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23
#執着
さぶれ
1,448
春樹との仲たがいに、鷹騰社長とのキス……いっぺんに起こったいろいろなことで、頭の中を整理し切れないまま、あっという間に数日が過ぎ去った。
春樹にも、もう一回ちゃんと連絡をしないといけないのに、帰りの電車内で鷹騰社長のニュース記事を見たせいで、またも気持ちが揺らいでしまい、仲直りのメールも送らずじまいになっていた。
どうして、私っていつもこうなんだろうと思う。
いつだってちっともはっきりしなくて、こうやっていろんなことから逃げていたって、なんの解決にもならないのに……。
なのに、いつかどうにかなればいいだなんて、そんなことばっかり考えて……。
いつまでもこんなんじゃダメだよね……と、会社帰りにこれから春樹のところに直接行ってみようかと思い立った。
彼のマンションへ行くには、自宅に帰るのとはまた違う電車に乗り換えないといけなくて、別のホームへ行こうとして、
ふと駅の売店に並んでいたスポーツ紙の見出しが、目に入った──。
『鷹騰社長、美人秘書と婚約か!?』
(婚約って……あの、霧嶋 麗華さんと……?)
嘘……と思いながら、普段はあまり手に取ることのない新聞を、買って読んでみた。
『以前から取り沙汰されていた美人秘書との交際に、鷹騰社長が真剣に結婚を考えているとの情報をつかんだ』
“スクープ!”と打たれたスポーツ新聞の紙面には、そんなことがまことしやかに書かれていた──。
「婚約……? 嘘……」
呆然と呟いて、(本当になの……?)と、思う。
『キスを忘れないでいろ』だなんて、言ってたのに……。
だけど本当は、忘れないでいたって仕方のないことくらい、自分でもわかっていた……。
彼はかけ離れた雲の上の存在で、私なんかとはどうにかなるはずもない……。
……なのに今こうして鷹騰社長の婚約を現実に突き付けられると、とっさには受け入れられなくて、
こらえ切れない無意識の涙が溢れた……。
こぼれた涙が、広げていた新聞の上にぽたりと落ちて、輪じみを作る。
そこには、あのマンションから出て来る二人のプライベートショットと、そうして彼女の左手の薬指に嵌る指輪を拡大した写真とが掲載されていた。
こんな指輪まで……と、思いつつ、けれど自分は鷹騰社長とは何の関係もないのと同じで、いくらあんなことがあったからって、私には結局は関わりもないんだよねと──。
……それに、私がけりをつけなきゃならないのは春樹とのことで、今は鷹騰社長のことに捕らわれてる場合じゃない……。
そう自分に言い聞かせて、新聞を折り畳んでカバンにしまうと、電車に乗り込んだ──。
最寄り駅で電車を降りてマンションまでの道を歩きながらも、頭の中には鷹騰社長のことが浮かんでは消えて、ぐらついた気持ちのままで春樹に会いに行っても、なんの解決にもならない気がした……。
春樹と話すつもりで来たのに、鷹騰社長の婚約のショックが拭い切れないなんて……。
──マンションの前まで辿り着いて、エントランスに通じる階段を数段上がったけれど、中へ入る気にはなれなかった。
春樹に嫌な思いをさせたから話しに行こうとしているのに、こんな動揺を抱えたままじゃ彼にさらに後味の悪い思いをさせるだろうことは目に見えて、
行かない方がいいだろうからと、私はマンションに背中を向けた──。
コメント
1件
うわあ……鷹騰社長の婚約報道、タイミングが辛すぎますね。主人公がようやく春樹と向き合おうと決めた矢先にこれですもんね。新聞の上に落ちた涙の描写が切なくて、胸がぎゅっとなりました。「忘れないでいろ」って言った本人がもう別の人の薬指に指輪を……。気持ちがぐらついて春樹のもとへ行けなくなってしまう心情、すごくリアルで引き込まれました。次が気になります!