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「うっっっっっっっっわ何それえぐくない????!!!!!」
叫ぶシューヤと集まるメンバーたちの視線。
それが何に対しての”えぐい”なのか理解した時にはもう手遅れだった。
時は昨夜にさかのぼる。
仕事も終わり 2 人でまったりと過ごす時間。甘い空気が流れていた。付き合っていれば当然そういう行為もあるわけで、眩暈がしそうなほどの甘い雰囲気に身を任せそのままベッドに沈んだ。
久々であったことに翌日のレッスンが午後からであることも助け,それはそれは盛り上がってしまった。
朝起きると昨日の情事の跡はなく,体にべたつきもなかった。どうやら昨夜意識が飛んでし まった後にカイが事後処理をしてくれたらしい。
起き上がると案の定腰が悲鳴を上げる。
後でカイにクレームを入れよう…。
そう心に誓いながら腰に残る違和感を和らげるために風呂へと向かった。
「なんだよこれ!!!!!!!!」
鏡で自分の身体を見た俺は思わず叫んだ。
キッチンで朝食を作っていたカイが俺の叫び声を聞いて脱衣所まで飛んでくる。
「カイ!!!なんなんだよこの異常な数の痕は!!!!!!」
カイに向かってそう叫ぶ俺の身体には無数の赤い痕が散りばめられていた。
それはもう,体中に。
「何って…キスマーク、だけど?」
あざとく首をかしげるカイにイラっとしつつ噛みつく。
「そんなことは分かってんだよ!!なんでこんなにいっぱい痕つけてんのって聞いてんの!今日レッスンなの分かってんのかよ?!どうすんだよこれぇ……。」
胸元はもちろん太ももや足の付け根にまでついている痕を見ながら俺は頭を抱えた。
この調子なら背中や腰にもたくさんついているのだろう…… 。
「んーー?レッスン?分かってるよ〜。だから服で隠れるとこにしかつけてないんじゃん。」
ニコニコしながらそう言うカイに俺は呆れるしかなかった。
「はぁ…そうかよ……。」
「昨日のリョウガ,いつになく素直であんまり可愛いかったから…俺のっていう印付けたくなっちゃった! 1つ付けたら止まんなくなちゃってさー…ごめんね?
でも,リョウガのこんなえっちで可愛い姿が他の男に見られるとか耐えられないから,絶対見られないように気を付けて。 」
胸元の痕を指でなぞりながらそう言われ,体中の熱が一気に顔に集まるのを感じる。
「照れてんの?可愛い…」
「照れてない!!俺は今からシャワー浴びんの!離れろ!!」
抱きつくカイをやっとの思いで引きはがし,脱衣所から追い出した。
鏡の前に立ち,俺は改めて自分の身体を見る。
「うわぁ…なんだこれ。ほんとすごいな…エロゲでもこんなん見た事ないぞ………。」
あまりにもインパクトのある光景に若干引きつつも、露骨に向けられた独占欲に俺は少し優越感を覚えてしまった。でもこのことはカイには絶対に言ってやらない。ばれてしまってはあまりにも後が怖すぎる……。
シャワーを浴び気持ちを切り替えた俺は、カイが作ってくれた朝食を食べ、身支度を整え始めた。
「……なんだよ。」
「いやー?」
着替えをしていると、部屋に入ってきたカイがニヤニヤとこちらを見てきた。
「やっぱいいね!好きな子に自分の印があるのって。」
「…やっぱりってなんだよ。」
まるで誰かに付けたことがあるかのようなもの言いに俺は少しムッとしてしまった。これは別に嫉妬している訳では、無い。
「あ、やべ。…………実は前にも1回付けたことあるんだよね。リョウガは気付いてなかったけど。」
「は?え、俺?!」
予想外の返答に声が裏返った。
「リョウガ以外の誰に付けるの。怒られると思って黙ってたのにバレちゃった。」
ケラケラと笑いながらカイはそう言う。人の気も知らないで随分と楽しそうである。……いや、断じて嫉妬などした訳ではないが。
なんだかんだとじゃれ合いつつもゆったりとした午前を過ごし、俺たちはレッスンへと向かった。
____________________
「ーーーーーー!」
「ーーーー?」
「ーーーーーーーーーー。」
「はい!じゃあ今日はここまで!!」
12「ユーキくん、ここの振りなんすけど……」
5「うんうん、そこは…」
13「フォーー〜!!!」
14「あははははは!!!アロハくん元気すぎでしょ」
4「ハルもアロハもうるせぇよ」
「タカシ、さっきのめっちゃ良かったよ」
7「ほんま〜?カイありがとうなぁ」
レッスンも終わり、気になることの確認などをしつつ各自帰り支度を始めた。
11「リョウガっちめっちゃ疲れてんじゃん!」
「おーー、なんか今日は久々にめっちゃ疲れたわ」
11「てか汗だくすぎでしょ。とりあえず着替えたら?」
いつもの調子で笑いながら話しかけてくるシューヤの言葉に、レッスンで疲れきって頭の回っていなかった俺は何も考えずに従ってしまった。
そして、話は冒頭に戻る。
「うっっっっっっっっわ何それえぐくない????!!!!!」
シューヤがそう叫ぶと、何事かとメンバーが一斉にこちらを向く。
「は?なに、…」
かんっっっっぜんに油断していた。
レッスンに集中しすぎて 自分の体が今、どうなっているのか忘れて呑気に着替えようとしてしまった。最悪だ……。
慌ててTシャツを前に持ってくるがさすがに手遅れである。
メンバーの視線が痛い。
「いやあの、んーーーーえっとぉこれはぁ違くてぇ……」
11「違うもなにもないでしょ!!カイくんめっちゃ激しいぢゃんウケる!」
5「うーーーわやめてよ俺メンバーのそーゆうの見たくないよぉ」
12「…………………」
4「おい!ハルの教育に悪いだろこのバカップル!」
7「ハルは見たらあかんでぇ〜」
14「んえ、なになになになに」
13「俺はなんも見てないよ!見てない!」
口々に言葉を投げかけられるも焦りすぎて口ごもることしか出来ない。今俺が分かるのは、この状況は非常にまずい、ということだけだ。
「いや、その、うぅぅ……」
「はいはいはい、リョウガは俺のなんだからみんなそんな見ないでー?」
メンバーへの対応に焦っているとカイが間に入ってきた。
(その可愛い体、他の男に見せるなって言ったよね?)
「ッ?!」
カイが俺に自分のシャツを着せながらそう囁いてきて思わず耳を押さえる。
11「フゥーー!!カイくんかっくいぃ〜!」
12「ふっ…リョウガくん顔真っ赤すね」
5「ねぇーもうカイやらしいよぉ〜」
4「いい加減にしろバカップル!」
7「ハルとアロハあっち行っとこかぁ〜」
13「ソーデスネ」
14「え、なんでー?てかタカシくんおれ前見えないんだけど」
「はーい、リョウガ着替えるからみんなあっち向いて〜」
「はいはい」「イッケメーン!」「もうほどほどにしてよね〜」
カイに促されたメンバーは口々に文句を言いながら、こちらを見ないように自分の帰り支度に戻った。
……はずなのだが。視線を感じる。
「なんでお前はこっち見てんだよ」
「いや俺はいいでしょ」
いいわけがない。
「………そんなに見られてると着替えづらいんだけど」
「えーーー?リョウガのけちぃ〜」
「「「「「「イチャつくな!!」」」」」」
(14「?????????」)
メンバーから総ツッコミを受けたことでカイもやっと自分の帰り支度を再開した。誰からの視線もなくなり、ようやくこれで落ち着いて着替えられる…。
それぞれの帰り支度も終わり、この後ご飯にでも行こうかどうしようかという雰囲気の中、俺は羞恥のあまりメンバーの顔も見ることが出来ず1人そそくさと帰ろうとしていた。
「お疲れ様でしたー……」
「リョウガ、なんで1人で帰ろうとしてるの。俺も一緒に帰る」
「いいよお前はみんなと飯行ってこいよ」
俺とカイが話しているのに気付いたシューヤが声を掛けてきた。
11「何話してんのー?2人もご飯行くっしょ?」
「いや、俺らは今日はやめとくわ!」
11「おっけ〜!お疲れ!!」
「お疲れ〜。リョウガ、行くよ」
「え、ちょ、…」
挨拶もそこそこにカイは俺の手を取って歩き出した。身体中のキスマークを見られた後に手を引かれ一緒に帰るのはさすがに気まずすぎる。次どんな顔してメンバーに会えばいいんだ…。抗議の声をあげようとしたが、カイの耳打ちに遮られた。
「ねぇまって、カi「リョウガは悪い子だなぁ。見せないでって言ったのに簡単に見られちゃって」
こちらも見ずにそう言うカイの手に少し力が入る。
「い、いやあれは事故じゃん。別にわざとじゃない……も、さっきから何……」
「悪い子にはお仕置が必要だよね?」
パッと振り向き花が咲いたような笑顔でそう言うカイ。俺は血の気が引いていくのを感じた。こういう時の笑顔は怒られるよりもよっぽど怖い。
「今夜も楽しみだなぁ」
ご機嫌なカイと引きつった表情の俺。
今日の俺、ちょっと不憫すぎない?!完全に被害者俺じゃん?!
腰痛いのもキスマ付けられたのもそれ見られて恥ずかしい思いしたのも次から気まずい思いすんのも全部全部俺じゃん!!
「もうまじでなんなの?!」
叫ぶ俺を無視し、自宅へと向かうカイの足取りは軽い。
こうなると何を言っても聞かないのがカイなのである。
「……はぁ。ちょっとは手加減しろよな…」
俺は明日も腰の痛みに耐える覚悟を決め、カイに手を引かれるまま家路についたのであった。