「……今日も来ない…」
いつまで経っても青年は現れなかった。よくよく考えれば来ないのは当たり前だろう。青年はリボンが飛ばされて、追いかけたら偶然僕と出会った。知り合いにも満たないたった数分の出来事なのだから。
ただ白百合への好奇心は収まらなかった。何百年、下手すれば何千年も生きてきたが、最後にほかの種族と会ったのは遡るのも億劫になるぐらい昔の話だ。白百合の事については興味が無かったので1ミリも覚えていない。だからこそ、白百合の事についてもっと知りたいと思った。
……そういえば、黒百合の街とは反対方向から走ってきたよな…
僕は早速行動に移した。青年が居るであろう方向へ足を進める。街からどんどん遠ざかる。振り向き街の方を見ると東雲くんの言葉をふと思い出す
“類さん、もう花畑の奥には行かないでくださいね”
彼は白百合の事が嫌いなのだろうか。僕は白百合の事を覚えていない。けれど、東雲くんなら僕よりかは覚えているだろう。彼が言うのならば、行かない方が身のためだろうか?
いいや、ここまで来たのなら会うまでは歩き続けよう。本当に白百合は敵なのか自分の目で確かめないと気が済まないし、それに、あの白百合の青年に、もう一度会いたいと思ったから。
しばらく歩いていると、白い百合が見えた。黒百合の街付近には黒い百合しか自生しないのできっとこれが白百合と黒百合の境目だろう。意を決して白百合の花畑に足を踏み入れ、歩き始める。白い百合は見たことがほとんどなかったので新鮮で、歩いているうちに気分が良くなり、少し鼻歌を歌いながら歩いた。
しばらく歩いていると人影が見えた。
金色の髪に、ピンクのグラデーションがかかっていて、白い服でて身を包んで……
あの青年だ
青年が僕に気づき駆け寄ってくる。
「え、君、この間の黒百合…?」
青年が少し目を見開きながら僕に尋ねる
「そうだよ、白百合くん。僕は黒百合の神代類。君に会いに来たんだ」
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