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「おー……。 」
俺たちは今、大きな屋敷の門の前にいる。何故ここで立ち止まっているかと言うと、思っていた以上のデカさに圧倒されているからだ。元貴が3個分はありそうな高さの門に、奥に見える広い敷地。さらに言えば庭園のような物も見える。遠くに佇む大きな屋敷がおまけに見えてしまう。ここに踏み入ってしまえばもう帰れないんじゃないかと思わせるほどだ。
「もうナイフ持ってた方がいいよね。」
「ばか、ナイフ持って敷地歩いてたら即通報でしょ。」
鞄の中にあるナイフに手を伸ばしかけ、元貴に制止される。
「通報って言っても、公に出来ないことしてるんじゃないの。」
「まあ…そうだけど。相手だって何してくるか分かんないし。」
「「……。」」
突然静寂が訪れる。どちらが先に門の先へ進むか、無言で押し付けあっているのは明らかだ。
「あぁ、もう!!若井使えない!」
痺れを切らした元貴が勢いに任せて門を押す。大きさに比例して、鼓膜を揺らすような音を立てる。
「おっも……。何これワンダーランドかなんか?」
「全部夢だったらいいのにね。」
そういう返しを求めてたんじゃないんだよ、と冷たい視線を向けられる。ある程度門を押して小さく出来た隙間から敷地に入った元貴に手招きをされる。
「……もう後戻り出来ないんだよね。」
弱々しい俺のセリフに元貴が呆れたようなため息をつく。
「今更だから。今戻ったって何も無いよ。」
その言葉に思わず後ろを振り返る。映した瞳の先には、何の彩りもない景色がある。否、彩りを感じられないだけかもしれない。
「俺らには涼ちゃんが必要だった。そうでしょ。」
元貴に手を引かれ、視線を戻す。俺とは違ってちゃんと今が見えている。過去に縋っているのは、俺だけだ。
「もう、終わらせよう。」
俺の言葉に小さく元貴が頷く。ただの相槌ではなく、決心に近かった。物々しく佇む門をくぐり、歩みを進める。もう振り向くことはしなかった。