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汽車の緊急停車から数日後。
わたしたちは、道祖神が最後に呟いた「風鳴の街」へと足を踏み入れていた。
「綺麗なところね……」
瓦斯灯が並び、洋風のハイカラな建物の間を人々が笑顔で行き交っている。
恐ろしい妖の気配も、怪しい事件の噂すらない、どこにでもある平和で静かな街並みだった。
「道祖神様、こんなにも綺麗な街を守っていたんだ……」
葵が真鍮の仕込み棒を胸に抱えながら、静かに街を見渡す。
「うん。でも、こんなに平和なのに……なんで道祖神は連れ去られてしまったんだろう」
正一が周囲に警戒の目を配りながら、葵の隣を歩く。
二人で街をあてもなく探索していた、その時だった。
――スッ。
向かいから歩いてきた、白髪交じりの男とすれ違った。
煤けた革のエプロンを身につけ、額に彫金用のゴーグルを押し上げた、どこか疲れ切った冴えない中年男性。
何気ないすれ違いの、ほんの一瞬。
(――っ!?)
わたしと正一の背筋に、冷や汗が吹き出すほどの激しい『ゾクッ』とした寒気が走った。
「いまの……なに……!?」
振り返ると、男の背中は遠ざかっていく。
男は分厚いコートの胸元を不自然に庇うように抱えており、そこからドロリとした異様な『妖気』が漏れ出していた。
だけど、それが何の妖なのか、中で何が起きているのかまでは分からない。
「あの男……ただの人間じゃないわ」
「うん。あの歪んだ気配……間違いない、道祖神をあんな姿にした張本人だ」
平和な街の真ん中で遭遇した、異質で狂気的な存在。
二人は互いに頷き合うと、気配を消して男の背中を追いはじめた
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氷咲 吹雪❄
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