テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「葵、脱線する! 時間がない、道祖神ごと破壊するしか――」
「ダメよ! 道祖神様は被害者なの! ……でも、このままじゃ……!」
『頼む……ワシを……壊してくれ……。もう……楽になりたいんじゃ……』
道祖神の瞳から、濁った涙がボロボロと溢れ落ちる。
ボルトで固定され、機関室の壁やギアと一体化してしまった体。
生きながら機械のパーツとしてすり潰され続ける地獄から、道祖神はただ「死」という解放を望んでいた。
わたしは唇を噛み締め、真鍮の仕込み棒を構えた。
「乗客だけは絶対守る……! 正一、機関室の機械を壊して汽車を止めて! 道祖神様を……楽にしてあげて……!」
「……分かった」
わたしは窓から身を乗り出し、真鍮の澄んだ音色で空を飛ぶ鳥たちを呼び寄せた。
『乗客を後ろの車両へ! 衝撃に備えさせて!』
小鳥たちが一斉に客室へ飛び込み、乗客たちを誘導していく。
一方、正一は機関室の床に転がっていた重厚な鉄の歯車を拾い上げると、漆黒の呪符を貼り付けた。
彼の眼光が冷たく光る。
「怨詛――」
正一の腕がしなった。
手裏剣のごとき圧倒的な速度とスナップで、回転する鉄の歯車が放たれる!
「――『輪斬蝕(りんざんしょく)』!!」
ヒュガアアアアッッ!!
唸りを上げて飛翔した歯車が、機関室の主軸ギアと蒸気パイプを一瞬で切り裂く!
貼り付けられた符からどろりと溢れ出した『蟲毒』の呪いが機械を内側から一気に腐食させ、機関室の動力系を完膚なきまでに破壊・風化させた。
動力を失った汽車がギギギ……と音を立てて脱線を免れ、ゆっくりと線路上に停車していく。
それと同時に、機械と癒着していた道祖神の体が、ポロポロと崩れ始めた。
痛みに歪んでいた道祖神の顔に、どこか安らかな笑みが浮かぶ。
流れる涙と共に、その体は静かに、パラパラと真っ白な「灰」となって風に舞い散っていく。
『……風鳴の、街……かえり……たい……』
灰になって消え去る直前、道祖神の口からボソッと、かすかな絞り出すような声が零れ落ちた。
「風鳴の街……帰りたかったのね、自分の守っていた街に……」
残された白い灰を見つめながら、わたしは握りしめた手にぎゅっと力を込めた
70
氷咲 吹雪❄
118
氷咲 吹雪❄
41
241
コメント
1件
うわっ、今回めっちゃ切なかった……! 道祖神様の「壊してくれ」って願い、もう長いこと機械に囚われてたんだなって伝わってきた。正一の『輪斬蝕』、バトル描写がかっこよすぎて一気に読んだわ。でも最後に「風鳴の街に帰りたい」って呟いて消えるところ、グッときた。葵の決断も正しかったと思う。よいお話だった🔥