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タバコ辞めてない、吸うアキくんがいます
アキデン付き合ってる
※R15表現あり
「…5時」
数字だけが光る時計をみて髪をかき上げる。
いつもは7時だから、あーーー
つまり結構早ぇってことだ
「なんかもっかい眠んのも違ぇなァ〜」
やることもねぇまま天井だけ見てたら、腹まで鳴りはじめた。
仕方ねぇしベッドから出る。
雑に腹を掻いて部屋を出た瞬間、煙のにおい。
案の定、アキがタバコくわえてキッチンに突っ立ってた。
「はよー」
「おはよう。早いな」
アキのタバコ見ながら、カスみてぇな人生振り返って気付いた。
俺、食ったことあっけど、吸ったことねぇ
「なぁ、うまいのそれ」
アキは口から煙吐くだけで、返事なけりゃ、こっちみることもねぇ。
気になって聞いてみただけなのに、無視かよ
「な、一口くれよ」
「一口とかじゃねぇんだよ、未成年が。吸わせるわけねぇだろ」
「…ケチ」
「ケチとかじゃねぇ」
アキは表情ひとつ変えず、タバコを軽く叩いて灰を落とす。
その仕草が妙に大人で、吸っていいアキとダメな俺の差をみせつけられてるみたいで、なんか癪に触った。
「じゃねぇじゃねぇばっかじゃん。独り占めとかずりぃ、くれねぇと逮捕するぞ」
アキに一泡吹かせてやる
ふざけ半分で手を伸ばした。
けど、俺の指先が少し触れた瞬間、アキはタバコをひょいっと上げる。
ズルだろそれは
届くわけねぇじゃん
「おい!」
「くれてやったらマジ逮捕だ。デンジ、お前16だろ?4年待て」
「んな待てっかよー」
ちぇー
腕組みながらタバコ咥えたアキが、やけにかっけくて、ムカつく。
面白くねぇ
足元にしゃがみ込んで、膝抱えて項垂れた。
白いふわふわしたカーペットを手でいじる。
ちょっとくれぇいいじゃねぇか
「…そんな良いもんじゃないぞ。骨が腐るからやめとけ」
アキの声が頭ン上から落ちてくる。
少し優しい声。俺達が落ち着く声。
「じゃあアキはなんで吸ってんの?うまいからじゃねーの?」
しゃがんだまま見上げると、タバコ咥えっぱのアキと目が合う。
「……別に」
軽く眉を動かしたアキが、先に視線をそらした。
「タバコって味色々あんだろ。俺が食ったの美味くなかったし。吸ったら美味かったんかな」
目瞑って考える。
カレー味とか?オムライス味?チョコとか美味そうだな
「……食いもんじゃねーよ」
「わかってっし」
あん時は仕方なくだ、食わなくてもいい暮らし出来てたんならしてねぇっての
心ン中でブツクサ文句言ってたら、目の前が煙まみれんなった。
「あ!?なにすんだよ!」
ゲホッ
煙吸っちまって思わず咳き込む。
手で払い除けて煙の先見上げたら、遠く見つめるアキがいた。
「呼出煙で我慢しとけ」
「コシュツ円ってなんだよ。飯買えんの?」
「は?」
「あ?」
途端にアキがじっと見下ろしてくる。
だから俺も、咳き込みながらゆっくり視線だけあげた。
「…俺が吐いた煙のことだ」
「ほーん」
呆れたみてぇに咥え直したタバコの火が、赤く揺れてて、目が離せねぇ。
ぐぅ…
俺にしか聞こえねぇ音が鳴って、腹押さえながら立ち上がった。
「はー……腹減った。なんか作ってくれよ」
「自分で最強のパンでも作れ」
「俺が作るサイキョーもうめぇけど、アキが作った飯のが超クソうめぇ。あと俺にコシュツ煙吸わせた罰な」
「お前が吸いたいって言ったんだろ…」
アキはそう言いながら火を揉み消して、銀色の皿ン中に捨てる。
そのタバコ見てたら、ちょっとだけ勝った気になった。
「……味噌汁くらいなら作ってやる」
「よっしゃー!さすがアキ!」
「調子に乗るな。具材は残り物だ」
ぶっきらぼうなくせに、キッチンに向かう背中はどこか暖かくて。
なんか胸の奥がじわっとした。
「……アキ」
「なんだ」
「コシュツ煙、苦ぇ」
「ふっ…当たり前だ馬鹿」
ちょっと口元が緩んだアキを見て、胸ン奥があったかくなる。
けど
タバコの匂いがまだ残ってて、嫌だった。
無性にアキの匂いを嗅ぎたくなった。
気持ちが先動いて、アキの首元に鼻をうずめた。
「は、急になにすんだ」
アキの肩がビクっと跳ねる。
「……嗅ぎたくなった。悪ぃかよ」
俺の好きな匂い。落ち着く匂い。
目を逸らさず、アキだけ見る。
「…じゃあ俺にも嗅がせろ」
「は、」
アキの手が俺の腰に回ってきて、一気に距離が詰まる。
仕返しみてぇに、俺の首に顔埋めて、アキが何回か深呼吸する。
「ぁ……ん、もっ、いいだろ」
「まだだ、足んねぇ」
淡々と言いながら、唇を俺の首筋に落とす。
「ぁ゛は、う。おい…やめ、やめろってぇ」
「タバコ吸うよりよっぽど良いかもな」
鼻で笑いながら言うアキの目が熱っぽくて、勝手に俺の体温もあがっちまう。
「俺ちょっとしか嗅いでねぇのに、アキは好き放題やりやがって…不公平だ」
「じゃあお前も好きなのやってやるよ」
息が混ざる距離で、アキは小さく笑う。
軽く、でも確かに触れるキス。
「…もっと、」
「はいはい」
音を立てながら、何度か唇を合わせる。
キッチンで響く小さな音に、頭がクラクラした。
「ベロキスは?」
「…まだ朝だぞ」
「朝だとダメなの?」
触れたい気持ちがぐるぐるして、アキとのキス以外考えらんなくなる。
「……ちょっとだけな」
アキは少し考えた後、唇を合わせてくる。
一瞬ベロ先が触れて、胸んところもぐわっと熱くなった。
「……ん」
思わず目を閉じて、体が反応する。
甘く、でも軽く、ベロもほんの少し触れるだけ。
「…おわり」
「んぇ…なんで、」
「ちょっとって言っただろ、これ以上は止まれなくなる」
唇はまだ近くて、息が混ざる距離。
アキの温度と匂いに、心も体も完全に持っていかれそうだった。
今までの経験から続きを期待してしまった体は、熱を持て余して、アキを求める。
体温も息も混ざったまま、アキでいっぱいになりてぇ
「あきぃ…」
「ほら、味噌汁作ってやるから……続きは夜な」
取り付けた夜の約束で、まだ朝なのにそのことしか考えらんなくなる。
「ん…」
「明日は俺も休みだから、期待しとけ」
へへっ
小さく笑いながら、もう一度アキを見た。
まだ朝の弱ぇ光ン中、目の前にはいつも通りのアキがいて、でも心は今日の夜すること考えてドキドキしてる。
今日は始まったばっかなのに、楽しみで仕方ねぇ。
この熱と気持ちを抱えたまま、俺はアキの味噌汁を静かに待った。
✄—-おまけ—–
【生存if、デンジ20歳】
タバコの箱を指で弾く。
あれから何度か吸ってみたけど、どれもこれも似たような味だ。
「……なんか、うめぇってわけじゃねぇんだよなぁ全部」
今ならアキが言ってたことも少しはわかるかもしれねぇ
ベランダの柵に肘かけてぼやいてたら、後ろのカーテンが揺れた。
「朝っぱらから何してんだ、お前」
寝起きで髪が少し跳ねたアキが、ゆるいTシャツのまま出てくる。
「吸ってた。俺ももうハタチだしな」
「だからってな…起きてすぐはやめとけ」
アキが俺の手からタバコをひょいっと奪って、
自分の指で挟み直す。
「……貸せ」
火花が小さく飛んで、アキがふっと煙を吐いた。
その煙が俺の顔にうっすらかかる。
懐かしい匂い
「……なぁアキ」
「なんだ」
「アキの煙ン方が、うめぇわ」
俺がそう言うと、アキの右手が止まった。
「あれ?褒めたんだけど」
「褒め方に問題あんだよ……お前は」
アキは吸ったタバコを俺に返そうとしたから、俺はその手をそのまま掴んだ。
「……俺ァもういらねぇかな、アキの煙でじゅーぶん」
「変なこと言うのやめろ」
「変じゃねぇだろ」
アキの左手が俺の頬に添えられる。
気付けばゼロ距離になって、煙の香りごとキスされた。
柔らかくて、4年前よりちょっと深いやつ。
離れたあと、アキが小さく息を吐く。
「デンジ」
「…ん?」
アキの目が、少し意地悪に細められる。
「お前も大人になったし、夜まで待たなくてもいいかもな」
そのまま手を引かれて部屋に戻されて、意味わかんねぇくらい甘ぇ朝だった。
やっぱ大人ってずりぃ