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「姉さん、私ターゲットの人に良くしてもらってた。」
朝ごはんのパンを食べていた時ボソッとアザミが語り出す
「…私が何者かも分からないのに、お金が無くて困ってるって言ったら疑いもせず助けてくれて」
「とても良い人、だったのね…」
シオンは涙を零し、唇を噛み締める
「姉さん…私そんな人を殺してしまったの。沢山色んな景色も見せてくれて、美味しいご飯も食べさせてくれた…そんな人を」
泣くアザミの頭を撫でるシオン
アザミの底知れない悲しみは今のシオンには理解できないものだろう
大切な人を殺すという選択をしたアザミ
「(私がもっと早くこの計画を立てていたら、アザミはこうなることはなかったのか)」
アザミに連絡を取れば、施設の人間に怪しまれる為取れなかったとはいえ、結局自分の欲ばかりですぐ行動せずにアザミの事を考えていなかった自分を恨む
自分がまだ自由な世界を楽しみたいと願ったから、カラスバさんとまだ一緒に居たいと思ったせいでアザミにこんな思いをさせてしまった
だからこそ、この計画は自分のケジメであり懺悔でもあるだろう
「アザミ、私ね今のターゲットに賭けてるの」
「──は?」
「あの人がきっと私達を自由にしてくれる。だから次の任務が来ても冬までは待って、絶対大丈夫だから。」
そう笑うシオンの意味が当時のアザミには理解ができなかった
ターゲットがなぜ?
自分達を自由に?
そんなの出来ない。
あの人達の居場所がバレた事は無い
それに私達もバラす事はできない
バラしたら…どうなるか分かっているから
「ゲホッ…ゴホッゴホッ」
「姉さん?大丈夫…?」
「大丈夫大丈夫!へチコ入っちゃった」
「(姉さんが風邪を引くことなんてそんなに無いはずなのに…姉さんは特にそう造られてるし)」
笑うシオンにアザミは違和感を抱きつつも頷くことしか出来なかった
「アザミ、言った通りに動くんだよ」
「分かってる、春まではターゲットに触れないし近寄らない。」
「…本当にごめんなさい、アザミ」
「姉さんが何に謝ってるのか分かんないけど、私こそ昨日はごめん。
気が動転してて姉さんに当ってしまった」
そういってアザミはシオンに抱きつき、シオンも抱きしめ返す
それから少しして、アザミは少し寂しそうな笑みを浮かべながら手を振り洞窟を離れた
アザミがもうあんな思いをしないようにしないと
───もう、残された時間が少ない
「………ごめんね、アザミ」
ポツリと呟いたあと、シオンは洞窟に戻りまた調合した強い毒を手に取り飲み込んだ
───数日後
「ゴホッゴホッ!…ゔ、ゲホッ」
「水飲みや。それよかお前ほんとに病院行ったんか?」
「行きましたよ〜、ただの風邪を拗らせてるだけだって言われましたもん」
そう言いながらカラスバから水を受け取り、飲みながら元気そうに話すシオン
あれから日が経つにつれ、シオンの咳は酷くなり、たまに呼吸も覚束ないことがあった
その度にシオンは大丈夫と笑うが、カラスバはシオンがいなくなってしまうような気がしていた
「それより!エイセツシティ!楽しみですね!!」
「あー、なんやもうそんな時期か」
「寒いところに行くんですし、コートとか買いに行きませんか?」
そう言ってカラスバに嬉しそうに提案するシオン
そんなシオンに対し、乗り気じゃなさそうに溜息をつくが「仕方ないな、風邪ひかれても困るし」と行って、立ち上がる
「ほら、行くで。」
「!…へへ、やった〜!!」
カラスバが手を差し伸べると少し驚いたように目を見開きつつもすぐに解けたような笑みを浮かべてカラスバの手を取り歩く
──商店街
「カラスバさ〜ん!!はいっ!」
「!!なんするんや」
「マフラーですよ〜!しかも私とお揃いの♡
きゃ〜!!カップルに間違われちゃう〜!!」
そう言いながら冗談めかしく笑うシオンに対し、「お前の彼氏なんぞなったら毎日大変そうやな」と笑う
「ひっど!…まあ、そうですよね〜…はぁ…お揃いはなしで違うのを──」
「このマフラーは別に嫌とは言っとらんやろ。」
「えっ?」
まさかの言葉に驚きカラスバの方を見るがその時にはカラスバはレジの方に行っており、ちゃっかりシオンの分も含めてマフラーを買っていた
その様子に少し驚きつつ頬を染めるシオン
「どしたんや、嬉しいやろ?」
「そ、そりゃそうですけど…いざこんなことされると驚くというか…」
口を尖らせて照れたように話すシオンに対し「またお前のええ顔知れたわ」と御満悦のカラスバ
そんなカラスバに少し胸が締め付けられた
「いや〜!ありがとうございましたっ!」
「お陰様で財布が空っぽや」
「そういいつつたんまり持ってるくせに〜」
「金は有限やぞ、阿呆」
「あでっ!」
コンッとシオンの頭を小さく小突くが、顔は笑みを浮かべていて楽しそうだ
空を見るともう暗く、夜空が煌めいていてアーケード街はイルミネーションで彩られて綺麗だった
「こう見ると恋人みたいですね!手とか繋いじゃいます?」
そう言って手を差し出すシオン
そんなシオンの柔らかい笑顔と手にドキドキ、と自分には似合わない音を立てる
「?カラスバさん?」
「っ!あ、アホか!!」
「ま、そーですよね〜」
そんな様子のおかしいカラスバの顔を除くが慌てて顔を背ける
「カラスバさんが私みたいな餓鬼好きになるはずないですもん。」
「あ、当たり前やろ」
ドッドッドッと騒がしい心臓の音に反し、いつも通りに振る舞おうとするカラスバ
「…でも、彼氏ならカラスバさんみたいな人がやっぱりいいですね〜!!
かっこいいし、優しいし、それに沢山愛してくれそうだし!」
そう笑うシオンに対し口を抑えつつ小声で「阿呆か。」と呟くカラスバ
シオンは確信犯なのかと疑うが本人は特に何も思っていないようでそのまま続けていつものように話し続けている
「恋人って言ったら、一緒に寝たり、カフェに行ったりするのかなぁ〜…いいなぁ…」
「お前、元彼とかおらへんのか」
どこか寂しげな笑みを浮かべるシオン
そんなシオンに対し、カラスバが問いかける
「だから私最近やっと外に出れたんですよ〜?彼氏なんていませんよ!」
「なら、ええわ」
そうケラケラ笑うシオンの言葉に少し安心したような笑みを零すカラスバ
「お前は…ほんま明るいヤツやな」
「それは元気ってことですか?」
目にかかったシオンの髪を手でゆっくりと取りながらシオンに優しく声をかける
「そうやな、元気ってことや」
「えへへっ、元気だけが取り柄ですか──ゔっ、ゲホッ!ゴホッ…!!」
「シオン!大丈夫か!?」
嬉しそうな笑みから一気に苦しそうに咳き込むシオンの背中を撫でながら話しかける
「大丈夫、ゲホッ!ごほっ、…大丈夫ですから」
「阿呆!大丈夫やないやろ!知り合いの病院教えたるさかい、そっちに───」
「大丈夫ですから!心配してくれてありがとうございます。」
そう言ってカラスバの言葉をさえぎりいつものような笑みを浮かべるシオン
そんなシオンに対し「また、嘘やろ」と呟くが何度も大丈夫と話し病院に行こうとしないシオン
そんなシオンに対し無理矢理にでも病院に連れていこうとするカラスバに対し、折れたのかシオンが声を上げる
「もー、じゃあエイセツシティに行ったら病院行きますから!それまでは!!お願いです!!」
「……はァー………ホンマにエイセツシティ行ったら病院行くんやな?」
少し悩み、シオンをジッと見るがうるうると子犬のような瞳で見られ意思が揺らいでしまう
「行きます!嘘ついたら殴って下さい!!」
「ほんなら、嘘ついたら何でも言う事聞いてもらうで」
「はい!分かりました!!」
カラスバの考えも知らずに頷き笑うシオン
そんなシオンに少し呆れつつも「(まぁいい口実ができたし)」と思うカラスバ
しかし、数週間後カラスバはその選択に後悔をする事となる