次の日、匡はいつもより早く目が覚めた。
どうしても昨日の紙のことが気になったからだ。
「図書館行ってくるー」
朝食を食べるなり図書館へ向かう匡をみて、母親が怪訝な顔をした。
朝は昼間に比べると断然涼しい。
今日は買わなくていいようにと準備してきた水筒の中の氷が、カランコロンとリュックの中で音を立てる。
浮き足立ったような気持ちで、匡はペダルを漕ぎ進めた。
図書館に着いた匡は駐輪場に自転車を止め、あの書庫に向かう。
外がまだ涼しいからか、館内の冷房が肌寒く感じる。
例の本は昨日と同じ場所にあった。
きっとまだ見られていないだろうと、匡は本を開く。
すると紙が1枚だけになっていた。
“この部屋のこの本を開いて返事をくれた誰かへ
突然の手紙ですみません。
私はあるものを探すためにこの本にメモを挟んでいました。
もしよかったら、どうしてこの本を手に取ったか教えてくれませんか。 “
自分が書いたものを見られたてしまったことと、新しく挟まっていた手紙のことで匡は混乱する。
「えっーと、、」
─とりあえず返事を書かないと、、
昨日の続きのページを破って、匡は返事を書き始める。
“こちらこそ、いきなりあんなものを挟んですいません。
昨日、偶然この部屋を通りかかって、昔よくこの本を読んでたことを思い出しました。
夢中になって読んだことは覚えてたのに、どんな話だったか忘れちゃってたので、手に取りました。
探しもの、見つかるといいですね。 “
「ふぅ。」
慣れない手紙をどうにか書き終えた匡は短く息を吐いた。
この返事が役に立つのか分からいが、とりあえず本に挟んでおく。
この手紙を書いた人はどんな人だろうか。
2階に上がると、すでに席が半分くらい埋まっている。
毎日来ているのだろうか、昨日席を譲ってくれた人は昨日と同じ席でもう勉強を始めている。
匡も空いている席に座る。
あの手紙を書いた人ももしかしたらここにいるかもしれないと、落ち着かない気持ちを鎮めるように匡はペンを走らせた。
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