テラーノベル
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__次は、鏡星駅。
__次は、鏡星駅。
車内アナウンスが静かに響く。
列車は星々の海を走り続けていた。
こさめ「みこちゃんの番だね。」
こさめが言う。
尊琴は少し困ったように笑った。
尊琴「そうみたいやねぇ。」
その笑顔はいつも通り柔らかい。
けれど。
こさめは知っていた。
尊琴はいつも誰かを優先する。
誰かを褒める。
誰かを支える。
でも自分のことになると、どこか自信がなさそうなのだ。
やがて列車が速度を落とす。
窓の外に見えてきたのは__
巨大な鏡だった。
星空の中に無数の鏡が浮かんでいる。
小さな鏡。
大きな鏡。
丸い鏡。
欠けた鏡。
それらが星の光を反射し、幻想的な景色を作り出していた。
こさめ「綺麗……」
こさめが息を呑む。
ホームに書かれた名前は、
鏡星駅
列車が止まる。
六人はホームへ降り立った。
すると。
一枚の鏡が強く光った。
次の瞬間__
景色が変わる。
そこは文化祭だった。
教室にはたくさんの人がいる。
『すごいね!』
『これ誰が作ったの?』
『蘭先輩です!』
『いるま先輩が考えたんですよ!』
楽しそうな声が聞こえる。
しかし。
その中に尊琴の名前はなかった。
実際には。
準備を一番手伝ったのも。
展示を完成させたのも。
尊琴だったのに。
『みんなすごいなぁ。』
昔の尊琴が笑っている。
優しい笑顔。
だけど。
少し寂しそうだった。
尊琴「……。」
尊琴が目を伏せる。
景色がまた変わる。
今度は教室。
昔の尊琴がテストを見ている。
『もっとできたはずなのになぁ。』
また別の景色。
『俺なんかより他の人の方がすごいし。』
また別の景色。
『俺がいなくても大丈夫だよねぇ。』
その言葉に。
こさめは胸が苦しくなった。
こさめ「みこちゃん……。」
尊琴は苦笑した。
尊琴「困ったなぁ。」
ぽつりと呟く。
尊琴「隠してたつもりだったんだけど。」
こさめ「みこちゃん。」
尊琴「俺ねぇ。」
尊琴は鏡を見つめる。
そこに映る自分を。
尊琴「自分に自信がないんだ。」
静かな声だった。
尊琴「みんなすごいじゃん。」
そして少し笑う。
尊琴「俺だけ何もない気がして。」
その瞬間。
捺「はぁ?」
捺が声を上げた。
全員が振り向く。
捺「何言ってるん?」
捺は本気で不思議そうな顔をしていた。
尊琴「え?」
捺「みことがおらんかったら文化祭終わってただろ。」
尊琴「いや、それは……」
捺「準備も全部手伝ってくれたやん。」
捺は当然のように言う。
捺「俺ら何回助けられたと思ってんだよ。」
尊琴は言葉を失った。
すると今度は蘭が笑う。
蘭「みっちゃんが何もないなら。」
尊琴「うん。」
蘭「天文部崩壊する。」
尊琴「え?」
蘭「割と本気。」
いるまも頷いた。
いるま「それはそうだな。」
尊琴「まにきまで?」
いるま「副部長が一番働いてる。」
捺「それな。」
尊琴が目をぱちぱちさせる。
すると。
最後に須千が鏡へ近づいた。
須千「みこちゃん。」
尊琴「ん?」
須千「鏡ってね。」
須千は静かに言う。
須千「自分を映すけど。」
鏡に手を触れる。
須千「本当の自分までは映せないんだ。」
その瞬間。
鏡が光った。
無数の鏡に映る景色が変わる。
そこに映っていたのは__
天文部だった。
笑っているみんな。
その中心にはいつも尊琴がいた。
相談を聞く姿。
支える姿。
優しく笑う姿。
誰も気づいていないと思っていた。
でも違った。
みんな見ていた。
ちゃんと。
尊琴「……そっか。」
尊琴の目に少しだけ涙が浮かぶ。
けれどそれは悲しい涙じゃなかった。
尊琴「俺。」
小さく笑う。
尊琴「少しくらい自分を褒めてもいいのかなぁ。」
こさめ「いい。」
こさめが即答する。
こさめ「めちゃくちゃいい。」
捺「当たり前だろ。」
いるま「副部長特権だな。」
蘭「みっちゃんはすごいよ。」
須千「うん。」
須千も頷いた。
その瞬間。
無数の鏡が星へと変わった。
きらきらと輝きながら宇宙へ舞い上がる。
須千はその光景を見つめていた。
__自分を認めること。
__自分を大切にすること。
それもまた、
ほんとうの幸いなのだろうか。
発車ベルが鳴る。
銀河鉄道が再び動き出す。
次はいよいよ__
こさめの駅。
車窓の向こうには淡い水色の光をまとった星が見え始めていた。
__次は、星雨駅。
__次は、星雨駅。
そのアナウンスに。
こさめは静かに窓の外を見つめた。
胸の奥が少しだけ高鳴っていた。
next→♥1500
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コメント
5件
本当の自分までは映せない、か。 めー、ほんとにいいこと言うねぇ(っω<`。) みんなそれぞれ違うすごさがあって、だからこそ周りに比べて自分はって思っちゃうし、周りのために動けるすごい人って、自分がしてる事のすごさに気付けなかったりするよね。認め合える関係って、素敵だなって思う。鏡に映ってる自分じゃなく、ちゃんと「自分」のことを見てくれる仲間がいるのが羨ましい。
みぅ🤍🥀です。読了しました。 尊琴の「自分に自信がない」って告白、すごく胸に刺さりました。周りを支えるタイプの人ほど、自分のことは後回しにして、存在価値を見失いがちですよね。捺たちが即座に否定して、「みことがおらんかったら」って言い切ったところ、涙出ました。 最後の鏡が星になって舞い上がるシーン、綺麗すぎて見入っちゃいました。須千の「本当の自分までは映せない」って台詞も深い。 次はいよいよこさめの駅か... もう泣く準備できてます。🌟