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うわっ…2話目、もう胸が痛すぎるよ🥀 またK-Tさんが死んじゃったんだね…でも「好きだ」って言ってくれたの、前のループと同じで、でも今度はちゃんとメバルに届いたのが切ない。 Xの正体が気になりすぎる。右腕がない金髪の影…メバルの過去と繋がってるのかな。 「次は絶対に死なせない」って誓うメバル、強くて美しかった。3話目も読みたい…!
「おはよう、メバル」
その声を聞いた瞬間、メバルは目を開けた。
薄暗い倉庫の天井。
古い時計。
床に置かれた工具箱。
そして、目の前に立っているK-T。
生きている。
胸に鉄の棒は刺さっていない。シャツも赤く染まっていない。顔色も悪くない。いつものように、冷静で、少し眠そうな表情をしている。
メバルは勢いよく起き上がった。
「Kさん……?」
「どうした」
「胸を見せて」
「は?」
「早く!」
メバルはK-Tのシャツをつかみ、無理やり胸元を確認した。
白いシャツ。
傷はない。
血もない。
けれど、メバルの手のひらには、まだ前の未来で触れた赤い液体の感触が残っている。あの温度も、ぬめりも、指の隙間から流れ落ちた感覚も、すべて覚えていた。
「本当に、生きてる……」
「当然だろ」
「Kさん」
「何だ」
メバルはK-Tの胸に耳を当てた。
鼓動が聞こえる。
一度。
二度。
三度。
確かに動いている。
「メバルちゃん?」
K-Tが困ったように呼ぶ。
メバルは顔を上げた。
「今、何時?」
「午前十時」
「ライブの日?」
「そうだ」
「午後八時十二分まで、あと何時間?」
「八時間くらいあるが……」
K-Tはメバルの顔を見つめた。
「何があった」
メバルは答えられなかった。
彼の胸から流れた血。
冷たくなった指。
床に広がった赤い水たまり。
そして、電話の向こうの声。
#SCRATCHERS
K-Takasaka
109
#タイムループ
――未来は変えられねえんだ。
「夢を見たの」
メバルはそう言った。
「悪い夢?」
「Kさんが死ぬ夢」
K-Tの表情がわずかに強張った。
それを見て、メバルは確信した。
彼も、何かを感じている。
夢の中で聞いた名前。
K-Takasaka。
まるで自分自身を他人から呼ばれたような、不自然な響き。
「今日のライブは中止にする」
メバルが言った。
「駄目だ」
「またそれ?」
「客にはもう告知してある。中止するなら、理由が必要だ」
「理由ならある。危険だから」
「具体的には?」
「警察用バスのブレーキが外れる」
メバルが言うと、倉庫の空気が止まった。
カキが、ソファの背もたれから顔を出した。
「何それ?」
「午後八時十二分に、裏の坂道に停めた警察用バスのブレーキが外れる」
メバルは続けた。
「マサカゲがバスに潰される。アオノの右腕が巻き込まれる。カキとミステーは、倉庫の中に取り残される」
「僕たち、死ぬの?」
カキの声が震えた。
「……死なない」
メバルは答えた。
「死ぬのはKさんだけ」
「それ、安心していい話じゃない!」
マサカゲが進行表を下ろす。
「メバルちゃん。その情報はどこから来た」
「電話」
「誰から?」
「X」
アオノが工具を置いた。
「X?」
「K-Tのガラケーに電話をかけてきた。Kさんと同じ声だった」
K-Tは黙っていた。
メバルは彼の肩をつかむ。
「知ってるんでしょ」
「何を」
「Xのこと」
「知らない」
「嘘」
「嘘じゃない」
「じゃあ、どうして今、そんな顔をするの?」
K-Tは答えなかった。
彼の視線は、倉庫の奥にある古い鏡へ向いていた。
鏡の中には、六人の姿が映っている。
その一番端に、誰もいないはずの赤い影が立っていた。
メバルは振り返った。
何もいない。
もう一度、鏡を見る。
影も消えている。
「……今、誰かいた」
「誰もいないよ」
ミステーが言った。
「赤い人がいた」
「照明の反射じゃないか」
マサカゲが言う。
しかしK-Tだけは、鏡から目を離さなかった。
「ライブを始める」
K-Tが言った。
「Kさん!」
「Xの予言を止めるには、起きる場所を確認する必要がある」
「死ぬ場所を確認してどうするの!」
「原因を見つける」
「原因なんてどうでもいい。Kさんがステージに立たなければ、それでいい」
「メバル」
K-Tは、ゆっくり彼女を見た。
「俺が行かなければ、誰かが死ぬかもしれない」
「それがXの狙いかもしれない」
「そうだとしても、見捨てることはできない」
「また自分を犠牲にするの?」
「犠牲になるとは言ってない」
「前もそう言って死んだ!」
その言葉が倉庫に響いた。
カキが息を呑む。
マサカゲが眉をひそめる。
K-Tは、メバルを見たまま動かなかった。
メバル自身も、今の言葉を聞いて震えていた。
前も。
死んだ。
まるで本当に起きたことのように口から出てしまった。
「……ごめん」
メバルが呟く。
K-Tは首を横に振った。
「謝るな」
「でも」
「俺は死んでいない」
K-Tは胸に手を当てた。
「今は、生きている」
その言葉に、メバルは拳を握った。
「あんたが生きているってことは、未来は変わるんだ」
K-Tは返事をしなかった。
その日の夕方、六人は警察用バスを坂道から移動させた。
ブレーキを二重に確認し、車輪には大きな止め具を挟んだ。アオノは制御系統を調べ、マサカゲは裏口から客席までの避難経路を組み直した。
「これでバスは動かない」
アオノが言う。
「本当に?」
メバルが聞く。
「今度こそ」
「今度こそって言った?」
「……絶対に動かない」
マサカゲがため息をつく。
「不安になる言い換えをするな」
ライブが始まった。
メバルはステージに立ちながらも、何度も時計を見た。
午後八時。
午後八時五分。
八時十分。
何も起きない。
客席ではカキとミステーが即興の小芝居を始め、マサカゲが演奏しながら二人を睨んでいる。アオノのギターソロが響き、K-Tのドラムが会場を力強く支えていた。
メバルは少しだけ安心した。
予言は外れる。
未来は変えられる。
午後八時十二分。
その瞬間、倉庫の外で金属が弾ける音がした。
次に、地面を震わせるような轟音。
観客が悲鳴を上げる。
メバルが裏口を見ると、止め具をつけたはずの警察用バスが、坂道を下っていた。
「ありえない……」
アオノが呟く。
バスはまっすぐ倉庫へ向かっている。
その進行方向には、マサカゲがいた。
「マサカゲ!」
メバルが叫ぶ。
マサカゲは振り返った。
バスのヘッドライトが、彼の身体を白く照らす。
「動け!」
K-Tが叫び、ドラムセットから飛び降りた。
マサカゲは足を滑らせた。
倒れた彼の上を、バスの影が覆う。
K-Tは走った。
メバルも走ろうとしたが、足が動かない。
また同じだ。
またK-Tが、誰かを助けるために走っている。
K-Tはマサカゲの腕をつかみ、身体ごと引きずった。
「早く立て!」
「K-T、逃げろ!」
「先に行け!」
バスの車体が迫る。
マサカゲはK-Tに押し飛ばされた。
次の瞬間、バスがK-Tに激突した。
鈍い音が響いた。
K-Tの身体が宙に浮き、倉庫の壁へ叩きつけられる。
「Kさん!」
メバルが駆け寄る。
K-Tは壁にもたれたまま、動かなかった。
胸と腹部に強い衝撃を受けたらしく、シャツの下から赤い液体が滲み出している。最初は小さな染みだったが、呼吸をするたびに広がり、布地を深い赤へ変えていった。
「K-T!」
マサカゲが這うように近づく。
「俺は大丈夫だ。お前は?」
「俺は無傷だ!」
「なら……よかった」
「何を言ってる!」
マサカゲがK-Tの肩を揺する。
その動きに合わせて、K-Tの口から赤い液体がこぼれた。
メバルはそれを見て、息ができなくなった。
「Kさん、動かないで。救急車を呼ぶから」
「メバル」
「何?」
「バスの下に……誰かいないか確認してくれ」
「今はあんたの話をしてるの!」
「確認してくれ」
「嫌!」
K-Tが咳き込んだ。
そのたびに、胸元から赤い液体が流れ落ちる。
メバルは両手で彼の傷を押さえた。だが、指の間から赤いものが溢れ続ける。押さえても、押さえても止まらない。
「Kさん、死なないで」
「……死なない」
「約束して」
「約束する」
「嘘つき!」
K-Tの手が、メバルの頬に触れた。
指先は赤く濡れていた。
「まだ、死んでない」
「でも、死にそうじゃない!」
「そうだな」
K-Tは、少しだけ笑った。
「だから、今のうちに言っておく」
「何を」
「メバルちゃん」
「その呼び方、今はやめて」
「……好きだ」
メバルの目から涙が落ちた。
「それ、前にも聞いた」
K-Tの顔がわずかに曇る。
「前?」
「知らない。夢で聞いた」
「そうか」
K-Tの呼吸が浅くなる。
救急車のサイレンが近づいていた。
けれど、間に合わない。
K-Tの身体から力が抜けた。
「Kさん?」
メバルは彼の胸に耳を当てた。
心臓が一度、大きく鳴る。
その次の音は、ひどく遠かった。
そして、二度と鳴らなかった。
「Kさん!」
メバルは彼を抱きしめた。
赤い液体が服を濡らし、腕から床へ落ちていく。
マサカゲが呆然と見つめている。
カキは泣きながら口元を押さえ、ミステーは何度も「違う」と呟いていた。アオノは救急隊を呼び続けている。
そのとき、K-Tのガラケーが鳴った。
低い着信音が三回。
表示は、X。
メバルは赤く濡れた手で、通話ボタンを押した。
『なあ、メバル』
電話の向こうの声は、K-Tと同じだった。
『これでわかっただろ? 未来は変えられねえんだ』
メバルは、腕の中のK-Tを見下ろした。
「あんたが生きているってことは、未来は変わるんだ!」
『でも、今こいつは死んでる』
「次は助ける!」
『何度でも同じだ』
「何度でもやる!」
『無駄だ』
「無駄じゃない!」
メバルは叫びながら、K-Tの冷たくなった手を握りしめた。
「あんたが生きている未来を、私が見つける!」
電話の向こうで、Xが黙った。
やがて、低い笑い声が聞こえた。
『なら、次はもっと近くで見ろ』
「何を――」
『俺が、どんな姿をしているかを』
通話が切れた。
メバルが顔を上げる。
倉庫の屋根の上に、赤い影が立っていた。
金髪。
左手に、K-Tと同じガラケー。
そして、右肩から先には腕がない。
赤いシルエットは、こちらを見下ろしていた。
メバルが瞬きをしたとき、その姿は消えていた。
腕の中で、K-Tはもう動かない。
けれど、メバルにはわかっていた。
ここで終わりではない。
また朝が来る。
またK-Tは生きている。
そしてまた、誰かを庇って死ぬ。
メバルは血に濡れたK-Tの手を握りしめた。
「待ってて」
返事はない。
「次は、絶対に死なせない」
倉庫の時計が、午後八時十三分を指した。
その瞬間、世界が白く弾けた。