再び目を覚ますと、善法寺先輩と立花先輩の顔が見えた。二人共話していて僕が起きているのに気づいていない。
「せんぱい。」
自分でも驚くほどか細く小さい声が出た。
「伝七!」
でも先輩には聞こえたようで、すぐに枕元に来てくれた。
「良かった。意識が戻って。」
ホッとした顔をする先輩はなんだか新鮮だ。
「起き上がるとまた傷が開いちゃうから動かないでね。僕は先生に伝七のことを伝えてくるよ。」
善法寺先輩は立ち上がり部屋を去っていった。
「‥‥‥‥‥‥。」
「‥‥‥‥‥‥。」
部屋に沈黙が流れる。
「‥‥‥たすけていただきありがとうございます。おかげでこうしてがくえんにかえってこれました。」
僕がそう言うと、立花先輩は顔を歪めた。
「‥‥‥せんぱい?」
「伝七。私はお前を守れてなどいない。お前に大怪我をおわせてしまった。すまない。無事で良かった。」
正直に言うなら驚いた。いつも飄々としている先輩がこんなこと言うとは思っても見なかった。
「‥‥この、けがは、ぼくがじぶんで‥‥やったもので、せんぱいの‥‥せいでは、ないです。いっぱい、いっぱいになって、かってにつけたものです。」
先輩は更に顔を歪めた。
「‥‥伝七。約束してくれ。二度と、あんな事はしないでくれ。もっと自分の事を大切にしてくれ。」
「‥‥‥はい。」
ぼくがそう返すと、先輩はホッとした顔をして立ち上がった。
「あまり長居しても体に悪い。今日はこの辺で帰るよ。明日、また作法委員会の皆でお見舞いに来よう。あいつらも凄く心配していたからな。」
「ぇ、かえっちゃうんですか‥‥‥。」
「え?」
思わず出た声に顔が真っ赤になるのがわかった。
「いえ、なんでもないです。すみません。」
いつもは絶対に口には出さなかったのに、何故か今日は出てしまった。まだ思うように身体が動かせないから、先輩と目が合わないように目をそらす。
「‥‥気が変わった。今日はここに泊まろう。」
立花先輩は静かに座ると、僕の頭を撫でた。
「せんぱ、」
頭を撫でられていると、段々眠たくなってきた。
「さぁ、今日は眠ってしまえ。大丈夫。どこにも行かない。」
僕はそのまま目を閉じた。
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