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テレビの音が、やけに遠く聞こえた。
《東京湾岸市街地で戦闘発生》
《未確認機、地上侵入》
画面に映る、崩れた街。
逃げ惑う人々。
そして——
白と藍の巨人。
「……ガンダム?」
悠斗は、思わず立ち上がっていた。
その姿を見た瞬間、
胸の奥がざわついた。
——朝倉恒一。
理由は分からない。
でも、なぜかそう思った。
「まさか……」
次の瞬間、
悠斗はカバンを掴んで教室を飛び出していた。
「おい、どこ行くんだ!」
声を背に、走る。
駅を抜け、
規制線の向こうへ。
サイレン。
ヘリの音。
地面が、時折震える。
「……近すぎる」
警官の制止を振り切り、
瓦礫の影に身を潜めた。
その時——
地面が揺れた。
ズン、という衝撃。
悠斗は、見上げてしまった。
そこに、
ガンダムが立っていた。
「……でか……」
息を呑む。
ビルよりも高い影。
その足元で、人間はあまりにも小さい。
「……恒一」
届くはずのない名前を、呟いた瞬間。
閃光。
爆音。
悠斗は反射的に身を伏せた。
「くそ……ここで戦ってる……!」
逃げなきゃいけない。
分かっている。
それでも、目が離れなかった。
――恒一視点――
地面を踏みしめた瞬間、
都市の重さが全身に伝わった。
「……地上戦か」
瓦礫。
崩れたビル。
逃げ遅れた人影。
地下よりも、
現実が近い。
《敵影、前方二》
敵機は距離を取り、
銃口をこちらへ向けている。
「……撃ち合いはできない」
盾も、銃もない。
あるのは——
実体剣と、短剣型ビームソードだけ。
「避けて、斬る……!」
敵の射撃。
ビルの外壁が吹き飛び、
破片が降り注ぐ。
恒一は防がない。
避ける。
瓦礫を蹴り、
建物の影へ一気に滑り込む。
短剣を抜く。
淡く光る刃。
「——行け!」
腕を振り抜く。
ビーム短剣、投擲。
光の刃が一直線に飛び、
敵機のセンサーを貫いた。
「……効いた!」
敵が一瞬、動きを止める。
その隙に、
推進を全開。
距離を詰め、
実体剣を抜く。
だが——
「重い……!」
刃を受け止められ、
力で押し返される。
衝撃。
シラヌイが後退し、
地面に膝をつく。
その瞬間、
視界の端に人影が映った。
「……っ!」
瓦礫の影。
逃げ遅れた誰か。
——近すぎる。
敵が、
トドメを刺そうと武器を振り上げた。
その時、
コックピットが赤く染まった。
《LIMIT RELEASE
AVAILABLE》
03:00
心臓が跳ねる。
「……これしかない」
恒一は操縦桿を強く握った。
「リミット解除……!」
世界が、変わる。
シラヌイの両目が、
紅く輝いた。
推進音が、別物になる。
「……世界が、遅い」
一瞬で距離を詰める。
投げた短剣を空中で回収し、
逆手に構える。
刀と短剣。二刀。
刃が交差する。
一閃。
敵機は、
何が起きたか理解する前に崩れ落ちた。
残り時間。
02:39
恒一は、
一度だけ地上を見下ろす。
瓦礫の影に、
確かに人がいる。
「……生きて」
それだけを胸に刻み、
再び前を向いた。
空の下、
同じ場所で。
それぞれが、
違う戦いをしていた。