「ヴィオラ……」
頭が真っ白に、なる。また、だ。また、あの時と同じ。ミシェルがいなくなってしまった、あの時と。
デラが、亡くなった?これは、何かの冗談だろうか。テオドールを見遣るが、とてもそんな冗談を言っている様には見えない。
「王都に着いてから、彼女に会ったんだ」
テオドールの声が聞こえているのに、何を言っているのか理解出来ない。ヴィオラは、靄がかる声に、意識を手放した。
眩しさに、ヴィオラは目を開けた。頭がくらくらする。
私、どうして……。
昨夜の事が頭を過ぎり、意識は一気に覚醒した。
気を失って、その後どうやって部屋に戻って来たのだろうか……。テオドールはあれから、どうしたのだろうか。
『……デラが、亡くなったんだ』
「っ……」
まるで、頭を殴られた様な感覚に襲われた。頭が痛いっ……。
『彼女は殺された。彼女を殺させたのは……王太子だ』
レナード様が、デラを殺させた……。
『王太子は、これまでにも多くの人の命を奪ってきた。君も分かっている筈だよ、君の家族を……。それに、君が滞在していた屋敷の使用人達も、残らず殺されたよ』
あの町に滞在中、屋敷の使用人の人達には、とても良くして貰った。こんな私に、優しく接してくれた。
『彼等は、僕の事を報告しなかった。分かっていたんだ。僕があの屋敷に出入りしている事が王太子に知られれば、殺されてしまうと。だから、黙っていてくれた……しかも、殺されそうになっても……最期まで言わないでくれたみたいでね』
どうして、屋敷の人達を殺したのだろう……テオドールの事を報告しなかったから?たった、それだけ……?
どうして、デラを殺したのだろう……。
どうして、両親や兄、妹を殺したのだろう…………。
『僕の部下の報告では、見るに耐えない程、悲惨な光景だったそうだよ。屋敷の中は、死体と飛び散った血で染まって……』
両親や兄や妹の事も、レナードは、自ら、陥れ死に追い遣ったとすんなり認めた。
だが、分からない。どうして、レナードは、罪を重ねるのか。
罪を堂々と認めても、理由は言わなかった。
ただひたすらに私を愛しているとだけレナードは言う。
『ヴィオラ、此処にいてはダメだ。君が、王太子をどう思っているかは、正直僕には、分からない。だが、君が大切な人を殺されても尚、王太子の側にいるというなら……止める術は僕にはない。ただ……少し調べさせて貰ったけど、君の最愛の弟だったミシェル、彼も又王太子によって殺されたみたいだよ』
考えもしなかった………… レナード様が、ミシェルを……。
『僕の言葉は、信じられない?』
どうして、そんなに悲しそうなんですか?テオドール様。
『明日の晩、僕も舞踏会に出席する。それまで、ヴィオラ、君自身の身の振り方を決めるんだ。もう1度言う。君が望むなら……僕なら、君を助ける事が出来る』
どうして、だろう。感覚が麻痺してしまったのだろうか……涙が、一滴も出なかった。
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