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「俺、本当に好きな人が出来たんだ。」
「え……」
「だから、もうお前とは一緒に居られない。」
そう言うと××は家を出ていってしまった。
ピピッ ピピッ ピピピピ ピピピピ
「んっ…うっさぁ」
手探りでスマホを探してアラームを止める。
ぐーっと伸びをして辺りを見渡す。
「はは、相変わらず汚ぇなぁ」
部屋中に散乱するゴミはまるで自分の心情を表しているかのようで思わず笑ってしまう。
「あれからもう、1ヶ月経ったんだよな…」
俺にとって最愛の人だった××。
しかし、××から見て俺はただのセフレに過ぎなかったらしい。
だから、はっきりと「本当に好きな人」という言葉を聞いた時、受け止めきれなかった。
自分はただ寂しさを埋める存在でしかなかった、そう理解した瞬間にもう全てがどうでもよくなった。
死んでしまおうか、そう思った。
でも、俺にはそんな勇気はなかった。
あれから1ヶ月間ずっと部屋にこもっている。
来るはずのない連絡をずっと待っていた。
もしかしたらドッキリだったのかもしれない。
そう思って待ち続けて半月、それからはどうしてたっけ?
バイトを辞めて、家族からの連絡にも適当にスタンプだけで返して…
お腹減ったな
足の踏み場もない部屋を移動して冷蔵庫を開ける。
中にはちょっとした調味料しか入ってなかった。
いつ××が来ても歓迎できるようにストックしてあった食材ももう食べきってしまったようだ。
「まぁ、いいか…」
そう言えば昨日の夜も何も食べてなかったんだっけ?なんて思い出しながら頭はぼーっとする一方で俺はそれに抗うことなく汚部屋に体を横たえた。
せっかく起きたのに…あれ?俺はなんでこんな時間にアラームなんて…
あぁそうか、そうだよ。
全部アイツのためだ、朝起きれないアイツに変わって俺が起こしてあげられるように…
虚しいな、俺
もはや苦笑しか出来ない。
今までの自分の存在意義は全て××の為だった。
ピンポーン ピンポーン
チャイムの音がする。
久しぶりに聞いたその音に俺は××が帰ってきたのだと思った。
だってアイツ以外にあの音を鳴らす人は居ないから。
だからこそ、ろくに確認もせず扉を開いてしまった。
「初めまして、綾瀬さん。」