読み切り
解説がほしい場合は気軽にコメントしていただければ幸いです。
注意
・この物語は二次創作となっております。
・御本人様方には一切関係ございません。
・rdgt🧣🌵のBLです。pnさんが出てきます。
・キャラ崩壊
謝罪
表現の関係で、伏せ字にすることができていません。
ご理解の上、平気な方だけお進みください。
場面の設定が難しく、なんかよく分からないかも。
大学生で、同じ所に通ってるっていう設定で読むのがいいカモデス……
あ、お二方はお付き合いされてて、同棲してます。
すれ違いが苦手な方は回れ右ですよ
「なぁらっだぁ!!今から〇〇と買い物行ってくるけど、なんか欲しいもんある??」
昼食を済ませたあと、ぐちつぼはスマホをいじりながら無邪気に問いかけた。
「…俺、は?」
「え?」
「俺、とは行ってくれないの?」
思いがけない問いにぐちつぼはきょとんとした。
「え、だってらっだぁ買い物楽しくなさそうじゃん??」
好きな人には口下手なぐちつぼにとってこの言葉は
「らっだぁは買い物好きじゃないから、大変だよね。俺が代わりに買ってくるよ。」
という意味を込めたものだった。
だが、その言葉の真意はらっだぁに届かず、更に彼にとって地雷であったことに、ぐちつぼは気づいていなかった。
「そっか。」
目が逸らされる。
俯いた彼からの短く、冷たい声。
「…楽しんでこいよ。」
らっだぁはそう言って二人でいたリビングを後にした。
振り返らず去っていくらっだぁの背中がぐちつぼには妙に遠いものに感じられた。
それから、らっだぁの態度が変わったように思う。
「らっだぁ!!」
「…なに。」
「、あ。えっと…ご飯、食いに行かね?」
「用事あるから行かない。」
「あ、そっか…。わかった!」
…
「らっだぁ、?」
「………なに」
「あ…、ん。何でも、ない。」
「そ」
…
「……、らっだぁ、、」
「……」
目が合わない。
会話が減る。
隣に座っても微妙に距離を取られる。
二人きりの時間が気まずいと感じるようになってしまった。
最初こそ「ちょっと拗ねてる?笑」くらいに思っていたけど、日が経つにつれ、ぐちつぼの胸のざわつきは大きなものになっていった。
きゅ、とらっだぁの洋服の裾を掴み、声をかける。
「…ね、最近…さ?お前…冷、たくない、?」
普段から甘えることが苦手なぐちつぼにとって、これはとても勇気の要る行動であり、今の最大限であった。
顔中に血液が集まり、赤く熱くなっている感覚がして、なにやら目頭が熱くなった気がする。
余計に目を合わせられず、下をうつむくだけになってしまった。
「…別に」
らっだぁはそれしか言わなかった。
手から裾が離れ、そしてその場から去って行ってしまった。
らっだぁの「別に」が嘘だってことはぐちつぼが一番分かっていた。
でも、なぜこんなにらっだぁが俺を避けているのか理由がわからなくて困惑ばかりが残る。
…もしこのまま仲が悪くなって別れる、なんて言われてしまったらどうしよう。
…らっだぁが他の人を好きになってしまったらどうしよう。
…俺かららっだぁが離れてしまったらどうしよう。
今更、らっだぁなしでは生きられないなんて、情けない話だが、認めざるを得ない事実だというのはぐちつぼ自身が一番理解していた。
だから、余計に焦る。
らっだぁに俺のことを見て欲しい。
らっだぁの目を惹きたい。
何か嫉妬をさせれば俺を見てくれるかもしれない。
どんな形でもいい。
話のきっかけが欲しい。
隣は俺なんだって思いたい。
あの声で俺の名前を呼んでほしい。
それだけだ。
それだけが理由で、わざとらっだぁの前で他の男と仲良くしたり、ボディタッチを増やしたりした。
それでも、俺の思惑通りには行かず、らっだぁはどんどん遠ざかっていってしまった。
「お前、ほんと良い奴だなー!! 俺が女だったら惚れてるぜ!! 」
今日もらっだぁの注意を引きたくて、らっだぁが見えたから他の人と今まで以上に距離を狭めて仲良く接する。無意識に、一段と声が大きくなる。
こんなことしても、上手くいかないことなんて分かってる。
でも、俺にはこれしかできない。
これ以外に方法がわからない。
「なーにー?ぐちさぁーん、もう俺ら付き合っちゃう??」
え…
これは冗談。冗談なのだ。今まで通り、適当に受け流せ。
そう思うが、冗談と言えど、らっだぁ以外の同性に、告白紛いなことを言われるのが少し気持ち悪くて。
ぴた、と体が固まってしまう。
俺にはらっだぁがいるし。
らっだぁ以外考えられないし、絶対付き合わんぞ。嫌だ。
俺の頭には拒否することしか思い浮かばなかった。だが、脳裏では
、ん。待てよ。
これ、乗ってみたららっだぁの気を引けるんじゃないか??
なんて、悪い考えが浮かんでしまったもんだから。
「…ん、あーー。いいかも…?な?はは笑」
「ァ゛?ぐちつぼ??」
あ。
らっだぁの声。
その方向を見ればらっだぁと目があった。
瞳に影が落とされ、深い海の底のような青い目で俺を突き刺した。
久しぶりに俺の名前を呼んでくれたこと、そして話しかけてくれたことに喜びを感じる反面、直前に、 己が何を口にしてしまったのかを思い出し、血の気が引く。
「、ッら。っだ、、」
ずかずかと効果音が出そうな歩き方で、怒りを表面に出して俺に歩んできた。
らっだぁを前に、なにかが詰まった喉からは短く言葉を吐き出すことしかできない。
「ごめん〇〇。コイツ、ちょっと持ち帰る」
「あ、おけ」
短く言葉を交わしたと思ったら、俺の手首を掴み、まるで犬のリードを引っ張るようにして足早に帰路を辿り始めた。
らっだぁに掴まれている腕はきりきりと痛んだ。
ダァン!!
「ぃッ…」
両手首を抑えられて、そのまま壁ドン状態で家のドアに押し付けられる。
そして光のなくなった目でじっと見つめられる。
なんとなく目を逸らした。
沈黙が流れたが、先に口を開いたのはらっだぁだった。
「……お前さ、」
ゆっくりと、何かを押し殺したような声。
「俺が居なくても平気だろ。
隣は別に俺じゃなくたっていいんだろ、?」
俯いたらっだぁの声は少し震えていて、先程までの怖さなんてなかった。
だが、根拠のない彼の主張に、俺の頭には疑問符しか浮かばない。
「……は、?」
「…だってお前、誰とだって仲いいし、俺とじゃないほうが楽しそうだしッ……、。」
乾いた笑いと共にらっだぁは続ける。
「だったら俺、いらなくね…?」
顔を上げたらっだぁは涙目で、虚ろな目をしていた。
らっだぁの突き刺すような言葉と、 伝わっていなかった俺の本心に、胸がざわつく。
思いがけず、俺の視界は揺れた。
「っ、そんなわけッ…!!」
「俺のことが嫌なんじゃなくても、結局他の奴らといたほうが楽しいんだろ??」
「ッ違う!!おれはっ…」
「なら、証明してみろよ。」
普段のコイツのふわふわした態度からは考えられないトーンで言われる。
その言葉はあまりにも冷たくて、情など微塵もなかった。
「他の誰よりも俺が好きだって…。
他の誰でもない。俺を必要としているって…。
なァ。証明してみろよ。」
あまりにらっだぁが苦しそうな顔をして言うもんだから、目頭が熱くなる。胸がズキンと痛む。
さらに視界が揺れる。
頬に何かが伝う感覚がする。
「………………っ俺、らっだぁがッ、、!!」
「うん。もういいよ」
遮るように、らっだぁは呟いた。
「…無理して言わせても、意味ないから。」
突き放す言葉だったが、ふんわりと俺を包むような、俺が好きな声でそう言われた。
そして、手の拘束が外れた。
らっだぁが掴んでいたところが外気によって冷たくなっていく。
「……お前が本当に欲しいのは、俺じゃなかったってだけだ。 」
らっだぁの手が俺に近づいたかと思うと、いつの間に流していた涙を拭ってくれた。
そして彼は俺の横を通ってドアを開けようとした。
出ていってしまう。
ここを逃せば、二度とらっだぁの隣にいられなくなってしまう。そう直感で思った。
それでも、追いかけようとした足はすくんで
「っぃや、!!ちが、う……」
小さく声を出すことしかできなかった。
らっだぁはそんな俺の声にぴく、と反応して立ち止まってくれた。
「違わない。なんなのぐちつぼ。
お前、もう俺の事好きじゃないんだろ。」
らっだぁから出された突き放すような声が冷たく響く。
そして
「俺ら、別れたほうがいい。」
今、一番らっだぁから聞きたくない言葉が脳内で何度もこだまする。
目が見開く感覚がする。
「…別れよう。」
自分の胸が内側からぎゅっと掴まれた。
「……っ、いやッ、だ」
なんとか絞り出すような声で拒む。
「ッ俺、ら、らっだぁが好きッなのに、…!」
否定の言葉を口にしても、俺の声じゃらっだぁの表情は変わらなかった。
冷たく笑った目で見つめられて、肝が冷える。
ひゅ、と自分の喉から酸素を取り込む音が聞こえたが、その息は吐き出されることなく、体内を巡るだけだった。
「…じゃ、今日からここには帰らないから。」
その一言を残して玄関から外へと行こうとするらっだぁを止めたくて、必死に手を伸ばす。
ぱし
「っ……」
らっだぁのいつもより冷たい左腕を両手で掴む。
出ていくなんて。もう帰らないなんて。あまりに急なことで、頭が整理できなくて、適切な言葉が出てこない。
普段の俺ならそんなことないのに。
…なんで、こんな時には言葉が出てこないんだ、!!
つくづく自分に腹が立つ。
そんな俺にはただ、らっだぁの腕を離さないように強く握りしめ、目を伏せることしかできなかった。
拭ってくれた涙が再び流れる。
「…なに」
長い長ーい沈黙を破ったのはらっだぁだった。
俺は促されるように口を開けた。
「…っおれ、らっだぁがいないと、っ…生きていけない、……!!!
おねが、らっだぁ、離れないでッ……」
俺から出る声は震えていて、らっだぁに縋るように少しずつ上半身が前に倒れ込んでいった。
「………。ぐちつぼ、大丈夫。」
いつもの優しい声。
その言葉に一瞬の希望を見出して、顔を上げる。
「ぐちつぼを必要としてる人は山ほどいるし、俺が居ない生活なんてすぐに慣れるよ。」
違う。
そんなことを言ってるんじゃない。
らっだぁにそんなことを言ってほしいわけじゃないんだ。
ただ、
ただ、俺の隣にずっと居る、って。
別れない、爺さんになるまでずっと一緒だ、って。
そう言ってほしいだけなんだ。
目頭が、目の奥がじわりと熱くなる。
視界が潤んで、目が細くなる。
「………まって、!!ら、らっだぁッ…、!!」
らっだぁはもう、振り返ることはなかった。
待って、いかないで。
叫んだけど、それは心の中に留まってしまって、声は出なかった。
らっだぁの腕を掴んでいたはずの両手はいつの間にか離れ、らっだぁの体温はもう失われてしまっていた。
「ふッ……ぅぅ゛、!あ゛ァ…!!!」
膝に力が入らなくなり、かくんと目線が下がる。
床が冷たい。
足から体温が奪われていく。
俺を…俺を温めてよ。
らっだぁ。
涙がこぼれ落ちていった。
「んふふ、ぐちつぼは可愛いねー??」
「ふん、まぁ、俺だからな」
らっだぁじゃない、他の人の腕の中で俺は笑ってみせた。
_意地だった。
らっだぁが居なくても大丈夫。
相手がらっだぁじゃなくても、大丈夫。
らっだぁに出会う前の俺に戻れる。
自分にそう言い聞かせるため、無理やりにでも周りに明るく振る舞った。
それでも、心の中の空いた穴は埋まらなかった。
それほど自分にとってらっだぁの存在が大きかったのだと思い知らされる。
俺の話を聞いて、高い声で笑う声が聞きたい。
疲れているときにはとことん甘やかしてくれる手が欲しい。
悩んでいれば、口に出してないのに察してくれて、寄り添ってくれる温かさが恋しい。
、は。
いやいや、そんなことない。
…そんなこと、ないんだ。
ある日、風が吹く日だった。
「ぐちつぼ。 俺、お前が好き。前の奴を忘れるくらい、楽しませるし、幸せにするから。
俺と付き合って。」
前の奴……か。……
あぁ、笑
確からっだぁが告白してくれたのは、帰り道で、ツギハギの言葉でなんとか伝えてくれたんだっけ。笑
なんて。
もうらっだぁの隣にいるべきは自分じゃないんだとは思いつつ、あの日からずっと考えてしまう。
「うん、いいよ。」
恋人なんて、相手なんて、今は誰でもいいんだ。
らっだぁが居なくても大丈夫なんだと証明するための、心の穴を少しでも埋めるための相手が必要なだけ。
了承の意を言って笑ってみせたら、嘘のことのように喜ばれた。
はは。
らっだぁに告られたときもこんな感じだったな。
今と違うのは、俺が嬉し泣きしてないってこと。
あと、雨が降ってないこと。
泣いてんの?って聞いたら、雨だって言われたけど、あれは泣いてたんだろ。笑
…
「ぐちつぼ??」
「あ、あぁ。はは、笑」
俺、また重ねた。
もういい加減忘れろって。
らっだぁから別れを告げられてから3ヶ月経った。
そして、その間に恋人が何度も変わった。
全員、らっだぁ程長続きするはずがなく…。
全員、「らっだぁって奴と重ねられてる気がする」「俺には気がないんだろ」っていう同じ理由で相手から別れを切り出された。
「もっと俺を見てよ」とよく言われた。その度に胸がズキンと痛んだ。
「…うん」
口ではそう返事をするものの、頭の中に思い浮かぶのは、考えているのは、らっだぁのことばかり。
相手がらっだぁならそんなこと言わせなかったかな。
「ホラーゲームしようぜ」と言われたときには苦手ジャンルだったが、付き合ってやった。
怖さでも何でもいいから一瞬でもらっだぁを紛らわせたかった。
まぁ、苦手なもんは苦手だったけどな。案の定あとでお風呂に入るのが怖かったから歌ってやった。
らっだぁとだったら楽しかったかな。
いや、まず俺の苦手は把握してくれてるからホラーゲームはやらないな。
「はいこれ、疲れただろ?チョコ」と渡されたときには
「あぁ。うん、ありがと。」と一応貰っておく。食わないけど。
らっだぁならラムネをくれたのにな。
隣にいるのはらっだぁじゃないのに。
何もかもをらっだぁだったら、と想像してしまう。
でももうそれは、時間が経つごとに、叶わない妄想でしかなくなっていってしまった。
世界がこんなにも静かだったのか。色がなかったのか。面白くなかったのか。
それだけを思う日々が続いた。
偶に、否。
ほぼ毎日、常に視界にいるらっだぁだけが色づいて見えて、いつも目で追った。
らっだぁと仲良くする女や男が羨ましくて、妬ましかった。
らっだぁと笑い会う人間が嫌だった。
本来そこの場所は俺のものだって、そこにいるべきは俺なんだって胸を張って言いたかった。
目があっても逸らされてしまうのが苦しかった。
もうあの口で俺の名前を呼んでくれないのが虚しかった。
3ヶ月前に空いた穴は、塞がらなかった。
結局らっだぁじゃなきゃ駄目だったんだ。
らっだぁがいなくても大丈夫なんて、大嘘だった。
やっぱりらっだぁの隣にいたいと思った。
俺の隣はらっだぁしか務まらないと思った。
「おーーい??ぐちーつーーーー???」
「ぁ、とぅーーん……」
目の前でぶんぶんと手を振って、俺の悪い思考回路を断ち切ってくれたのはぺんさんだった。
彼は常にらっだぁの側で笑っている人だ。正直羨ましい。俺がぺんさんになれたら…。まあ、無理な話だ。
「……ぐちーつ、カフェ、行こ。」
唐突な誘い。
雨が降る予定だから早く帰ろうと思ってたんだけど……
ぺんさんにあまりにも真っ直ぐ見つめられるもんだから、まあ断る理由もないか、と思い
「ん、いいよ」
と返事をして、カフェへと足を運んだ。
俺はぺんさんにピクミンのごとく着いていった。
「…ッ」
到着したカフェは週1ペースでらっだぁと通ったお店だった。
ぶわ、と走馬灯のように記憶が蘇って、胸が苦しくなる。顔が熱くなる。
それをぺんさんはふふ、と笑い、肩をとん、と叩いて「二人で」と言って店の中に入っていった。
俺もその後をついていった。
適当に注文を済ませ、まず先にぺんさんが口を開いた。
「言いたくないかもしれないけど、ぐちーつ。ずばり、最近らっだぁとどうなの?」
らっだぁという話題にぎくりとする。
「…話、聞いてないんスか、?」
ぺんさんはらっだぁと仲がいいからきっと別れていることは知っているはず…
自分で言いたくないんだ。
その事実を口にしたくないんだ。
伝わってくれ。
「ん?聞いてるよ??」
「は?じゃあ、とぅーんはどうなったのか知ってんだろ…。」
「うん、知ってるよ。らっだぁ視点ではね。
でも俺、ぐちーつの気持ちが聞きたいなーと思ってさ!!」
「おれェ?!?!」
「そ、おれ!!」
ぺんさんのこういうふわふわした雰囲気というか喋り方というかがらっだぁとどこか似ていて、場所も相まって少し懐かしい気持ちになる。
それと、閉じ込めていた後悔が沸々と煮えていく。。
「おれ、か…」
「ゆっくりでいいよ〜」
…らっだぁと別れてからは自分の気持ちに気づくのが怖くなって、あまり考えないようにしていた。
らっだぁが居なくても…って意地を張って、それかららっだぁの事を考えないようにして。
でも結局考えちゃうのはらっだぁのことだけで、他のことなんてどうでも良くなるくらい好きだったんだって気づかされて。
らっだぁが他の人と仲良くしているのを見るとぎゅってなって、寂しくて、切なくて。
そしてそれは全部。俺がらっだぁに思わせていたことなんだってわかった。
俺が、他の人と仲良くしたから。
べたべたしてたから。
らっだぁは辛かったんだ。きっと俺と同じように。
いや、もっとずっと、俺が思っているより、ずっと。
ペんさんはうんうんと相槌を打ちながら柔らかく俺の話を聞いてくれた。
おかげで何かが込み上げてきて、目が潤んだ気がした。
最近涙腺がゆるゆるになってきたと感じる。
溢れる前に手で拭ってしまおうと思って目を擦る。
「あ。ありがとうございまーす!!」
「っス…」
注文していたものが届いた。
カフェなのに烏龍茶とエビフライの単品を頼み、サクサクと頬張るぺんさんはまるで子供のようだ。
この偶にはしゃぎだして、子供見たくなるところもまたらっだぁと似ている。
俺はらっだぁが毎回飲んでいたカフェラテを頼んだ。
こういう所も未練たらたらで、自分はこんなにも女々しくなってしまったのかと思う。
「うんうん、ごめんね、再開しようか。それで?
…ぐちーつはどうしたいの?このままでいいの?」
「…ング、、突いてくんなァ……。
………正直、俺が全部悪いし、きっともうらっだぁは俺の事好きじゃないし、今更迷惑だし……。」
「おっとぐちーつ、今俺はぐちーつの気持ちを聞いてるんだぜ?らっだぁがどうのとか、今はいいの。どうしたい??」
「………、」
「俺が取っちゃってもいいの?」
「ッだめ!!!!!」
あ
「ふふ、笑
取られたくないんじゃーん、このこのー笑笑」
そう言ってぺんさんは机越しに俺の腕を突いてきた。
きっと俺の顔は赤くなっていることだろう。
「…ぐちーつ、素直に伝えてみな??大丈夫、まだ遅くないよ。」
「ぅ…俺、苦手なんすよ、感情表現…。」
「えぇ!?うっそだぁー!!だってさっき、めちゃめちゃ話してたじゃん!!」
「いやだってあれはさぁ……」
言葉の続きは、ぺんさんがらっだぁと似てたから、だ。
俺を否定しないで、肯定しながら正解に導いてくれる、ふわふわしてて、それでいてさっぱりしてる。
らっだぁの好きなところ、ぺんさんにも同じようなところがあるんだ。
だから、自分でも知らなかった、秘めていた本音が引き出された。
「うぅ………らっだぁ相手だと縮こまっちゃうんスよ!!」
「ふふん、ぐちーつ可愛いとこあんじゃーん笑笑」
「うっさい!!笑」
あー久々に楽しい気がする。
自分の気持ちが明確になって、自覚したからであろうか。さっぱりした。
「……とぅーん。」
「ん?」
「おれ、何すればいいかな、
らっだぁと、もう一回話したい。やっぱり、らっだぁの隣は俺がいい。」
自分で自覚した本音には素直でいたい。
自分で行動を起こさなくちゃいけないんだ。
「おー、やけに真剣な面持ちだと思ったら……、簡単じゃん!!」
「今、行ってこーいっ!!!!!」
ザァァアアアア
カフェを出たら、雨が降っていた。
おいおい嘘だろ。降り始めたのかよ傘持ってねぇよ。
今もう一回カフェ入ってぺんさんに「やっぱ雨降ってて無理っス、また今度にするわ」とか言えるわけねぇだろ。
あんだけ背中を押してくれたのに、自分から戻るなんてことしちゃだめだ。
「あ゛ーーーーーッ!!!」
…もうしょうがねぇな。抑えられない。
行かなくちゃ。今。
一歩、雨の降る方へ、彼のいる方へ踏み出し走り出す。
最悪最悪!!
洋服が濡れて、肌に纏わりついて気持ち悪い!!
どこいんだよ、アイツ!!!
ばしゃばしゃと水溜りを踏みながらひたすらに走る。
傘の間をするりと縫って進んでいくと、「ぐちつぼ?」と声が聞こえたと同時にぱし、と腕が掴まれた。
「ア…△△さん、、」
「おいおい、雨の中傘ないんじゃ風邪ひくぜ??ほら、俺の傘は入れ。」
腕を引かれて強制的に傘の中に入れられる。
そしてぐい、と腰にまわされていた手を引き寄せられる。
ぴた、と体が密着する。
「こうした方が暖かいだろ??」
触れて、体温が伝わるところからぞわ、と嫌な感覚が走る。
「ッ…やめて、くださッ」
「冷たいこと言うなよォ!!」
「っ嫌、!!」
「今日はツンの気分なのかな??」
違うんだ。
この人じゃない。
求めているのは、この人じゃない。
この暖かさじゃない。
心が冷えていく。
目の前の彼は優しく微笑んでいる。
その笑顔を見れば見るほど、胸が苦しくなっていった。
「…すみません」
「え?」
「すみません。…俺、やっぱりッ…ッ……、」
言葉が詰まる。
「らっだぁじゃなきゃ、ッ…ダメなんだッ…」
何かが押し出してくれて、言葉になった。
きっと『何か』の正体はぺんさんなのだ。ぺんさんが押してくれたんだと思う。
相手の顔が驚きに染まっていく。
その内に回されていた手を振りほどいて、傘から出る。
相手に一礼して背中を向けて、再び走り出す。
気づいたら乱れる呼吸なんて気にせず、降り止まない雨なんて気にせず、走り続けていた。
雨の中、濡れながら必死にたった一つの背中を探す。
「…っ、どこ………ぃんだよッ、、」
まるで世界で一人になったような、そんな寂しさと孤独感に襲われる。
らっだぁにぎゅって、苦しいくらいに抱きしめてほしい。
らっだぁの声で名前を呼んでほしい。
走り続けたから肺が痛い。心臓が痛い。
探しても探しても見つからない現実に胸が締め付けられる。
「……らっだぁッ」
その時、荒廃したような街並みに一つの色が見えた。
らっだぁッ!!!!!
ドス、と音がするくらい彼の背後から強く抱きつく。
ようやく、ようやく背中を見つけたんだ。
らっだぁは傘を持ってて濡れてないのに俺が抱きついて濡れてしまうかも、なんて心配は頭に浮かばないくらい、抱きつきたかった。
懐かしくて、愛おしくて、どうしようもなく恋しい。
「お前ッ、なんで…、ここに…………、 」
らっだぁが驚いた様に振り返る。
久しぶりに間近で見た顔はどこか痩せていて、顔色が悪くて、隈が凄かった。
その顔を見た瞬間、どっと涙が溢れた。
「、離れろよ……」
トーンを落として言われた。
言われた通り、一歩、二歩…。距離を取るように離れる。
体が再び雨に打たれて冷え始める。
…そりゃそうだ。別れた相手に急に抱きつかれたらそう言うに決まってる。
もしかしたら恋人だっていたかもしれないのに。
………でも、これだけは言わなきゃ。
自分の本音には素直でいたいんだ。
「…ッごめんなさい………っ」
「……」
「おれっ、…バカだったッ、!!!
らっだぁじゃなきゃダメなのにっ…、ずっと…ずっとッ!! お前の隣に居たいのに…ッ、
どうしようもなく好きなのにッ…、!!! 」
疲労と、泣いているとき特有の呼吸で、酸素がうまく吸えない。
そのせいで体の力が抜けて、らっだぁの顔を見るに見えなくなって、俯き、地面にへたり込む。
その瞬間、
ぱしゃ、ぱしゃと水溜りを踏む音と、
がしゃ、ぱしゃんと傘が地面に放り投げられた音がした。
そして、らっだぁは俺の体を強く引き寄せた。
「……ばか」
らっだぁの声は震えていた。
「なんで、そんな泣くんだよ。」
優しい声色だった。
俺の好きな声だった。
「だっ゙てェ゙……っ゙、お゙れッ、らっだ、がい゙なぃとッ゙……!!!」
ぎゅーっと息が苦しいくらいにかたく抱擁される。
「俺も、お前じゃなきゃダメなんだよ。」
そして、開放される。体温が離れていく。
それでも、体は暖かさを保ったままだった。
両手が繋がれたまま、らっだぁはふたたび口を開いた。
らっだぁは俯いてぽつり、ぽつりと話しだした。
「お前が。…お前が、他の奴と付き合ってんの、…見てらんなかった。」
その言葉に心が揺れる。
「ッでも、お前が幸せならっ、、それでいいって……思おうとしてたのに………!!」
ぎゅん、と胸が掴まれる。
「幸゙せじゃない゙…っ。らっだぁじゃな゙きゃ、ッ全然゙幸せじゃない……ッ!!!」
何度も、何度もそう繰り返す。
「…じゃあ、戻ってこいよ。」
そう言って目の前で両手を広げる。
「俺のところに、ちゃんと…戻ってこい。」
「ゔんッ…!!!」
らっだぁの腕のなかに飛び込む。
ぎゅっともう離れさせてくれないくらいつよく抱きしめられる。
これ、これなんだ。
俺が、欲しかった、好きだった、この腕が。ずっと……。
まだ目頭も顔も熱くて、涙がぼろぼろと大粒で流れていくが、久しいらっだぁの匂いに心が落ち着いていく。
居心地がいい。
「帰ろう。俺らの家に」
「うんッ」
抱き合っている時間を惜しむように、ぐりぐりとらっだぁの肩に顔を押し付ける。
もう二人とも雨か、それとも涙でか、はたまた両方か…。
着ていた洋服はずぶ濡れ、らっだぁが放り投げた傘はどこかへ飛んでいってしまった。
「はは、笑 ずぶ濡れだな」
「ぐちつぼだってーーー抱きついて俺の洋服濡らした癖に」
久しく二人並んで会話をできる幸せを感じる。
雨が霧雨になってきたが、依然として雨の打ち付ける音のみが響くこの空間で、らっだぁが
「ごめんな。」
と一言。
「え?なにが…」
「、俺さ。お前が他の奴と仲良くしてんの、めちゃくちゃ嫌だったんだ。」
「……っ」
ぐさ、と胸を刺された気分だ。
「でも、それを言ったら『重すぎる』って言ってぐちつぼから離れていくんじゃ、って思って……怖くて、言えなかった」
「『重い』なんて、言うわけねぇじゃん。『離れる』なんて言うわけねぇじゃん!!
なんなら、俺は重い方が嬉しいし??」
「…、分かんないよ?ぐちつぼは誰とでも仲いいから…。 」
「何を言ってるんだこの大バカ。
俺が好きなのは過去も今もこれからも、ずっとらっだぁだけもん…」
ちょっとだけわざと拗ねたように言ってみた。
そしたららっだぁはふはっと吹き出す。
らっだぁは一息ついてこう言った。
「……なら、俺だけ見とけ。」
「え、なに束縛?」
「そうだよ、悪いか」
そしてくしゃ、と濡れた髪を撫でられる。
この猫を撫でるような少し荒い撫で方が好きだ。その手に頭を押し付けるようにすれば、更に撫でてくれた。
「俺のものなんだから、らっだぁ以外いらない。らっだぁが一番好きって言えよ」
すねたように言いながらも、その声は甘かった。手が少し強く握られる。
「…俺はらっだぁのもん。らっだぁが居れば幸せだし、らっだぁが居なきゃやだ。もう絶対離れないで。
…らっだぁが一番好き 」
きゅ、とらっだぁの手を握り返す。この暖かさが好きだ。
「最初からそう言えよ、バカ。」
らっだぁはそう呟いたかと思うと、もう一度抱きしめてきた。
それに答えるようにして俺も抱き返してやった。
雨が止んだ。
まあまずは投稿遅れてごめんなさい。
初めて一万文字書いたから、許して😖💗💗
あと余談ですが、先週の水曜日にちょめは卒業しましたーーーー✋🏻🌟🌟🌟🌟🌟
祝ってくれてもいいんですよ
これを見てくださってる皆様の中にもご卒業された方いらっしゃるかな??
ご卒業、おめでとうございます㊗️🎉
これからも亀ペースで頑張ります😌
個人的に、いつもぐいぐいの元気系な人をぼろぼろ泣かせてごめんなさいを言わせるのが性癖。
好評でしたら、後日らっだぁ目線投稿しようかな。
コメント
4件
全体を通して全てが素晴らしかったです…小説でボロ泣きしたの久しぶりでした。 gtの感情がダイレクトにぐさっと伝わってきて、rdの気持ちも考えつつめちゃくちゃ感情移入しながら読んじゃいました。 めちゃ良作品、大好きです…
初コメ失礼します。 文の構成や言葉選びが綺麗で拝読していてとても楽しかったです!