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「ねぇ、もう俺無しで生きられないでしょ?」
嘲笑うようにいう君。自惚れてるのか、確信があるのか知らないけど、聞き飽きたセリフに俺は嫌気がさしていた。お前が居なきゃ立ってられないほど、落ちぶれてない!お前なしでも生きていける!そう思っても、口には出せない。身体が、お前を求めるから。俺の意思に反して、お前に抱きしめられると、奥の奥まで甘く痺れて期待する。早く絡み合いたいと……。全てをぶちまけて欲しいと身体が震える。
「自惚れんな……」
そう小さく答えるので精一杯で、強がる唇を甘く食まれたらすぐに溶かされる。オモチャで満たされていたあの頃にはもう戻れない。気づいた時にはもう囚われていて、逃げることが出来なくなっていた。タチの悪い呪いのように、君が心の中に巣食っている。
誰でもいいからと温もりを求めたあの日。ストレスから別に強くもない酒を飲み、フラフラになって帰った日。一緒に飲んでいた友達が、俺を心配して迎えにと呼び出した君に送って貰ったあの日。家に着くと同時に、君の唇を奪った。前から密かに想っていたから……。あの日の俺は止まれなかった。一瞬驚いた顔をした君は、すぐに俺を抱きしめそれに応えてくれた。あの時の君は何を思っていたんだろうか…今となっては聞けない。
その後は、俺が求めるままに快楽を与えてくれて奥の奥に熱を注いでくれた。翌日は、俺が目覚めるまで抱きしめてくれていて、目を開けると優しく微笑んで額に優しい口付けを贈ってくれた。嬉しいのに……それを素直にいえなくて、強がってしまった俺。
「……なんか、付き合わせて悪かったな……忘れてくれ」
「やだよww 丁度いいから、たまに相手してよ」
そう笑う君に、俺は胸が痛くなった。俺の事を想ってくれているわけじゃないんだろうなと思ったから。でもその時にはもう、身体が君を求めてやまなかった。その後何度も何度も身体を重ねて、君の感触で君の声で満たされた。
君が帰った後、タバコを咥えて乾いたままの喉で煙を飲み込んだ。いつもよりも染みて痛いその感覚で、自分のことを戒めた。深入りをしてはいけないと。コレ以上のめり込むと戻れなくなると…。そうして吐き出した煙は、いつもより歪んで見えた。
嫌なことが続いて、それを誰にも打ち明けず走り続けたら笑えなくなった。そんな俺に、君はいつも通り笑いかけ、いつも通りに腕の中で寝かせてくれた。それが何よりも心を軽くしてくれる気がして、めちゃくちゃに抱かれても気にならなかった。むしろ痛いほど噛まれても、思い切り吸われても、跡が残れば残るほど安堵した。いつの間にやら彼にも執着して欲しいと願うようになっていたが、絶対に口にしない。この関係が壊れるのが怖かったから。
「お前、跡付けんの好きなんやな……」
「ん?……なんか所有欲をみたせるくない?ww」
そう言って軽く笑う君が眩しくて見られなかった。君の言う所有欲は、俺が欲しいものとはきっと違うから。縛り付けて俺だけしか見えなくしてやりたいと思う、このドロドロとしたどす黒い感情では無いはずだから……。
ふと昔のことを思い出す。君と出会ってしばらく、楽しくきらきらとしていたあの頃。俺はどうやって笑ってたんだろうか。どうやって君の事を心の中で思うだけに止めてたのだろうか。もはや思い出せない。今では君を見る度に熱を欲する身体の奥底が疼いて仕方なくなる。君にとって俺はなんなんだろうか……。セフレ?都合のいい相手?それとも……。この答えはきっと一生聞けないだろう。俺は素直じゃないから。
「ねぇ。せんせーの首筋のソレ、噛み跡?ww」
ヤバァ…。とからかうように仲間に言われ、思わずそこを手で隠した。近くにいた君は、焦ることも悪びれることも無く、ニヤッと笑って言った。
「それ、俺のだっていう印。触んなよ?w」
「え?ニキニキとせんせーってそういう関係なの?w」
「んーw ボビーは俺の前では可愛いんだよ?w」
「えー!!! いつから付き合ってんの?」
「ひみつーww」
なんてことの無いかのように笑って言う君。本心が見えない笑顔で、仲間を翻弄する。どういう意味で自分のものだと言ってるんだろう。それを追求できない俺は、臆病者だ。
「せんせ?ニキニキ相手で大丈夫?大事にされてる?w」
「どうやろなww」
はぐらかすように笑うと、君は不機嫌そうな顔でこちらを見つめる。なぜそんな顔をしてるのか分からなくて首を傾げるとそっと抱き寄せられた。
「こんなに大事にしてるのに……いっぱい愛してあげてるのに分からないの?」
不満そうに言う君の言ってることが分からなくて、俺は首を傾げる。身体だけの関係だと思ってたから。そこに気持ちが籠ってるなんて信じられなかった。
「セフレやと思われてるんかと思ってた……」
思わず口にしてしまい慌てて口を塞ぐ。でももう遅くて、驚いた顔をした君に軽く睨まれた。そばで見てる仲間はニヤニヤと笑って君をからかう。
「あららぁ……w ニキニキの片思い?ww」
「っるせぇよ……これから教えこんでくるから……」
「あーららww せんせ、頑張ってねww」
ほら、いくよ。と低い声で言われ、意味もわからず連れ出された。いつもの様に半分笑いながら抱かれるのかと思ったら、不機嫌そうな顔で俺を見つめている。
「ねぇ……冗談だよね?」
「いや……お前こそ冗談やろ?」
「はぁ……ほんとに分かってなかったんだ……」
俺、舞い上がってバカみたいじゃん。そうつぶやく君は不満げだった。そこから気を取り直したのか、俺の目を熱い目で見つめて甘く囁く。
「俺は、ボビーのこと恋人だと思ってたよ」
「え?」
「熱く求めてくれたあの日、俺の事を求めてくれたあの日から…俺たちは付き合ってるんだと思ってた」
「え?……うそやろ?」
「嘘じゃないよ…。俺はボビーを愛してる。ボビーは?」
「俺は……」
どう伝えたらいいか分からくて言葉に詰まる。答えを待つ君は、今にも泣きそうだった。いつも強気な君のそんな顔が可愛くて、可愛らしいキスを唇に落とした。不意打ちに目を丸くする君。そんな君が愛おしくて言葉を紡いだ。
「俺も……ずっと前から好きやった」
「え?」
「でも…気持ちは言えやんくて…」
「……ほんとに?ほんとに俺のこと好き?」
「……好きや…愛してる……」
「…………ほんとにほんと?」
「ほんまやってw」
泣きそうになりながら確認してくる君が愛おしくて仕方なかった。苦しいほどに抱きしめてくる君は、少しだけ震えていた。そんな君が可愛くて、優しく抱きしめ返すと耳に口を寄せて囁いた。
「もう……逃がさへんで?後悔しても知らんからな?」
「……しないよ……。俺の全部を掛けて愛するよ……」
そう答えてくれた君。俺は嬉しくて舞い上がりそうだった。でもきっと君は知らない。俺の中にある気持ちが、君が思うよりもずっと汚くてドロドロしていることに。君の中にも俺と同じ呪いを残してやろう。そう思っていることに……。君が気づかないうちに、心に巣窟って離れられないようにしよう。甘い甘い夢を見せながら……。