もう無理です。
ごめんなさい。
どうか、私のことは忘れて下さい。
_如月梨亜_
「嗚呼…っ…やっぱり。世界は求めれば求めるほど壊れる…っ…世界は、残酷だぁっ」
私は、その様子を見るしか無かった。
それからというもの、感情の使いすぎか、キャパオーバーか…静かであった。
でも、きちんと呼吸をしていた。
其れだけが私の救いであった。
「闇鶴様…?」
あの事件の後、彼女は変わった。
感情を隠し始めた。
嗚呼、仕方がないのでしょうか…。
儚いニヒルの子 完結
次回、桜の花弁が舞い散る頃に