テラーノベル
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5話
深呼吸をしていると、扉の奥からファルガーさんの声がした。
「ルカ、いるか?」
ちょっとびっくりした。でも、嫌感じじゃなかった。
「はーい」
ガチャっとドアの開ける音がして、PCを持って入ってきた。
「ルカ、どこに置く?」
部屋を1周見回す。
「机の上に、お願いします」
そういうと、配線も完璧に揃えてくれた。
「これで使えると思うから」
「あ、ありがとう…ございます…!」
ファルガーさんは俺を見てから部屋を見渡した。そして、何を言う訳でもなく、頷いた。
「他にほしいものはあるか?
そうだな…例えばスマホの充電器とか」
そこで俺はコートに入れっぱなしのスマホの存在を思い出した。
「あ、ほしい…です…!てか、コートに入れっぱなし…」
すると、豪快に笑って「今持ってくる」と言った。
スマホは自分で回収して、電源をつけてみた。けど、何日も使っていないスマホに充電はなかった。
ふと、このスマホが起動した時の事を考えるとなぜか、胸がザワザワした。嫌な感じ。
そんな時、ファルガーさんが扉の外から声をかける。
「入るぞ」
立ちすくんでしまっている、俺の肩に手を置いた。
「無理しなくていいさ」
その言葉に今まで何にもならなかった感情が溢れた。
ファルガーさんの肩に顔を寄せ、俯いたままだった。ただ、堪えていたものが零れた。
ファルガーさんは何も言わず、背中をさすってくれた。
「すいません…」
しばらくして落ち着くと、我に返って謝った。
ファルガーさんは無邪気に笑った。
「気にすることないさ」
そう言った後、一呼吸おいて、ちょっと話してくれた。
「これは、恩返しなんだ。浮奇は前にもルカのような青年を家に迎え入れた。そして、今のようにPCを与え、新しい環境を与えた。そして、今では一緒に暮らしている。」
「それって…」
俺の中で2人の顔が浮かんだ。そして、すぐに答え合わせがあった。
「他でもない。今、君の目の前にいる人物だよ」
いたずらに笑って、部屋を出ていった。
1台のPC。俺にとっては新しい物。でも、確かにこの家の歴史が宿っていた。
ファルガーさんも今の俺のような気持ちだったんだろうか。期待と不安が混ざりあったような、ザワザワするようなワクワクするような。
きっと、そうだろう。
話せてよかった。聞けてよかった。
大丈夫。何もかもきっと上手くいく。
そんな思いで、PCの電源を入れた。
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