テラーノベル
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_ジリリリリッ
朝を知らせる目覚ましの音が鳴った
『んッ….〜〜!』
もう朝か、昨日は遅くまで起きていたから体が怠くて仕方がない。
正直、ここまで客が辿り着くことは滅多にないし、早くに起きる意味は無いけれど…
早寝早起きを心がけてるしルーティンは崩したくない
グッと伸びをしながらベッドから起き上がり、いつも通り着替えて朝食を摂る。
さて、開店の準備だ
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____
俺は森本 未来、転生者。
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通勤ラッシュで、道路では忙しなく車が走り交う朝。
俺は誰かに背を押され、そんな道路に飛び込んだ_
覚えている最後の景色はスローモーションで、次の瞬間には俺を轢いているであろう車の運転手の、絶望と驚愕に染まる表情が酷く頭にこびりついている。
それでもあまりにも突然の事だったから、俺は、俺を突き飛ばした犯人の顔を知らずに死んだ。
(なーんか…あの運転手さんには申し訳ない…恨むなら俺を押した奴を恨んでくれ)
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さて、それからの俺の話。
俺は轢かれて死んで、目が覚めたら知らない街中に呆然と突っ立っていたのだ。
それは中世ヨーロッパのような街並みで、俺が大好きで読んでいた、異世界もののラノベを彷彿とさせた。
街を行き交う人達も、俺がいた日本という国の国民達とはかけ離れた雰囲気で、みな顔の作りも西洋人寄り
話す言語も理解できない、聞いたことも無いようなもの。
俺はすぐに確信した
『あっ、これ異世界転生だ(歓喜)』
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そして馬鹿な俺は、異世界転生を果たして速攻決意したのだ。怪しい人外雰囲気のお兄さんになろうと_(個人店を構えていたら尚良し)
厨二病?自覚済みです
しかしまぁ、その世界のことを知らなければ何も始まらないため、先ず言語習得に情報収集。
とても地獄だった。
自分で言うのもなんだけど、俺は大の勉強嫌い。新しい言語を習得し、且つその世界の文化や常識を把握するなんて…
一歩間違えたら泣くところだった。
それでも理想の人物像に近づく為、思考力を鍛えたし、体術もそこそこ身につけた。
腹筋が6つに割れた時は、我ながら感動したなぁ。
顔面に至ってはこれといった変化が無く、前世より多少美形になったかな?ぐらいなんだけどな…
あと、なんか頭の良い奴が読んでそうな本も粗方読破。
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これが厨二病の底力…。
___
とまぁ、格好つけは置いといて…
転生から5年ほど、血のにじむ様な努力と根性で”_とある曰く付きの森”の中に店を構えたな。
これはまだ記憶に新しい
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あれは確か、2人の大工職人のおっちゃんと店を建てる場所の相談をしていた時だったか_
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「あぁ?人が寄り付きにくそうな場所ぉ??
兄ちゃんよぉ…そんなとこに店建ててどうすんだ。」
「そうだ、店なら繁盛してなんぼだろ?」
『えぇ…まぁ、色々と事情がありまして…』
(人に見つかりにくい場所にある方が格好いいからなんて…口が裂けても言えない…。)
そんな思いを隠すように目を伏せると、片方の大工職人は考え込むように顎髭に触れ、やがてニヤリと口角を上げて言った
.
「はぁ…人が寄り付かねぇ場所なぁ。
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_なら、あの樹海じゃねぇか?」
『…樹海?』
何やら厨二病心を擽る素晴らしい響きが聞こえたぞ??樹海に店とか最高に格好いい。
_けれど、もう片方の職人は目を見開き鬼のような形相で樹海を提案した職人の胸ぐらを掴んだのだ
「おめぇッ!何言ってんだよ!!」
『うぉ…なっ…..え?』
えええ、めっちゃ怒ってる。こわい…ゴリマッチョのマジギレは怖い…
片方の職人の鬼気迫る勢いに、若干引き気味であった俺だったが、やはりそれには理由がある様だ。
「あぁっ?!何キレてんだよ…ッ!
あそこはどこの国の領地でもねぇんだしっ!別に平気だろーが!!」
「そういう事言ってんじゃねぇよ…ッ!!」
『あ、あは…まぁまぁ…』
「お前まさか…ッまだあんな噂話信じてんのか!?」
ほぉ、噂話?????
『…そのお話、詳しくお伺い出来ますか?』
_
_
__曰く、その樹海は云年前からどこの国からも手がつけられておらず、完全な無主地であった。
何故ならばそこは悪魔の領域だから、と
『(悪魔…な、このくらいの時代ならよく信じられてたらしいしなぁ…)』
どうせ噂に尾ひれがついて、そんなものが流行ったのだろう。
…一応このまま彼らが教えてくれた言い伝えを掻い摘んで話すと
_悪魔の領域を犯さんとせし愚かな者には罰が下る。という、如何にもって感じのもの。
しかしたかが言い伝え、ならば何故そんな言い伝えでどこの国も手を出せていないのか。
それは実際にその樹海に入った者は皆帰らぬ人となったからだ。
しかも1回や2回じゃない。悪ガキが度胸試しに樹海に入って消え、国が樹海を自国の領土にしようと偵察隊を出せば消え_
ブチギレてた方の大工職人のおっさんだが
彼の嫁さんも国を跨ぐ旅行に出た時、道のショートカットに樹海を通ろうとした御者のせいで、巻き添え行方不明となってしまったよう。
なんて理不尽。まさに悪魔の所業だな
__
そんな感じで、実害まで出始めてしまえばどこの国も安易に手が出せなくなるというわけで…。
土地の持ち主もできず、完全なる無主地としてその樹海だけが孤立してしまったというわけらしい
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__そしてそんな土地に店を建てた物好きがこの俺だ^^
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「はぁ!?!?兄ちゃん俺の話聞いてなかったのか?!」
『はは…いやいや、聞いていた上でですよ。』
「ま、地主もいなくて建設費用しかかからない土地なんて最高だもんなぁ」
どうやら片方の職人には、土地代ゼロで店を建てられるから決めたと思われたようだが、そっちじゃないんだよなぁ。
まぁ??そんな悪魔の領域とやらの魅力に気付けるのは俺だけで充分だし????
__
樹海に店を建てることが完全に決定したあとも、暫くはあのおっさんには止められたが
ここまで来てこの俺が引き下がるわけもなく…
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それが丁度1,2年前くらいだな。
つまり少なくとも、転生してから6年が経っているわけだ。現実はシビア、とんとん拍子にはいかないな。
そして不思議なことに、俺の店を建てるために嫌々樹海に足を運んでくれたガチムチおっちゃん一同は、悪魔の呪いで行方不明になることも無く無事に樹海から出られ、今も普通に大工職人として健在なようだった。
やはり噂はただの噂。人が消えなかったのはいいことだが、少し拍子抜けだ。
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__チリンチリン。
軽やかな鈴の音が鳴った、店のドアが開かれたのだ。
俺はそこでようやく、数年間の振り返りから意識を現実に引き戻した
『久々の客だ…!こりゃ丁重に持て成して、俺の怪しさ格好良さを世に広めてもらわねば…』
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アホにつける薬は無いと言うが、間違いなく俺には薬が必要だろう。
コメント
1件
ユメショ界隈数年越しの出戻りだから今後辻褄合わなかったり萎えて更新止まったりするかも