コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
食事が済むと、口あたりがソフトな冷えた白ワインが出された。
ダイニングテーブルからソファーへ移り、隣り合ってワインを飲んだ。
「……私は、幼い頃から父が大好きで、父のような人になりたいと思っていました。けれど、」
聞いていた話が、ふと途切れて、いつの間にか空いていた彼のグラスに、先を促すように私からワインを注ぎ入れた。
「……けれど私は父のようにはなれずに、大人になればなる程、厳格な母に似通ってくるようで……」
話し終わると、彼は足されたワインをぐいっと一気に飲み干して、深くため息をついた。
「……誰も愛そうともしない母と、誰も愛してもこなかった私は、そっくりです……」
眉根を寄せて、苦く呟く彼に、
「……そんなことはないですから」と、首を横に振り応えた。
「先生は、私を愛そうとしてくれてますし……」
苦悶に歪むその顔を見つめ、
「それに、これから愛していけばいいじゃないですか……」
そう言って、ひと息を吸い込むと、
「……私が、お付き合いをしますので」
今の自分の思いを伝えた──それは彼の話を聞く内に、自然と口をついてこぼれた、私自身の心からの言葉だった……。