「ー、桜木さん?」聞き覚えのある声に振り向く。すると、そこには、先程のローダンセの白雪姫ー、白川雪乃がいた。あの笑顔も、私の顔を見て一瞬で枯れてしまった。「どうかしたの?」真剣な顔で聞いてくる。きっと、彼女は、私を心配してくれてるんだ。そう思うと、涙が引っ込んでしまった。人に心配はかけたくない。私は白川さんを残してトイレへ向かう。いつも、誰もいなかったところ。だからこその私の居場所。はやく、はやくー。
ガシッ
「逃げないで」
私の腕を白川さんが掴む。先程感じた白川さんへの尊敬は恐怖へと変わる。嫌だ、やめて、助けて。私を1人にしてよ。
「…んなよ」「…え?」「…ざけんなよ!」驚きのあまり、足が止まってしまう。
「心配してくれてるのが嫌だから逃げる、とでも思ってる訳!?そんなの誰も得しないでしょ…!」綺麗な声も今は荒れている。得…?白川さん、何を言って…。
「あなたがここから去ったとして、私とあなた、どちらもいい気にはならないでしょ?」落ち着いたのか、少し声が優しくなる。「桜木さんの事もよく分かるわ。虐めなんて、ね」急に目が覚めた気がした。「なんで…!?なんで知ってるの…!?」白川さんがきょとんとした顔になる。「だって、いたじゃない、中学、桜木さん」「え…!?」もしかして、と考えがよぎる。「中学同じ…?」その考えは当たり、すぐに頷く。「ついでに言うと、椎崎さんの事も知ってるわ」「で、でも、白川とは同じクラスでは…」「確かにそうね」白川さんはうつむく。「今まで同じクラスじゃなかったらから、話しかけなかったし、虐めを止めなかったの」つまり、そういう事なのだ。私が知らなかっただけで、ローダンセのような笑顔を咲かせる彼女は、ずっと近くにいて、ずっと私を見てきたのだ。「こーゆーのを再会と言うのかは知らないけど…」少し間をあけて喋る。「はじめまして、白川雪乃です。一方的な再会ね」そう言って笑う彼女はやはり綺麗だった。
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