朝の光がカーテンの隙間から差し込んで、ゆっくりと部屋を明るくしていく。
 グレーのシーツの上で、元貴は一度寝返りを打った。
もう少し寝ていたい気持ちを振り払うように目を開けると、すぐ隣で若井がうつ伏せになって寝息を立てていた。
 寝癖のついた髪を指先でくしゃっと撫でる。
普段は大人しく見えても、昨夜みたいに荒く腰を打ちつけてきて、何度も中で果てるような若井を思い出すと、胸が熱くなる。
 
 
 
 「……ふぅ。」
 
 
 
 小さく息をつき、ゆっくりと身体を起こす。
 
 
 
 
 朝ごはんを作ろう。
 目玉焼きと、カリカリに焼いたベーコン。
軽くトーストを焼いて、簡単でもちゃんとした“breakfast”を。
そういうことをしてあげたい相手だった。
 キッチンに立つと、涼しい朝の空気が肌を撫でた。
昨夜脱ぎ散らかしたTシャツを拾って羽織り、フライパンに火を点ける。
油がパチパチと弾ける音が心地いい。
こんな平和な時間すら、愛しくてたまらない。
 
 
 
 「……あー、起きねぇかな。」
 
 
 
 フライパンを傾けて、黄身を崩さないように焼き加減を調節する。
火を止め、皿に盛りつけたところで寝室から若井がのそのそと現れた。
 
 
 
 「……ん、おはよう。」
 
 
 
 低く掠れた声が、まだ寝ぼけたようだ。
 
 
 
 「おはよう。できたぞ。」
 「……いい匂い。元貴の作る朝飯、好き。」
 「……ん。」
 
 
 
 耳まで赤くなりそうで、思わず視線を逸らす。
 
 
 ダイニングに2人で座ると、若井は目を擦りながらも食欲を取り戻したようで、元貴の作った皿をじっと見つめた。
 
 
 
 「ベーコンエッグ、綺麗だな。」
 「だろ?」
 
 
 
 得意げに言ってから、ふと思いつく。
 
 
 
 「……滉斗、あーん。」
 「は?」
 「ほら、口開けろ。」
 「いや、いいって。自分で食う。」
 「いいから。」
 
 
 
 半ば強引にフォークでベーコンと卵をすくって若井の口に近づける。
観念した若井が「あーん」と口を開けた。
その瞬間、卵黄がぷるんと揺れて、少し口の端に垂れた。
黄身が滝のように流れ、落ちそうになる。
 
 
 
 「……あ。」
 
 
 
 その黄色い液が唇に伝っていくのを、元貴はやたらエロいと感じた。
 気がついたら身体が前のめりになっていた。
手を伸ばし、若井の顎を掴む。
そして、垂れかけた卵液を、自分の舌でそっと舐め取った。
一瞬で、若井の体がびくっと震える。
 
 
 
 「……っ、元貴、な、何……」
 「……こぼれるだろ。」
 
 
 
 言い訳みたいな声だった。
だけどそのまま唇を奪った。
最初は軽いキス。
でも若井の反応に興奮して、次第に深くなる。
口の中に舌を差し入れ、唾液と卵黄の生臭さと甘さが混じる。
互いの息が荒くなる。
 若井が一瞬抵抗するように背を反らしたが、元貴は離さなかった。
 
 
 
 「……っ、元貴……や、待て……」
 「やだ。」
 
 
 
 舌を絡める。
息を吸い取る。
口角からまた卵液が零れたが、今度は若井が舌を伸ばして元貴の口を舐めた。
 その一瞬、理性が飛びかけた。
朝のやわらかい光が2人を照らし、あたたかいはずの空間が熱くなる。
 
 
 
 「……っ、元貴、時間、大丈夫か?」
 「……はっ……」
 
 
 
 時計を見る。
スタジオ入りまで、もう1時間を切っていた。
急速に現実が戻る。
 2人とも荒い息のまま、見つめ合う。
若井が少し恥ずかしそうに目を逸らす。
 
 
 
 「……ごめん、ちょっと本気でヤりそうになった。」
 「……俺も。」
 「……出る前にシャワー浴びるか。」
 「……ああ。」
 
 
 
 まだキスの名残りが唇に残っていた。
卵の匂いと唾液と、互いの体温。
それを拭うように軽く舌で舐めて、元貴は小さく笑った。
 
 
 
 
 
コメント
2件
新曲テーマしてここまでかけてすご!!