テラーノベル
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冷蔵庫の中には、水と、少しの調味料と、最後の食パン。
コンビニで買ったカップ麺の残りが、
キッチンの棚に二つ。
「……もう、買いに行かないとダメだね」
すみれがそう言ったのは、昼を過ぎたころ。
空っぽの皿を見つめたまま、
言葉だけが静かに転がった。
「……私が行く」
「だめ。一緒に行こう」
「ふたりで行ったら、誰かに見られる」
「ひとりでも見られるよ」
言い合いじゃなかった。
ただ、不安を押しつけ合うような会話だった。
誰かに気づかれることも怖い。
でも、どちらかが外に出ることのほうが、もっと怖かった。
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