また会う日を
相澤視点
ニャー
俺の前に猫がいる。
こいつはやけに人懐っこい…
俺は猫が好きだ。
超が出るほどの。
だが俺は動物に好かれない。
何故だろうか?
そいつはベンチに座っている俺の足に頭を擦り付けてゴロゴロと喉を鳴らす。
暫くして不満そうに俺の隣にのぼってくる。
そして膝に座り包まる。
不満そうにこちらを覗く瞳は底が見えないエメラルドグリーン。
吸い込まれるように頭を撫でてやる。
そいつは何ともなまぁ嬉しそうに俺の手にもたれかかる。
珍しい深緑色の毛色にエメラルドグリーンの透き通った曇りのない瞳は“彼奴”を思い出させる。
やめてくれ………
俺の目は曇り切っている。
そんな純粋な綺麗な目が見て良い物じゃ無い…。
俺は感情が高ぶってしまい猫を睨んでしまった。
あぁ、またやってしまった。
どこかに行ってしまう……
いや…その方が良いのか……
そう考えながら猫を見るとびっくりしたような表情を浮かべている。
逃げるのか…
だが俺の予想はその猫によって裏切られる。
ミャー
キリッとしたような真剣な目でこちらを見ている。
真剣な目をしてまっすぐ立ち上がりこちらに向かってくる。
こいつは…なんだ?どこか抜け目のないようなかんz「みゃにゃにゃにゃ!?!?」
猫は俺の膝の上で足を踏み外して転けた。
前言撤回…どこか抜けている。
……1つ…昔話をしよう
あるところに一人の少年が居ました。
その少年は何所までもまっすぐで自己犠牲の塊でした。
そいつはそのせいで毎日皆に怒られていた。
ある日その少年はクラスで森林合宿に行きました。
それはとてもとても楽しい合宿………
───のはずでした。
森林合宿の夜…彼らは楽しいお楽しみをしていました。
そこに数人もの影が現れました。
ヴィランです。
彼らは対抗しました。
彼らはほぼ皆が無事に終わりました。
そう、“ほぼ”皆が…………
そうです。
先ほど話した少年が重症を負いました。
生死もあやふやでした。
次の日、少年は死にました。
少年はクラスの支えで皆に愛されていました。
彼の近くに居た人達は守れなかった…と泣いています。
それ以外の人も泣いています……。
クラスはその日を境に静まり返り…楽しそうな話し声は聞こえなくなりました。
──終わり。
深緑色の毛色、瞳は彼奴を思い出させる。
そう、この話に出た死んだ少年だ。
俺はその場に居た。
思い返すともう少し早くたどり着けていたら助けられていたかも知れない……
俺のなかで後悔が渦まく。
あぁ…だめだ…。
俺は教師だ。
彼奴の担任の…
自分が立ち直らなくてどうする。
これじゃあ生徒の悲しみをほり返すだけだ…
不合理極まりない……
「緑谷……出久……………」
ボソリとつぶやく
「ミャァ!」
猫は勢いおい良くまるで自分が呼ばれたかのように返事をする。
あぁ、この仕草でさえ緑谷に重ねてしまう。
緑谷がいたらこんな自分を慰めてくれるだろうか。
いや、不合理だとおこるか?
はぁ、こんなことを考える自分に嫌気が差す。
その間もずっと猫はこちらを心配そうに見る。
もし……
もしお前が
「緑谷だとしたら………俺を……こんな俺を叱ってくれ…………」
こいつは緑谷じゃ無い…
分かっている。
なのに…
その猫はまるで俺を慰めるようにすり寄った。
◇◆※◆◇
パチリと目を開く。
俺はこのベンチに座って寝ていたらしい。
夢?だろうか。
俺は猫と一緒にいた。
少しあたりを見渡すがそいつの気配は無かった。
「矢っ張り俺の勘違いか」
俺はベンチに背を向けて校舎に向かって歩き出す。
“ニャー”
かすかに……いや確実に夢で見た猫の声がした。
振り返るとそこには何も無かった。
ふと、上を見ると金色に輝く温かい光が天高く登っていく所が見えた。
あぁ、お前だったんだな。
心配してくれたのか……
いつかそっちに行く。
必ず。
そのときまでお前の分まで生きるからな
その思いと同時にあの光は見えなくなった。
「緑谷…有難う…………また会う日を楽しみにしておくよ」
また会う日を
end
コメント
2件
久しぶりに見たけどやっぱ最高…神!