──何度か彼と会社帰りに訪れことのある、隠れ家風のカフェレストランで、テーブルに向かい合わせで食事をしていた。
「そう言えばさっきの君の話で思ったんだが、僕たちの付き合いも彼女たちの力添えがあってこそだし、いずれは二人のことも食事に誘いたいよな」
「ああ、お礼を兼ねて、彼女たちと食事に行くのもいいかもしれないですよね。でも、一緒だと相当突っ込まれそうな気も……」
今日の休憩室での、まるで蜂の巣をつついたみたいな騒ぎが思い出されると、ふふっと小さく苦笑いが浮かんだ。
「だが、酒の席では、そういうのもいいんじゃないか」
お酒を飲みながら、楽しげに喋る彼と、
「あはは、確かに。盛り上がっちゃいそうな気もしますね」
顔を見合わせて、笑い合う。
「生がもうないだろう。次は、何を飲む?」
残り少なくなっていた、とりあえずで頼んだビールジョッキを指差されて、「そうですね、どれにしようかな」と、メニューを開いた。
「あっ! サングリアがあるんで、これにします」
赤ワインのサングリアを見つけてオーダーすると、やがてテーブルに届いたグラスから、さっそくコクッと一口を飲んでみた。
「……うーんこれも美味しいけれど、やっぱりチーフが作ってくれた白ワインベースの方が、爽やかで私は好きかもです」
「ハハ、そうか。嬉しいよ」
そう言って微笑う彼に見とれていたら、きっと赤とか白とかじゃなく、彼が作ってくれたから、より美味しく感じられたんだろうなぁと、ごく自然に思えた……。
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