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「初めまして、綾瀬さん。」
扉を開けると自分よりも少し背の高い男の人が立っていた。
「だ、れ」
「あれ、お母さんに言われなかった?俺、今日から綾瀬蓮くんと同居することになった天海優です!よろしくね」
そう言って天海さんは微笑んだ。
「あ、えと…まって、今日は…っ!?」
何にしろ汚部屋に招き入れる訳にもいかず、カラカラの喉から必死に音を発する。
その時、頭がグラグラとして視界が歪んだ。
身体から力が抜けていく感覚に抗うこともできず、俺はそのまま意識を失った。
いい匂いに目を覚ます。
辺りを見渡すと綺麗に掃除されたフローリングが見えた。
「起きたんだ。大丈夫?」
心配そうに覗き込んでくる男の人。
誰だっけ、たしか母さんに言われて同居することになったって言ってた…
そこまで思い出して慌ててスマホを確認する。
つい1週間前くらいの会話にはしっかり同居について書かれてあった。
「ねぇ、大丈夫?…熱はなさそうだね。食欲あるならご飯食べない?勝手にキッチン借りてオムライス作ったんだけど…」
「へ?ここ、俺の…家?」
「そうだよ。あっごめん!勝手に片付けちゃって…嫌だった?」
「いえ、大丈夫…です」
「なら良かった!ほら食べよ」
手を引かれて寝かされていたソファから降り、食卓に着く。
お店のものと見紛うほど綺麗に作られたオムライスに、しばらくまともな食事を摂っていない腹が催促するように鳴る。
それに天海さんは苦笑して手を合わせた。
「いただきます」
「い、いただき、ます…」
誰かと一緒にする食事は久しぶりで思わず涙がこぼれる。
ぽたぽたと机に涙を落とす俺に天海さんは急いでそばに寄ってくれた。
「大丈夫?」
そう言ってハンカチで目元を拭ったり背中を優しく撫でたりしてくれる。
ようやく落ち着いた俺に天海さんは水を渡してくれた。
それを飲み終えるのを確認して天海さんは言いづらそうに口を開いた。
「あのさ、言いづらかったら言わなくてもいいんだけど…蓮くんとか部屋とか色々みてると何かあったのかなって…」
聞かれることなんて分かりきっていた。
拒むことだって出来たのに天海さんの真っ直ぐ向けられた瞳に断ることが出来なかった。
だって、だって天海さんは…××に似てるから。