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【忘却の契約】
バッコ
悪魔が跋扈する東京。
公安に所属する新人デビルハンター紫乃(シノ)は“記憶の悪魔”と契約していた。
彼女の能力は代償が重い。
ーー戦うたびに、[誰かとの記憶]を1つ失う
その日、紫乃は仲間を守るため、強力な悪魔と対峙する。
勝つためには、大きな代償が必要だった。
「じゃあ、これを持ってて」
相棒の少年が、戦いの前に一輪の花を差し出す
紫苑の花だった。
「もし俺のこと忘れても、これ見たらなんか思い出せる気がするだろ」
紫乃は少しだけ笑って、それを受け取る。
戦いは終わった。
街は守られた。
でもーー
紫乃の中から、彼の存在は綺麗に消えていた。
名前も、声も、全部。
ただ、ポケットには一輪の紫苑。
『…これ、誰からもらったんだっけ』
思い出せない。
でも、なぜか胸が苦しい。
その瞬間、世界の端に黒いチューリップが揺れた。
それは“記憶の悪魔”が残した印。
[忘れていい]という優しさの証。
でも紫乃は、その花を踏みつける。
『…やだ、忘れたくない』
名前も知らない誰かのために、涙が溢れる。
その頃、どこかで。
彼はまだ生きていた。
紫乃に忘れられたことも知っている。
それでも、空を見上げて呟く。
「いいよ、それで」
ポケットには、もう一本の紫苑。
「俺は忘れないから」
黒のチューリップは「忘れていい」と囁く
紫苑は「忘れない」と抗う
紫乃はこれからも戦うたびに、何かを失う。
それでもきっと、何度でもーー
忘れたはずの“誰か”を好きになる。
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ななゆけ
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