終わってしまったあの夏の日のあいつの背中が、気づけばまた浮かび上がってしまう
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ずっと隣にいると思っていた。と、言えば少し違うか。確かにもう少し、あともう少し、そう思ってはいたがこのままずっと…と言うほど俺は無神経ではない。それでもいきなり明日には終わる、とも思ってなかった。だからこそ、今思えば夢のようなあの時間が終わり、それどころかあの戦いの時、あいつを助けるどころかむしろ苦しめてしまったことを未だ懺悔する時があるんだ。後悔はしない。悩みもしない。なぜなら、本来国とはそういうもので、あの選択も俺を象る国民たちの選択なんだからな。それでも、かつて共にいた友達を、…いや、相棒を自らの手で追い込むことを気に病まないほど吹っ切れてもいなかったんだ。まぁ、それでもちゃんと任務は遂行したさ。
…そんな俺が、今あいつと友達になれてるのはきっと奇跡か、そうでなければ神の気まぐれか、あいつがとてつもないほど寛容で優しいやつだから、なんだ。多分、あいつが優しいからが1番正しい。
少し話がズレたか。とにかく、今あいつと友達であることはすごいことで、そしてとても喜ばしいことなんだ。…そのはずなんだ。
いや、特にこれといって何かある訳でもないさ。ただ、あいつと昔行った場所に久しぶりに出向いた日、あいつと久しぶりに話した日、外も庭も全てが静かな中休日を過ごした時、ふと雲ひとつもないような快晴を見て目元が少し濡れた日。
そういう日には、決まって昔の夢を見るんだ。たわいもない、よくある日常の夢。いや、夢と言っていいのかも怪しいな。白昼夢のような、無意識の中の意識のような、ただ忘れかけていた用事を思い出したかのような。気づけばいきなり浮かんで、気づけばそれは終わっていて。ただ起きた時、というよりは、舟を漕ぐ寸前に、腕を引かれて引き戻されたような時…には、爽やかさもあり、虚しさもあり、切なさもあり、しかしてそれを感受できることか、昔を思い出せたことか、どこか嬉しさや喜ばしさ、懐かしさもあり…とても不思議な気分なんだ。そして不思議なことに、その時見る夢は決まって相棒の時の夢。
はは、まるで俺が過去に執着してるようだ。…まあ、そう考えてしまえば簡単だったし、自体はおそらくもっと複雑なんだろうが。
あいつだけだ、あいつだけの場所なんだ。たとえ同盟が終わろうと、敵となろうと、友達であろうと、俺にとっての相棒はあいつだけで、そこに相棒としての意味なんてないんだ。あいつがあいつだから相棒で、何かをしたから相棒ではなかったんだ。…でも、いなくなってしまった。あいつのためだけの居場所が、唯一の場所が、空になってしまった。そんなつもりじゃなかったのに。
別れたあの日、友達でも、菊でもなく、なんでもなかったように相棒とだけ言えれば、あいつは振り向いてくれたのだろうか。
なにかある訳でも求めた訳でもない。ただ相棒と過ごした日常を、相棒と呼んだ時のあいつの顔を、未だ求め続けている。それだけを得たい、ほんとにただそれだけとしか言いようがない。お前もそうであったらどれほど良いのか。
感情だけが未だ過去のままなのは、俺だけなのか?
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