「…大丈夫ですか?」
「嗚呼、気にするな、大丈夫だ。」
ゼルダと僕は、化け物から逃げていた。
もう少しすればヘブンズ・ドアは解かれる。
「…ここから離れよう、そろそろ解かれてしまう。」
「分かりました…移動しましょう。」
僕はゼルダを頼りに、学生寮へと向かった。
学生寮は、不思議な雰囲気であった。
「…学生寮を見て回ってもいいか。」
「…えぇ、大丈夫ですよ。」
と、承諾してくれた。
学生寮を見ていると部屋はそれぞれ、使用者のイニシャルが刻まれていた。
MやらLやら、そんなイニシャルだった。
「ここは学生寮なんだな、不思議だ。使用者のイニシャルが刻まれているじゃあないか。」
「えぇ、でもイニシャルだけではないんですよ。扉をよく見てください。」
「…これは、名前か。」
どうやらイニシャルが同じ人も居るらしい。
ややこしい為、一応名前も記載されているとの事。
「…君の部屋は何処だ?」
「着いてきてください、ご案内します。」
そう言って、部屋に連れていってくれた。
「…ここが君の部屋か。意外とオシャレじゃあないか。」
「ありがとうございます…」
まだ気分が沈んでいる、少しイライラする。
「君、まだ落ち込んでいるのか。少しシャキッとしたらどうだ。」
「…ごめんなさい…」
さっきから謝ってばかり、意思の弱い娘だ。
「…仕方ない、今回ばかりは許そう。だが、次は無い。」
「はい…そういえば、貴方の名前を聞いていませんでした…貴方は…?」
「僕は岸辺露伴、漫画家さ。」
そこから何時間経っただろうか。
ゼルダは疲れて寝てしまった。部屋から出るのも嫌なので、残ることにした。
むしろ、1人で置いておく訳にもいかない。
杉本鈴美の様に…もう二度と…
「…しかし、あの化け物とどんな繋がりがあるんだ、蘇る化け物は。」
僕は、切り取ったページを見ながら、考えていた。
蘇る化け物、その姿は神々しくあり、禍々しい。
どこか、破滅よりも、それよりも先に向かいそうな、そんな気配がする。
「…ゼルダはまだ寝るか。仲間を探してやろうか。」
そう考えている間に、足音が聞こえてきた。
化け物の足音じゃあなかった、ただ彼女を呼ぶ声だ。
「ゼルダ!どこに居るんだ!」
と、若者の声だ。
クソッタレ仗助みたいな、若者の声だ。
「…露伴さん、外の声、聞いた事あります…開けてもらって構いません。」
「わかった。」
そして僕は扉を開けた。
そしていきなり僕に突撃してきた。
「ぐぅっ…?!」
「あっ…!」
なんだ、妙に重い…!この痛みはなんなんだ…!
何処から、こんな小僧の何処からそんな力が…!
そして僕は部屋の奥へと吹っ飛んだ!
「ぐあぁっ!」
「露伴さん!大丈夫…」
「ゼルダ、良かった!」
僕は、クローゼットの中に吹っ飛んだようだ。
体中が痛い、痛みが走る。起き上がれない…
「ちょっとリンク!貴方何してるの?!」
「あの男はなんだ、なんのつもりでゼルダの部屋に居るんだ。」
僕に突撃とは、やるじゃあないか…
そんなことを思っているのも、隙は与えてくれなかった。
「くっ…そ…この…」
立ち上がろうにも、倒れ込んできたものが邪魔で立ち上がれない。
多少出血していたようだ、意識が少し遠のいていた。
「露伴さん、大丈夫ですか!」
「…嗚呼…気にする…ことは無い…」
「…お前、なんのつもりでここに来た。」
刃を向けてくる、生身の人間には太刀打ち出来ない。
体中が痛い、立ち上がれない。そんな危機的状況で刃を振り下ろされたら、僕は死ぬだろう。
「ゼルダ、離れた方がいい。何をされるか分からない。」
「…露伴さん、回復出来たので、起き上がって貰って大丈夫ですよ。」
「…感謝する。」
「なっ…!」
僕は回復してもらった、僕はゼルダに感謝した。
クソッタレ仗助よりも回復力は低いが、立ち上がれるぐらいには治った。
「全く、いきなり突撃とはいい度胸じゃあないか。
一般人に何をしている。」
埃を払って、僕はリンクとかいう男に問いかける。
言い方はまだ優しい方だ。
「お前、ゼルダに何をしたんだ、応えろ。」
「何もしちゃあ居ない、僕はただ案内してもらっただけだ。それの何が悪いんだ。」
「化け物がうじゃうじゃ居るのに、お前1人でか?はっ、馬鹿みたいなことを、ゼルダも戦える、俺も居る。お前みたいな雑魚は必要ない。」
「フン、ゼルダを1人にしたお前が言えることか?
僕は1人にしなかった、部屋から1歩も出ていない。
僕とお前、何方が必要ないか、一目瞭然だろう?」
リンクという男、ゼルダの守護者なのだろうか。
そんな男がましてや守護をする人を置いていくだろうか、それは無い、どんな物語でもそれは無い。
置いていくような守護者は居ない。
「露伴さん、もう大丈夫です。
それと、リンク!私を守ってくれた人になんて口を聞いてるの!」
「えっ、でも…」
「でもじゃないです!守ってくれたんですから、感謝は伝えるべきでしょう!」
「ハッ、ざまぁみろだ。」
「くっ…」
悔しそうに僕を見る。
落ち着いた頃に、僕は2人が離れた理由を聞いた。
「何故、2人は離れ離れだったんだ。それを聞かせてくれ。」
「…化け物に追われていたんだ、そしたらだ、いきなり分断されたんだ。」
「まて、抽象的すぎて伝わらん。どういうことだ…」
色々言われたのだが、理解出来ない。
だから僕は、『ヘブンズ・ドア』を使って2人の記憶を覗いた。
なるほど、そういう事か。君たちにはあまり離さないでおこう。
刺激が強すぎるからな。
「…起きていいぞ。」
「…!今俺達に何をした?!応えろ!」
「胸ぐらを掴むんじゃあない、服が汚れるだろう。
ただでさえ汚らわしい泥を着けている君に、胸ぐらを掴まれるなんてね。」
「…露伴さん、今のはあの化け物にしたものと同じですか?」
「嗚呼そうだ。あまり攻撃力は無いんだがな。」
僕はヘブンズ・ドアに関しては、あまり口にしない事にした。
というか、ゼルダにはもう見せてしまったのだから。
「…それで、ゼルダはどうする。この部屋から出るのか?それとも残るのか?」
「もちろん、出す訳には…」
「出ます、私も流石にじっとしているのは嫌です。」
「っ?!」
「フハハハ、流石だ。流石僕に着いてきただけはあるな。」
そうして僕ら3人は部屋から出た。
この先僕が目撃するのは、夏のように暑く、冬の様に冷たい、そんな物語だ。
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