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「……茅野さん?」
扉の向こうから聞こえた住田さんの声に、泉の肩が震えた。
女子二人が顔をしかめる。
「やば、来た」
「無視しときなよ」
泉は声を出そうとしたが、喉がつまって言葉にならない。
その沈黙を、女子たちは勝手に解釈した。
「ねえ、住田さんには言わないでよ?」
「転校生が勝手に転んだってことでさ」
――違う。
そう言いたいのに、声が出ない。
そのとき。
ガンッ!!
個室の扉が強く叩かれた。
「……開けろ」
住田さんの声じゃない。
もっと低くて、鋭い声。
女子たちの顔色が変わる。
「え、男子……?」
ガチャッ。
鍵が外され、扉が開いた。
「……は?」
見たことのない男子が三人、立っていた。
真ん中の男子が女子の手からペットボトルを奪い取る。
「返してよ!」
「やめ――」
ザバァッ。
冷たい水が、女子二人に降りかかった。
「きゃああああっ!!」
真ん中の男子は冷めた目で言う。
「何すんの、はこの子たちの台詞でしょ。ってか、この前スクールカーストとか言ってたよね?そんなの死語だと思ってたよ。まだそんなの信じてんの?時代遅れすぎ」
女子たちは後ずさる。
逃げようとした瞬間、右側の男子が低い声で言った。
「逃げる前に言うことあるんじゃねぇの?」
女子たちはビクッと肩を震わせ、何も言わずに走り去った。
右側の男子が舌打ちする。
「……ああいう女、まじ嫌いだわ」
眼鏡の男子が苦笑する。
「まあ、気持ちは分かるけどね」
泉は震える声で紗良に尋ねた。
「ねえ……あの人たち、誰?」
紗良はすぐに答えた。
まるで“当然知ってる”という顔で。
「真ん中にいたのが星野陸くん。リーダー的な存在で、家がめちゃくちゃお金持ち。学校でもかなり有名だよ。
右にいたのが西川優くん。
クールでぶっきらぼうだけど……女子が苦手なの。
さっきみたいに、ああいうタイプには特にね。
左のメガネの子が春谷瞬くん。
とにかく賢くて、それでいて優しい。
三人とも、私たちと同じクラスだよ」
陸が泉の方へ歩いてくる。
「……何話してんの?風邪ひくから、保健室行ったほうがいいよ」
泉は勇気を出して聞いた。
「あの、……どうして助けてくれたんですか?」
陸は少し考えてから、軽く笑った。
「転校してきて二日目で、あの二人に言い返してたろ?普通できないよ。……かっこいいと思っただけ」
泉の胸が、じんわり熱くなった。