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僕はもう付き合ってかれこれ三年目になる恋人との写真を眺めていた
「フェージャ、」
恋人であるヒョードル君。彼は自ら愛情表現をするタイプではないし僕自身もそれを受け入れていた。
筈だったのだが、
ここ三か月話していないどころか会ってすら居ない
流石に寂しいというか、嫌われてるのかなとすら思い始めてしまっていた
はあ、、、、、、、、、辛いなあ
ヒョードル君が振り向いてくれないのは僕に興味が無くなったからだろうか。
なら、話は簡単だ。彼の退屈しのぎに成ればいい
何とも滑稽で憐れな道化師に成ってしまえば全て楽になる
そう軽く見ていた
もし、あの三歳児がこの状況を知ったら気が狂ったかとでも言われそうだ
格下相手に態と撃たれたのだから
全ては、彼にもう一度興味を持ってもらうためだ
流れる血液は留まるところを知らず、白い服を染め上げる
「ゴーゴリさん」
表情一つ変えないんだ、
「おはようございます」
起きるとどうやらヒョードル君の自室で寝かせれていたらしく、隣にいた彼と目が合う
「やあ、お早、、、、、、、、いった、」
撃たれた左脇腹には包帯が巻いてあってドス君が巻いてくれたんだな。と少し嬉しくなったのも束の間、彼は何も言わず部屋を出ていってしまった
僕をもっと見てよ、
「ヒョードル君!!!」
彼は僕を横目で見た
「何なんです?」
呆れた様子で溜息を付く彼を数週間前までの自分は軽く受け止められていたのだろうか
「クイーズ!なんだと思うー?」
震える声を押さえ込んで無理矢理声を上げた
「はあ、つまらないのでやめてください。
貴方自分勝手なんですよ」
が、返ってきた答えはある意味予想通りで、残酷だった
やっぱり嫌われたのか、
「え、、、、、、あ、、、ごめんね、
別れるしか、ないのか」
外套が僕を包み隠す
悟られないように
都合の良い道具のままの頃で終われるように
嗚呼、やっぱりどうしようもないんだな
「ヒョードル君ッ、もう、どうでもいいの、?」
泣いても叫んでもどうしようもない
そうわかってるのに、苦しくて、不甲斐無くてしょうがないよ、
この前ヒョードル君に治療してもらった傷痕が、じくじくと痛むと共にとてつもなく痒いのだ。
兎に角自分を傷つけたくて傷つけたくてどうしようもなくて
自分でもこの感情が何なのか解らない
でもやってしまえば楽なれる気がしたんだ
真夏の夜ながらのじめじめとした生温い風呂場の中、電気も点けずに涙で湿った床に転がる。
汗で額に張り付く前髪すらも愛おしくて
腕がドクドクと脈打って紅が咲く程何も考えられなくなるのが心地良い
このまま全部忘れられたら、なんてなぁ
「どういうことです?別れるなんて」
「ドス君、」
ドアの淵に軽く体重をかける彼と目が合わない様に目を瞑る
「なにって、君、、、、、僕を捨てたのに、なんでいるの、」
「は、」
あからさまに場の空気が凍った。
整った彼の顔がぐちゃぐちゃに歪むが、電気が点いていない為良くは見えない
「え、、、、あ、、、、、、ごめ、」
「ドス君、、、、?いッッッ、!?」
彼の気に触れてしまったのか、自傷をした腕を踏み躙られてしまう
滲む血液が服を汚している
「ぼく、わるいことした、、、?ごめんなさッ、」
立ち去ろうとするドス君の足に必死に縋り付いた
捨てられたという事実をまた叩き付けられた気がしたから、怖かったのだ
「興味ないです」
彼に掴まれた前髪はひりひりと痛む
「で、僕が貴方を何です?嫌っている?捨てた?笑わせないでください
あれだけじゃ足りませんでしたか。そうですか
じゃあいいですよ、上書きしますから」
自傷した時に使った剃刀を拾い上げた君の瞳は爛々と輝く
「いッ!!??、、、ぁ、?」
ざしゅ、ぷつ、
皮膚が刃物によって切り裂かれる音は今聞いてもやけに生々しい
自傷痕に重ねる様に僕の腕を切り刻見続ける彼は一体どんな心情なのだろうか
「ゴーゴリさん♡」
最期に見えたのは酷く口角を上げた彼だった
「ずっと我慢していたことがこんな形で叶うとは、」
質素なベットに蹲る様に泥睡する彼を見つめた。痛々しい腕の傷はぱっくりと割れておりこれほどまでに追い詰められていたのか、と改めて静観してしまう
最近様子が可笑しいと懐疑な目で見ていたのを勘違いしたようだが、ここまでとは思っていなかったのが失敗だった
と今では後悔している
気絶している彼にそっと足枷を着けて悦に浸る
僕は真っ当な『恋人』であろうとした
でもそれを拒んだのはゴーゴリさんですから、しかたないですよね?
最初から貴方のことが好きなのに、愛されていないだなんて酷いですよ
どれだけ貴方を愛しているか。
殴って嬲って躰に何度でも教え込んであげますよ
貴方を壊すのは僕だけでいいんです
「はあ、また自傷したんですか?」
「うん、だからさ、『おしおき』して?」
君にアイシテ貰いたくて今日も心に噓を吐き捨てる