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富来 えび
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富来 えび
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相模 小田原城
「申し訳ない……一足遅かったようです。
しかも公方様の使者を仕留め損ないました。
間違いなく向こうの士気が上がるかと……」
風魔小太郎は深く頭を下げる。
「……どうか俺を厳罰として始末してくれ」
「兄貴、何言ってるんです?!
やめてください! 死んだって何も変わりませんよ!」
周囲の忍びたちが慌てて止めに入る。
そこへ、さらに兵が駆け込んできた。
「申し上げます!
相模湾にて梶原様と里見義堯の軍が衝突!
梶原様は劣勢となり、砦へ一時下がった模様です!」
「何たることだ……」
幻庵が険しい顔をする。
氏康は小太郎を見つめ、ふと疑問を口にした。
「……なあ小太郎。
本当に、お茶を飲んでいただけなのか? その者は」
「えっ?」
「わしは待ち伏せされていたとしか思えんのだ。
いくら米沢城下とはいえ、人が通らぬところで襲ったのであろう?
それにしては兵が来るのが早すぎる。
……最初から、兵がやってくるよう仕向けられていたのではないかな」
「……少しは説教でましになったようだな」
幻庵がぽつりと呟く。
小太郎は拳を握りしめた。
「くそっ……!
茶屋にいたこと自体が罠だったのか💢」
(逆ギレ乙……とか煽られたな……💢)
「とにかく処罰はせぬ。
ただでさえ犠牲が多いのに、お前まで殺すわけにはいかぬ」
「はっ……まことに申し訳ございません……」
「それより、梶原景時は無事か?」
兵がすぐに答える。
「はっ、無傷でございます。
ただ……里見が以前より強くなっていると、他の兵から聞き申した」
「くっ……。
しばらくどこに消えたかわからぬと思っておったら、突然現れて……」
幻庵は悔しげに唸る。
そこへ元忠が続ける。
「佐竹義重も、未だに消息不明でございます。
それと、武田は山側へ向かったとのこと。
長尾・上杉勢は川越を拠点とした模様です」
少し間を置いて、元忠は小さく息を吐く。
「……物資を全て回収して正解でした」
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駿府 今川館
雪斎のもとへ北条から届いた抗議の書状。
それを読み終えると、静かに口を開いた。
「北条から抗議の手紙が届いております。
『今川家は早雲様の頃からの付き合い。
それがし氏康の妻は今川から。
義元様の嫡男、氏真殿は某の娘を娶っておられる。
公方様からの命とはいえ、断りもなく見捨てるとはどういうおつもりか』
……とのことでございます」
義元は書状を見ながら、鼻で笑った。
「うるさいのぉ、北条も。
それだけの関係だったということよ。
特に儲からぬし……」
そして、楽しそうに笑う。
「さらに最後通告を重く見ず、煽りの返書を息子は送る。
そんな奴について行きたいと思うかのぉ。
ほほほほ」
「やれやれ……」
雪斎は苦笑する。
「抗議も気にせずですかな。 全く……」
「まあ一応、礼儀として氏康殿の娘御は、
『貴殿の血を今川に残すため、引き続き引き取らせていただく』
とは伝えよう。
織り返しで息子を悲しませたくないし、人質は引き続き確保しておきたいからのお」
「冷たいですなあ」
雪斎も苦笑しながら肩をすくめる。
「まあ……たしかに弁明もしなかったそうですからなあ。
我らも、逆賊にはなりとうない。
引き続き見捨てるとしましょう。
はっはっは」
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相模 小田原
今川からの返書が届いた。
そこには、冷たい言葉が並んでいた。
『今まで返書を送らなかったことは謝罪いたす。
しかし最後通告を重く見ず、
煽りの返書を貴殿の嫡男は送り、
貴殿は弁明もしなかった。
我々は平気でそのような行いをする逆賊にはついていけぬ。
あと心配するな。
貴殿の娘は、せめて北条の血を残すため、
今川家で引き続き預からせてもらう。
返したら、うちの氏真も悲しむので。
では、ごきげんよう。
今川義元
太原雪斎』
書状を読み終えた氏康は、しばらく言葉を失っていた。
「…………くっ……。
妻がまた、なんというか……。
ただでさえ見捨てられたことを知らされて、
泣く姿を見ていたのに……。
今度は間違いなく殴られる……」
幻庵は拳を握りしめる。
「……くっ💢」
氏政も書状を覗き込み、ぽつりと呟いた。
「これ……耳障りのいいこと書いてるけど、
ようは…『人質として返さないよ』ってことだよね……」
元忠も苦々しい顔をする。
「くっ……痛いところを突きおって。
全て知られていたとは……今川め。
しかし太原雪斎も、ここまで冷たいとは……」
小太郎も俯いた。
「ぐっ……姫様……何たること……」
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川越城
「関東管領、上杉憲政様。
ごきげんよう」
細川藤孝が恭しく頭を下げる。
「伊達家当主、伊達晴宗様は、
動かぬことをお約束いただきました」
「ほほほ、そうか。
公方様には、この憲政が感謝していたと伝えておくれ」
「はっ。
では、すぐ帰らねばなりませぬので、
これにて失礼いたします」
藤孝は一礼すると、そのまま去っていった。
業正が嬉しそうに口を開く。
「やりましたな。
これで北条は孤独でございます」
景虎は忍びからの報告書へ目を落とす。
「しかし……今川は冷たいな」
「ですな……」
政景も苦笑する。
「今は特に関係はございませんが、
もし今後関わることがあれば……」
憲政も複雑そうに呟く。
「……命令とはいえ、このように冷たい返書を送り、見捨てるとはのお。
北条の自業自得とはいえ……」
景虎は報告書を閉じた。
「とにかく、これで勝ちの目は揃いました。
里見からの報告の書が届き次第、
包囲を始めるといたします」
「はっ!」
業正が力強く頷く。
「頑張りましょう!!!」
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コメント
1件
うーん、これは北条にとって厳しい局面ですね……。風魔小太郎が自ら処罰を願い出る場面から、氏康の「待ち伏せされていた」という冷静な分析まで、一瞬の緩みが命取りになる戦国の厳しさが伝わってきました。特に今川からの“冷たい返書”は、家族の絆を政治に利用する非情さが痛いほど伝わってきて、氏康の「妻に殴られる」というぼやきに思わず苦笑い。上杉方も着々と包囲網を固めていて、この先どう切り抜けるのか気になります。