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「思ったんだけどさ」
門から屋敷への道のりを黙々と歩いていれば徐に元貴が口を開く。
「これ門の意味あった?」
「言っちゃうんだそれ。」
徐々に近付いてるような錯覚で留まってしまう程の距離がある。唯一の救いと言えば、代わり映えのある景色だろうか。絵本で見るような大きい像や噴水、綺麗な花等が沢山置かれている。
「はぁ……もう引き返せないし、てか人居るのこれ?」
珍しく弱音を吐く元貴に言われ、初めて周りをよく見渡した。確かに人が居るような気配はない。かといってまた場所を間違えているとは言い難いだろう。さっき向かった所と比べ物にならないくらいの広さだ。
「もう考えるだけ無駄だよ。ほら!歩いて歩いて!!」
「何そのきもいリズム!!足つるって!」
元貴のやる気を出す為に、リズミカルな手拍子をしてみる。手拍子に合わせて歩こうとする元貴の動きがおかしくて、思わず吹き出してしまう。”支え合い”、その言葉が心に滲んだ。
「やっぱでか…。」
どのくらい歩いただろうか、かなり屋敷へと近付いた。間近に迫るとやはり圧倒される迫力だ。屋敷の周りも、屋敷自体もかなり手入れが行き届いているようで、やっと人のいる痕跡を感じる。
「ディズニーにあっても違和感なくない?」
隣で建物を見つめる元貴に問いかける。
「寧ろこの敷地の広さディズニーでしょ。」
「金持ちって凄いね。」
「若井。」
屋敷の近くにある庭園の所に差し掛かった時、元貴に袖を引かれる。
「あれ見て。」
元貴が指を指す方向を見ると、建物の4階の窓に人影が見えた。あまりにも高すぎて姿が豆粒くらいでしか見えないが、確かにこちらを見ているようだった。
「やば…どうするナイフ飛んできたら。」
「お前もナイフ持ってんだから対抗しろし。」
無茶を言う元貴と揉めていれば、窓の横にかかっていたカーテンが閉められて姿が見えなくなる。どうするべきかと元貴と顔を見合わせていると庭園の方から微かに話し声がした。
「人の声。」
元貴にも聞こえていたのか、小さく呟いて目線でジェスチャーをされる。意図を汲み取り、足音を立てないように庭園へと向かう元貴の背中を追いかけた。