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「ん〜、暇だし散歩でも行こ〜」
そう言って私は扉を開け、外に出る。
誰も足を運ばない静かな森。
「お、この茸欲しかったんだよなぁ」
そう森の中を探索するのが私の趣味。
「、、、」
私は咄嗟に杖を取り出し、魔法で土の壁を作り上げる。
「また暗殺者?人間も飽きないねぇ」
魔法を解くとそこには全然大人とは言えない、黒いマントを被った男の子がいた。
「依頼で魔女を殺すよう言われた。お前に罪はないのは知っているが、ここで死んでもらおう」
そういい、またナイフをこちらに突き出した。
「残念」
今度は防御魔法を発動させる。
相手には何も見えないが、攻撃が通らない。そんな私が創り上げた防御魔法。
「この世のどんな刃物を使ったって、私の防御魔法に勝るものはないんだよね〜。そもそも、人間が作り上げた物体では、魔法に勝てない。なぜなら、魔法は人間ならざるものが創り上げたから」
私の防御魔法の場合、魔法であっても勝つことはできない。最強なのだ。
「それでも殺さなければならない。そう、言われたから」
その言葉で、完全に今までの暗殺者と彼が違うことくらい分かった。
「へぇ、、。わざわざ人間のためにそんなことするんだ」
「、、、何を言いたい」
「ほら、人間ってさ、寿命がバカみたいに短いわけじゃん。なのに、好きなように生きないのかな〜?って」
「生きたくても生きられない。これが人間だ」
「バッカみたい。どうする?君がこちら側にくれば、君の生涯の安全と、幸せは保証するけど」
なんとなくだった。
私がそう言ったのは。
短い寿命なのに、好きに生きられない彼が可哀想に思えたから。
「俺はそんなもの望んでない」
そう言うと、また彼は私にナイフを突き出してきた。
「だーかーらー」
私はまた防御魔法を発動させた。
「言ったでしょ?私の防御魔法に勝るものはないの。それがたとえ、物体でも、魔法でもね」
「その分体力の消費は大きいはずだ。それまで俺はお前のことを攻撃するだけ」
「う〜ん、普通だったらそうなんだけどね。私さ、退屈なの嫌いなんだよね」
一瞬だけ防御魔法を解除し、一瞬で攻撃魔法を発動させる。
「私が手加減してないだけなのにな〜」
彼は私が発動させた魔法で身動きが取れない状態だ。
「俺を捕まえた何がしたい」
何かしたいわけではない。でも、強いて言うのなら。
「君を幸せにしたい」
「お前は暇人なのか」
「うん!だから、君を弟子にする」
そう言って、私は魔法を解除する。
「、、、俺はお前に負けた。なら、俺はお前に従おう」
「従うって言い方嫌だけど、ま、ついてくるならいっか!」
いつか、従う。なんて言葉が出ないくらいに、幸せにしてあげたい。
「私は、この森に長年住んでる健屋花那!師匠って呼んで」
「俺は、セラフ。よろしくお願いします。師匠」
ん〜、かわいい。
初めての弟子ができました。
「師匠!!その茸は毒があるやつですってば!!」
「え〜、でも!研究に必要なんだってばぁ!!」
「師匠!!!!」
「はぁ〜い」
全く。と呆れた顔で呟くのは、数年前森で拾った可愛い初弟子。
あの時着ていたマントを私より大きくなった弟子はいまだに着ている。
「でもさ??あの茸毒あるのって食べた時じゃん!だから、さ?」
「師匠、、?前そう言ってとってきた毒茸をそこら辺に置いといて、俺が食べたじゃないっすか」
「ぎくっ」
「それで、俺が吐いちゃって、師匠興奮してたじゃないっすか。あの時の顔未だに覚えてますよ」
「うぅ、、。その話されたらなんの言い返せないよ〜」
「とにかく!ダメなものはダメです!」
そう言う彼。
ずいぶん変わったな〜。と思う。
最初の頃は声すら発してくれなかったんだから!!
今はこんなに大きくなって、、(物理的にも精神的にも)
「てか?なんでセラフそのマントいまだに着てるの?」
「なんとなく。というかこれ以外着るものないから」
「え、そんなふうに思われてたん?それくらい買うけど」
「師匠。魔女なんですから街に出たら危険でしょう?だからこれ着てるんですよ」
「まぁ確かに、、、。あ!そういえば〜」
「じゃじゃ〜ん!!」
「なんですか?それ」
「セラフの新しい服!!」
(見ている人に説明すると、セラフのタロットの服です!)
「なんであるんすか、、。しかも男物、、まさかっ」
「男なんて連れ込んでない!!」
そんなふうに思われてたのか、、?私。
「大昔の話だけどね。大親友が買ってて、ちょいデカめで着れない、、。ってなったから預かってたの」
「その、大親友は、、?」
「死んじゃった」
「あ、ごめんなさい」
「ううん!大昔の話だしね。シェリンが買った服も、イケメンに着られるんだから嬉しいと思う!」
シェリン・バーガンディ。という探偵気取りの大親友。
それと、早瀬走の3人で森で遊んだあの頃はもう、何年前になるのだろうか。
何百年前なのか。何千年前なのか。
それはわからない。
「、、、それは、取っといた方がいいんじゃ」
「セラフに来てほしい!その方が大親友のこと、思い出せるでしょ?」
「でも、そんな思い出の品_」
「着てってばぁ!!ごちゃごちゃ言わない!」
「、、、ありがとうございます」
ったく!
セラフが優しい人なのは分かってるけど、私が許可してるんだから着なよ!
「似合ってんじゃん!!!」
「ピッタリ、、、」
「結構昔のやつだけどいい感じだ!」
マジでこう見たらただのイケメンやん。
それから数年後、、、。
「セラフ〜、あれとって?」
「あれ、、あぁ、あれですね。どうぞ」
「ナイス〜」
セラフはもう、弟子というか助手というか先生というか、、。
立派になっている。
「師匠。この術式ってこういうことであってます?」
「あぁそうだね。で、その術式ならこの方が__」
「なるほど!ありがとうございます」
今のセラフなら人間界でも幸せに生きていくことができるだろう。
魔女に唯一対抗できる、魔術師として。
「ねぇセラフ。今日はちょっと夜に散歩でも行こっか」
「?わかりました」
「ちょい寒いね」
「確かに」
冬に近い秋の夜はやっぱり肌寒い。
「、、、セラフ。多分もうセラフは人間界でも幸せに生きていけるんだと思う。君は魔女に唯一対抗できる、魔術を扱うことができる、魔術師になれるから」
「え、、」
「魔女として、ほぼ永遠の命を持つ私といるより、同じ人間がいる、人間界に帰った方がいいと思うんだ」
「っ、でも!」
「あの時私がセラフを拾ったのは、セラフを幸せにしたいから。君が人間界で幸せになるために育てるためなの。だから、もう」
「でも!師匠が俺をここに連れてきてくれたんじゃないですか!俺はずっと師匠と一緒にいるつもりでっ、過ごしてきたのに」
私だって一緒にいたいよ。でも、君には仲間がいるんだから。
「私、永遠の命だから、セラフとは結局死別を迎えるわけ。それって辛いの。だから別れたい」
「っ、だったら俺も!!」
「だーめ。それだけはダメ。それは禁忌とされてるんだから」
「っ!」
「人間界に行くためには、森の奥をずっと歩いて行ったら街に着くよ」
「、、、師匠。また会いにきますから」
「ふふっ、次会うときは私のこと殺しにきてごらん。最初にあったときみたいに」
「っ、わかりました」
セラフの目からは涙がこぼれ落ちてきていて。
「いつか!貴方に会いに行きます!!そのときは、魔術師として!最初に出会ったときみたいに!会いにくるから!そのときはっ、笑って迎え入れてくれますか!?」
彼はそう叫ぶ。
「セラフ!これ、あげる」
渡したのは私が理解できなかった1つの魔術書。
「これ、は、、?」
「魔女の命を永遠でなくす魔術書」
「え、、」
「この魔術書を解読して、使えるようになったら、会いにおいで。私はいつでも待ってる」
私が手に持ってる魔術書に涙が落ちる。
「絶対に解読しますっ、そして、貴方を!永遠の命から解放して見せますから!!」
「待ってるよ。セラフ」
彼は背中を見せた。そして歩いていく。
「師匠、貴方はずっと俺の師匠で、俺は貴方の弟子ですから」
「セラフ。お前は立派な弟子だったよ。ありがとね」
そう言って、彼は姿を消した。
もう、彼に会うことは二度とないだろう。
あの魔術書は魔女に受け継がれてきたもので、誰一人解読できなかったのだから。
こんこん。
扉を叩く音がする。
「こんなの初めて」
私は扉を開ける。
「師匠、解読できましたよ」
「、、、、え」
信じられない。
「師匠。永遠の命を終わらせましょう」
「嘘、でしょ、、?」
セラフも、私も、涙を流す。
「本当です。師匠、俺頑張ったんですよ」
そう、泣きながらも不器用に、微笑むセラフ。
しっかり見ると、大人びた体つきに変化していて、変わったんだなと実感する。
「う、うぅ、、」
セラフは泣き崩れる私を抱きしめた。
「師匠、一緒に暮らしましょう?ずっと夢見てましたよね。街で暮らすのを。暮らしましょう。一緒に」
「セラフ、、いいの、、、?」
「もちろんです。俺そのために頑張ったんですよ、、?」
「ありがとっ、セラフ、、、」
そう二人で泣いた。
もう、終わりを迎えるんだ。と。
永遠の命から解放されるんだと。
「師匠!」
「セラフ」
「今日はお肉が安く買えたので、お肉にしますね」
「え、やったー!」
小さな家の一部屋を借りて、一緒に住んでいる。
人間となった私は、人間である、彼と一緒に。
もう、ひとりぼっちじゃないんだ。
「師匠!」
師匠と呼んでくれる、可愛い可愛い弟子がいる。
「今行く」
初めての街での暮らしは、暖かかった。
セラフ。ありがとう。