テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
――恒一視点――
残り時間。
01:14
赤い数字が、脈打つように減っていく。
「……まだ……!」
身体が、重い。
いや——
機体じゃない。
思考が、ついてこない。
視界の端が歪み、
音が、水の底のように遠ざかる。
《WARNING
NEURAL LOAD EXCEEDED》
警告音が、頭の内側を直接叩く。
——速すぎる。
——強すぎる。
人間のための力じゃない。
それでも、
目だけは逸らせなかった。
敵機の残骸が、
市街地の向こうで燃えている。
だが、次の瞬間——
空が、暗くなった。
違う。
覆われた。
《敵増援確認》
《戦艦級ユニット、一隻》
巨大な影が、雲を割って降りてくる。
砲門は、街を向いていない。
連邦軍機でもない。
——こちらを見ている。
「……狙いは……」
胸の奥で、答えが形になる。
「……シラヌイか」
殲滅じゃない。
制圧でもない。
鹵獲。
生け捕り。
戦艦の腹部が開き、
複数のモビルスーツが射出される。
包囲。
「……間に合わない……」
残り時間。
00:31
――友人視点――
逃げなきゃいけない。
本当に、そう思っていた。
でも——
身体が、動かなかった。
爆風。
衝撃。
瓦礫に叩きつけられた脚が、
言うことを聞かない。
「……くそ……」
視界が揺れる。
その時、
影が落ちた。
ゆっくりと、
圧し潰すような影。
見上げた先にいたのは、
黒と紫のモビルスーツだった。
細身のシルエット。
角のような頭部。
——さっき戦っていた敵とは、違う。
センサーが、
こちらを正確に捉える。
「……やめ……」
その瞬間。
敵モビルスーツの胸部装甲が、静かに開いた。
金属音。
装甲がスライドし、
内部が露出する。
「……え……?」
中が、見えた。
——コックピット。
だが、
キャノピーの内側は、白く霞んでいる。
霧。
蒸気。
それとも、意図的な遮蔽。
人影は、確かにいる。
輪郭も、
こちらを見ている視線も分かる。
それなのに——
顔だけが、見えない。
まるで、
「ここから先は知るな」と
拒絶されているかのように。
次の瞬間、
巨大な腕が伸びてきた。
抗う間もなく、
身体が宙に浮く。
「……っ!」
世界が反転する。
コックピットは、
何事もなかったかのように閉じた。
霧だけを、残して。
――恒一視点――
見えた。
——見えてしまった。
瓦礫の中。
動けずにいる人影。
そして、
その上に立つ黒い敵機。
次の瞬間、
敵の胸部装甲が開いた。
「……っ!」
モニター越しでも分かる。
中に、
人がいる。
だが——
白い霞が、
顔を覆っている。
影だけがある。
視線だけが、こちらを向いている。
「……誰だ……」
声にならない問い。
——人間だ。
——だが、敵だ。
その境界線だけが、
はっきりと刻まれた。
敵機の腕が、
友人を掴み上げる。
乱暴に。
まるで、戦利品のように。
「……やめろ……!」
叫びたかった。
通信を開こうとするが、
指が、動かない。
《LIMIT RELEASE
TERMINATION》
00:00
赤が、消える。
世界が、
一気に重くなる。
「……っ!」
膝をつく。
シラヌイが、
完全に停止しかける。
それでも、
目だけは逸らさなかった。
——黒い装甲。
——角のある頭部。
——霧に包まれたコックピット。
顔は、見えなかった。
だが、
この機体だけは——
一生、忘れない。
――友人視点――
意識が、遠のく。
空が、
回っている。
最後に見えたのは——
白いガンダムが、
膝をついている姿。
赤い光は、もうない。
「……やっぱり……」
声にならない声。
「……お前……だったんだな……」
そして、
闇。
戦艦は、撤退していった。
——目的を果たして。
残されたのは、
崩れた街と、
膝をついたガンダム。
そして、
奪われた一人分の未来だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!