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奥州 米沢城
細川藤孝は伊達晴宗の前に立つと、書状を差し出した。
「伊達晴宗殿、ご機嫌麗しゅう。公方様からの命である。謹んで受けられよ」
「はっ」
晴宗は恭しく書状を受け取る。
「此度、関東管領を戻す正義の戦が関東で始まっておる」
「そこで伊達家には、此度は北条から何か言われても、受けることはないようお願いいたす、足利将軍 義藤。」
「はっ。公方様からの命、必ずお守りいたします」
晴宗は藤孝の様子を見て、気遣うように尋ねる。
「それと、かなりの長旅でお疲れでは。食事等、用意させていただきますが」
藤孝は笑いながら首を横に振った。
「はははは。お気持ちはありがたいですが、急いで帰らねばなりませんので」
「それに、ちょっと気になる茶屋があったので、そこに行ってみたくて」
「そうでございましたか。どうかお気をつけて」
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その後すぐに、別の者が晴宗のもとへやってきた。
そう、風魔小太郎である。
晴宗は小太郎を見て、静かに口を開いた。
「長旅、大義。そして……北条家の方が、なんの御用かな?」
小太郎は頭を下げる。
「どうか援軍を。我々は今川に見捨てられました。このままでは……」
しかし晴宗は申し訳なさそうに答える。
「申し訳ないが……先ほど公方様の使者が参られてな」
小太郎は一瞬、言葉を失った。
(一足遅かったか、くそっ……)
「そうでございますか……」
今ので事情を察し、小太郎は頭を下げる。
「失礼いたす……」
晴宗はそんな小太郎を見て、せめてもの気遣いを見せた。
「お詫びをかねて、せめて食事を用意いたす……」
小太郎は首を横に振る。
「いえ、私にそのようなことをすれば、逆臣となりましょう。お気になさらないでくださいませ……」
「申し訳ない……。気をつけて帰られよ」
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その頃、米沢城下の茶屋。
藤孝はのんびりと茶を楽しんでいた。
「いやぁ、田舎のお茶もなかなか美味しいんだよなあ。おい、娘。おかわりだ」
「ありがとう、おさむらいさん。ははは」
藤孝は茶を受け取り、満足そうに飲む。
「……うむ、美味い」
すると、城の方向から出てくる小太郎の姿が見えた。
藤孝はそれを横目で確認する。
「……」
(公方様の読み通りだな)
藤孝はまた茶を飲み、何食わぬ顔で座っていた。
小太郎が藤孝の前で足を止める。
「そこのお侍さん。ちょっと向こうで話せねえかい」
藤孝は平然と答える。
「よかろう」
茶を飲み干すと、代金を置く。
「美味かったぞ、茶。釣りは要らぬ」
「また米沢に来ることがあったら、この茶屋に絶対来るよ」
その際、ひらがなで無理やり連れていかれたと兵に伝えるよう書いた紙を、さりげなくお金と共に茶屋の娘へ渡した。
そして藤孝は、何食わぬ顔で小太郎についていく。
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米沢城下、人通りのない場所。
小太郎は周囲を確認すると、藤孝へ問いかけた。
「あんた、公方様の命できたな……?」
藤孝はとぼけたように答える。
「いかにも。そうだが、何か某に用事かな?」
(さて……どこまで誤魔化せるか)
小太郎は目を細める。
「そうか……」
そして懐から苦無を取り出した。
「悪いが、見つけてしまった以上、返すわけにはいかねえ」
「……死んでもらうぞ」
藤孝は刀に手をかける。
「……よかろう」
小太郎が先手で苦無を投げつける。
しかし藤孝は刀で容易に弾いた。
「ほう……今のを弾くとは」
「おりゃ!」
キンッ!
苦無と刀が激しくぶつかり合う。
藤孝は鍔迫り合いを受け止めながら、口元を上げる。
「某も、剣豪将軍と称えられる公方様に手ほどきを受けておる」
「その程度で倒せると思うてか!!!」
小太郎は足に仕込んだ隠し刃をさらに向ける。
藤孝はぎりぎりでかわした。
「……ちっ、やりおるわ」
小太郎はさらに隠し刃を使い、攻撃を仕掛ける。
藤孝は次々と攻撃をかわしていく。
「ちっ……某は仕事終わりにお茶を飲んでいただけだったのに……」
(公方様が某を使者にした理由がわかりました。これは並の者では殺されてしまうわ)
小太郎は息を整えながら笑う。
「やるな。ここまで攻撃を交わすとは……」
「だが……俺一人だと思っていたか……?」
すると物陰から、風魔の忍びたちが姿を現す。
「くくくっ」
「フフフフ……」
たくさんの忍びが藤孝を取り囲む。
藤孝は周囲を見渡した。
「ちっ……いくら忍びとはいえ、1人に対してちょっと卑怯じゃないか?」
「さすが関東管領を暗殺しようとしていた下衆なだけはあるな?」
藤孝は刀を構える。
「……某を本気にさせたこと、後悔させてやろう」
一気に二人を切り伏せる。
「ぐふっ……!」
小太郎が叫ぶ。
「同士の仇め……💢」
藤孝は呆れたように返す。
「逆ギレ乙なんだが」
「先に襲ってきたのは貴様らだろう^^」
小太郎は歯を食いしばる。
「ぐぬぬぬぬ……!」
そして忍びたちへ叫ぶ。
「おめえら、絶対に生かして返すな!」
「いっせいにかか……」
その時だった。
「そこのお前たち、何をしている!」
伊達の兵士達が駆け寄ってくる。
兵士は藤孝の姿を確認して驚く。
「むっ、公方様の使者の細川殿!」
「なるほど、連れていかれただけに飽き足らず、その者達に襲われておられるのですな……」
小太郎は舌打ちする。
「ちっ……兵に勘づかれたか!」
「引けっ! ひけーー!」
忍びたちが一斉に逃げていく。
「待ってくだせえ、兄貴ー!」
藤孝は刀を納める。
(ふう……ちょいと危なかったな笑)
そして伊達兵へ頭を下げる。
「助かり申した」
「お茶を飲んでいたらここへ無理やり連れてこられて……災難でした」
(すっとぼけ)
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米沢城内。
晴宗は藤孝の姿を見るなり、心配そうに声をかける。
「藤孝殿、危のおございましたな」
「無理やり連れていかれたあげく、集団で囲まれるとは……」
藤孝は苦笑する。
「いえ……笑」
「せっかく気になった茶屋でお茶を飲んでいたのに、本当に最悪でした」
(すっとぼけ)
晴宗は真剣な顔で告げる。
「どうかお泊まりください」
「危ない目に遭った使者の方を、今のままお返しするわけにはまいりませぬゆえ」
藤孝は少し考えてから頷く。
「そうさせていただく^^;」
「少し某も疲れ申したので」
「食事も用意させていただく」
「それと、ぜひわたくしの倅に稽古をつけてやってくだされ」
「兵が素晴らしい剣術だったと言っておられたので」
藤孝は笑う。
「ははは。分かり申した」
「少し休んでからでよろしければ、稽古をつけさせていただきましょう」
(流石に疲れてるんだが……^^;)
そこへ伊達輝宗がやってきた。
「藤孝様、ありがとうございます」
「手ほどき、よろしくお願いいたします」
藤孝は微笑んだ。
「ご丁寧にありがとう」
「でも手加減はしないからな???」
輝宗は迷いなく答える。
「はい。本気でお願いいたします」
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そうして細川藤孝は輝宗に稽古をつけ、食事をもらい、一晩泊まってから畿内へと帰っていった。
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コメント
1件
こんにちは、あおいです。第二十六章「封激」、読ませていただきました。 藤孝さん、ほんとにいいキャラしてますね…!公方様の使者として毅然としているかと思えば、茶屋で「おかわりだ」と気軽に注文している姿にほっこり。小太郎との戦闘シーンも、軽妙なセリフ回しでスピード感があって面白かったです。あの「すっとぼけ」の塩梅が絶妙で、思わず笑ってしまいました。輝宗に稽古をつける展開も、人柄がにじみ出ていて好きです。次も楽しみにしていますね🌷
富来 えび
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富来 えび
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