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神様だって知らない噺5
昔の夢だ。
真っ白な、窓の無い廊下。
コツコツと響く靴の音に一定のリズムで揺れる視界。
誰かに抱っこされて廊下を歩いている。
暖かいけども硬いような。
シーツに包まれてるのか少し動きにくいが包み込まれる安心感。
それが心地よくてうつらうつら…眠くて堪らない。
そっか、僕はマムに抱っこされて廊下を歩いているんだ。
『子供というのは、不思議な生き物だ』
子守唄のようにマムの声が聞こえる。
『こんなに小さく柔く、脆いのに』
『どんなに願っても、祈っても、』
『案外、勝手に生きていく』
楽しそうに、寂しそうに。
『だが存外……そんなものだろうね』
独り言なのか、語りかけてるのか。
よくわからない。
『………おや、あの子達は…』
『!ヤバい…ッ 冬梅教官だぞっ』
『だからやめろと言ったぞ俺は』
『だって…カリンの奴、禁止エリアに髪留めぶん投げられたって言ってたし…』
『冬梅のおばさーんッ この辺にカリンの髪留めなかったー?』
『ジェイク、バース…龍臣に幸真……まったく悪い子たちだね』
……?
マムが誰かと話してる…
『さてさて、なんでこんなところに来たのかな君達は』
『カリンが他の班の奴らにちょっかいかけられてよぉ…髪留めをこの禁止エリアに投げられたって』
『それで…僕ちゃん達探しに来たというか…カリンに泣かれたらさぁ…』
『髪留め…か…まったく困った子がいたものだね
しかしどんな理由があろうが君らは禁止エリアには入ってはいけないよ
さぁ、帰りない 髪留めは私が探してあげよう』
『……なぁ、そいつ誰?』
『………』
『あぁ、この子は私の班で面倒見てる子だ』
『こいつ訓練もしないで寝てんの⁇』
『寝るのは子供の仕事だよ』
『僕ちゃんらも一応子供なんだけどなぁ〜』
…なんか脚とか触られてる気がする…
くすぐったい…っ
ぺしッ
『お?こいつ蹴ってきたぞ生意気だなぁー』
『やめろ幸真』
引っ張られたシーツ。
一瞬だけ見えたのは…紫色の瞳の子。
……あれ、誰だっけ…なんだか見たことあるような…
『こら幸真、いけない子だね』
『……おばさんもっかい今のやつみせて!』
『ダメだよ』
『なに幸真、女の子だったの?可愛かった?』
『女じゃなかったけどなんか可愛かったのが寝てた』
『え!みたーいッ』
『それよりカリンの…』
『いい加減にしなさい子供達⁇』
『『『『すいません』』』』
遠退いていく足音とマムの溜息。
『やれやれ、好奇心はなんとやらだ』
『……ふぁ…懐かしい夢みた、…な…?』
仮眠室から起きると何故か身体が重い。
物凄く重い。
起き上がれないくらい重過ぎて視線を動かすと…
『……小林の兄貴…?』
いびきをかく小林の兄貴が抱きしめていた。
『(僕、寝言で変なこと言ってないかな…)』
ボロが出た時の言い訳を瞬時に何パターンか考えながらも抜け出そうと試行錯誤。
『なに逃げようとしてんだ速水ぃ…』
『あ、おはようございます小林の兄貴っ えっと…すいませんベット占領して!
直ぐに退きますッ』
『だから逃げんなグリンかますぞ』
抜け出すのは失敗してしまい、
そのまま兄貴の抱き枕にされる。
『………』
『兄貴?(紫色の目……猛禽類みたいだなぁ)』
『いいから寝ろぉ』
end