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ただ遠くに行きたくて走り続けた先は新幹線の切符売り場。
彼と同棲前に長年世話になった名古屋に帰ろう。そう決め列に並ぶ、と後ろから聞き覚えのある声に呼び止められた。
「よォ。まさか此処で会うとはな?お気の毒に、2ヶ月前にあのクソと別れたんだろ。そんで、一人旅か?」
「三途さんでしたか…お久しぶりです。って、え。そうなんですね、初耳でした。」
本当に初耳だ、2ヶ月前に私とあの人が別れてた…だなんて。別れ話と言う話はされてなかったし私自身もしていなかった。
氷点下まで気持ちが冷めてようが、割とショックは大きい。
「嗚呼、大方本命とやらが見つかったんだろ。
幸せそうにロック画面見ては頬を緩ますから目凝らして見たらテメーじゃねぇし腹抱えるわ!!だから俺にしとけってアレほど言ってやったのに。俺の好意を無下にした天罰だなァ!?」
三途さんが続けるようにジョーダンジョーダンとケラケラ笑えば、急に真面目そうに声のトーンを落ち着かせ目を据わらせる。
「その俺のモンって話今からでもいいぜ。名古屋に帰るんだろ?俺も暫くはそこに用があるんだワ。」
先程までショックを受けてたのが馬鹿馬鹿しくなる。確かに、あんな急に家から追い出す男より目の前のピンク頭の方が幾分もマトモだ。
彼の不安定過ぎる情緒にはついていける自信は正直無いけど、アテが無いよりあった方が断然楽だし。
何より彼はヤバい奴でマイキーしか眼中に無い。でも、だからこそ信頼出来たのかもしれない。
珍しく真面目に話してても本心かも分からないし、こう言う時と三途さんは掴めないからこそ面白がっている好奇心の感情が少なからず自分の中にあったのかもしれない。
「いいよ。でも、優しくしてね。」
これ以上この空気に耐えれる自信がなく、冗談交じえながらも二つ返事で返す。
もう彼の中で帰ってくる返事は分かりきっていたのだろう、先程まで並ばさせていた部下に2人分のチケットを渡される。
敢えて私に2枚渡したのに、彼らの苦労さが滲み出ていて心の中でお疲れ様と労りつつお礼を言う。
彼が言うに、並ぶのが面倒くさく部下を使ったとのこと。
事前に予約すればいいものの経理等を管理している九井君に頼もうとしていた所
「お前はこの際モラルとマナーの勉強でもしろ。」
と軽くあしらわれて叶わなかったらしい。
自分ですればいいのに、と言う言葉は後ろで小船を漕いでたら私を見つけたと嬉しそうに話す三途さんの可愛さと出発を促すメロディーに溶けて消えた。