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ずっと君だけを見つめています

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ずっと君だけを見つめています

1 - ずっと君だけを見つめています

♥

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2025年10月04日

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os視点

今日は実写動画の撮影日。俺は集合場所に一番乗りで来ていた。現在の時刻は15時。集合時刻は17時である。

最近は撮影も少なく、会議もオンライン上で行うことが多かったため、只今絶賛片思い中のやなとになかなか会うことが出来なかった。久しぶりに会う機会が回ってきたと思い、テンションが上がってしまっていた。それにしても流石に早過ぎる、というのは自覚している。

何か時間を潰せるものはないかと周辺を歩く。ふと、華やかな黄色が視界に入る。小さな花屋に咲いている、太陽のような花。引き込まれるように店の中に入り、傷つけぬよう優しく花に触れる。目の前にある綺麗な向日葵を見て俺が思い浮かべるのは、大好きな人。

秘めていなければならない恋だから、あまり考えてはいけないと思い忘れようと首を振る。どうにか気を逸らそうと、向日葵を見つめていると、向日葵の入っている花瓶の横にあるネームプレートに品種名とは別に小さく文字が書いてあるのに気がつく。書いてあるのは花言葉。俺はその文を見てすぐに店員さんに声をかけ、気づけば一輪の向日葵を綺麗にラッピングしてもらっていた。


俺が集合場所についてから約1時間。衝動買いしてしまった向日葵を片手に持ち、どうしよう、と頭を抱えていた。なんでもない日に急に友人から花を貰うのは怖いだろうか、でも、もう買ってしまったから渡す以外にほぼ選択肢はない。今から家に帰って花を置いてこようか、なんて考えていると、遠くに見覚えのある、いや、顔のほくろの位置だって全部分かるほどよく見ているやなとの姿があった。俺が来てから1時間経ったとはいえ、まだまだ集合1時間前。予想外の展開に困惑する。ここ最近はずっとずっと会いたかった存在。だが、今だけは困る。さて、この向日葵、どう誤魔化すか。とりあえず、自分の後ろにサッと隠した。

やなとは俺の姿を見つけると、一瞬驚いたような顔をしてすぐに俺に駆け寄ってきた。うぅ、可愛い。

「え!おさでい!?なんでもういるの!?」

「いやぁ、ちょっと、家出る時間間違えちゃって」

流石にやなとに会うのが楽しみすぎて家を出るのが早くなったなんて事は言えない。俺は、やなとも俺と同じような考えを持っていないだろうか、なんて淡い期待を抱きながら同じ質問を返す。

「やなとも今日早くない?なに、俺に早く会いたかったの?」

なんて、おちょくるように聞いてみる。

「いやいや、そんな訳でないでしょ!俺も時間ミスっただけ!」

頬を膨らませ顔を顰めるやなとが可愛くて仕方がなくて、思わず口角が上がる。

やっぱり、花を渡そう。そう心に決めて、深呼吸をする。急に深呼吸をし始めた俺を見て、やなとは不思議そうな顔をする。

「あ、やなとさ、あの、、さ」

「ん?どうしたの?」

「こ、これ!」

俺は背中に隠していた向日葵を前に突き出した。

「え?!くれるの!?」

「う、うん」

恥ずかしくてやなとを直接見ることは出来なかった。でも、声色から喜んでくれているのが伝わり嬉しくなる。

「ほんとに!?ありがとー!!めっちゃ嬉しい!」

「でも、急になんで?」

恐れていた質問がきた。きっと上手く誤魔化すことは俺にはできないと思い、正直に答えることにした。

「いや、その、やなとに渡したら喜ぶかなーって思って、」

やなとは一瞬驚いて、それから幸せに満ちた顔を浮かべた。気持ち悪がられてもおかしくないと思っていたけど、こんなに喜ばれると期待してまう。

「おさでいがさっきから様子おかしかったのもそのせい?」

なんて、小悪魔的な笑みを浮かべて揶揄われる。

「もう!分かって言ってるでしょ!」

なんて、お互いに本心が見えそうな、むず痒い戯れをしているうちに時間はどんどん過ぎて行き、気付けば集合時間になり、他のメンバーも次々と合流していた。

向日葵を持っていたやなとは、メンバーに花を持っている理由を聞かれることもあったが、全て、

「秘密!」

なんて、何か有り気に誤魔化すので、メンバーの間で「もしや恋人、、?」と噂になったりもした。


撮影が終わりそれぞれが帰りの準備を始める。隣のやなとを見ると、向日葵の茎に丁寧に結ばれた小さなタグをまじまじと見ていた。タグにはthank youと書かれていただけだった気がするが、見た後に、周りをキョロキョロしたり、よく手が動いたり、動揺した素振りを見せていた。

そして何より、俺に対しての態度がぎこちない。目が合ったらすぐ逸らしたり、話しかけると顔を赤らめてすぐに何処かに行ってしまう。避けられている?やっぱり嫌われた?なんて不安が頭の中をぐるぐると回っていた。

でも、帰りにやなとが大事そうに、嬉しそうに、向日葵を抱えて帰る姿を見るとその不安は吹き飛んだ。


次の日、俺は昨日のやなとの嬉しそうな姿を噛み締めながら、自宅で動画編集に励んでいた。作業がひと段落つき、少し休憩をしようと思っていたところ、ピーンポーンとインターホンが、家の中に鳴り響いた。宅配なんて頼んだっけな、と不思議に思い、ドアスコープを覗く。俺はそこにあった姿を見た途端考える間もなくドアを開けていた。

「やなと!?」

驚きと会えたことによる喜びが同時にきて、とても大きな声をあげてしまう。

「ん」

やなとは無言で、俺に淡い青色の花のブーケを握らせた。

「これ、この前のお返し、」

と照れたように言ったあと、走り去るように帰って行った。引き止めようとした時にはもう遅く、やなとの姿はすでに無くなっていた。

やなとからもらった花は以前テレビで紹介されているのを見た記憶がある。確か名前はアガパンサス。花言葉なんだっけなぁ、なんて記憶を探ってみるがなかなか思い出せなかった。

折角やなとからもらった物だから、長持ちさせたい。俺は急いで花瓶の準備をした。

花瓶に花を入れる時、花の茎についたタグの存在に気がつく。俺の買った向日葵と同じthank youの文字が入っているタグだ。同じ店で買ったのだろうかなんて考えていると、タグの裏側にも何か書いてあることに気がつく。

「恋の訪れ」

そこには、そう書かれていた。俺はその時、テレビで紹介されていた花言葉を思い出した。それは、ここに書いてあるの同じ、恋の訪れだったということも。

これはやなとが思っている気持ちなのか、なんて想像がどんどん広がっていく。そして、俺の渡した向日葵のタグにも花言葉が書いてあったと思うと、顔から火が出るほど恥ずかしくなってくる。やなとの様子がおかしくなったのも納得だ。このアガパンサスの花言葉は、向日葵の花言葉の返信ということで構わないのだろか。確か、向日葵の花言葉はちょうど俺がやなとに向けて思っていることと同じ。

そう、


「ずっと君だけを見つめています」

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