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「どうかしたの?」
「今“はい”って…」
「“ちゃんと付き合って”って言われたから答えたんだけど…告白してくれたんじゃなかったの? もしかして私の勘違い?」
「かっ‥勘違いなんかじゃないけど…‥」
「よかったぁ」
葵さんは、きっと今この瞬間も能力で既に見えていて、僕の言動の全てを熟知していたに違いない。
だから“ちゃんと付き合って”の言葉の後に間髪いれずに“はい”と返事が出来たんだ。
そもそもその言葉を言うキッカケになったのは、葵さんが今日に限ってやたらとキスを求めてきたからだった。
つまり僕のその言葉を、引き出させる為に葵さんはキスを迫ってきた。
あれは告白するつもりで言った言葉ではないけど、葵さんによって告白の言葉に変えられた。
「そうでもしなきゃ、今日も言ってくれなかったんだから…」
「えっ!? もしかして葵さんの見た未来では、今日も僕は告白できずに終わっていたという事?」
「まっ‥まあ、そういう事…」
「・・・・・」
どうりで、いつもの葵さんらしくなかった訳だ。
「それより、私まだ紺野さんの気持ちを聞かせてもらってないんだけど…」
「僕の気持ち?」
「私の事をどう思ってるかって事…」
「どう思ってるかって…」
「好き?」
「えぇ、まぁ…」
「“えぇ、まぁ…”? ハッキリ言ってくれないと不安になる」
「もちろん好きです。大好きです」
「私も…‥」
結果的に言いたい事は、ほとんど伝える事が出来た。
ただ、葵さんに全て言わされてしまったような感じは否めなかったけど…。
「葵さん…」
「ちょっ、ちょっと待って下さい」
キスをしようと葵さんに顔を近付けると、唇を両手でガードされた。
「どうして? さっきはキスを迫ってきたくせに…」
「そんな事してない! 私は“キスしなくていいんですか?”って聞いただけだし…」
「きったねぇ」
「そんなにキスがしたいなら、前みたいに無理やりしたらどうですか?」
無理やりって…
確かにそんな事もあった。
でもあれは亜季ちゃんにしたのであって、葵さんにしたのではない。
「あれは亜季ちゃんと…」
「ですね」
「どうしてそれを? 亜季ちゃんから聞いたの?」
「まぁ、そんなところです」
「2人はそんな話までしてたの…」
「双子ですから…。それよりどうするんですか? 無理やりするんですか? しないんでっ‥」
もちろん…するに決まっている。
葵さんと初めてするキスの味と感触は、亜季ちゃんとした時と全く同じだった。
そして、ゆっくりと唇を離して葵さんを見ると、目を開けて僕を見ていた。
「もしかして、ずっと目を開けてたの?」
「うん…」
「普通、キスする時は目を閉じるでしょ?」
「だって、紺野さんのキスする顔を見たかったから…」
「だからって…すんごい恥ずかしいんだけど…」
「それよりどうだった? キスの味は?
亜季ちゃんのと同じじゃありませんでしたか?」
「全然違うよ。比べる事じゃないし…」
不思議と亜季ちゃんとした時の感覚のようだった。
「どっちの方が紺野さん好みの唇だった?」
「そういう事、普通聞かないでしょ?」
「もちろん私でしょ?」
「そうだね」
すると、今度は葵さんの方から僕の唇にキスをしてきた。
目を開けて葵さんを見ると、今度は目を閉じていた。
それから僕らは何度も何度もキスをした。
亜季ちゃんとしたキスを忘れるぐらい…。
葵さんが、僕と亜季ちゃんの関係を気にする事がなくなるくらい…熱いキスをした。
それから僕らは、公園の中を目的もなく歩き続けた。
そして鯉とカルガモがいる噴水のある池に辿り着こうとしていた。
「うぅっ…」
すると葵さんは突然その場にしゃがみ込むと、頭を押さえていた。
どうやら未来の映像を見ているようだ。
「はぁ…はぁ…‥」
呼吸が荒くなり苦しそうに胸に手をあてていた。