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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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 警察署の一室に案内された二人は、優しげな、逆に言えば頼りなさそうな顔をした警察官のおじさんが出てくる。

 鮮花はにこやかに挨拶する。


「こんにちは! こちら新人のアレクシアさん」

「いや~また喫茶店に行く楽しみが増えちゃったな」


 鮮花はアレクシアに耳打ちする。


「お店の常連さんなの」

「よろしく。警視庁の阿部です」

「初めまして」


 阿部さんは紙の報告書を二人に渡す。

 そこには女性の写真と情報がずらりと並んでいた。


「こんなこと頼むの申し訳ないんだけど担当じゃないもんだから首つっこみづらくてね」

「篠原沙保里さん」

「うん。ストーカー被害ってのには警察は動きが鈍くてねぇ」


 阿部さんは苦々しく首をの後ろを撫でる。


「女の子同士だし話しやすいと思うんだ。ちょっと話を聞いてきてくれない?バイト代ははずむからさ」

「!!」


 鮮花の目が煌めいた。

 鮮花は笑いながら警察署から出ていく。


「えっへへへ」

「嬉しそうですね」

「お金は大切だよ。こういう記録に残らないお金は特にね。そ・れ・に」 


 麻はくるっと回って指でたきなを指した。


「次はアレクシア向きの仕事かもよ? なんたってボディーガードだから!」

「……」


 アレクシアは少し不満げに唸った。


「えっと待ち合わせ場所は」

「あの…こんなことをしていて評価されるのでしょうか?」

「評価?」

「う~ん……活躍で評価を上げて早く組織本部に戻りたいね。戻りたいのかぁ」

「私への人事は正当だと思えません」

「じゃあ…なんで撃ったの?」

「……」


 その言葉にアレクシアの顔を曇る。


「ああ! いやいや責めてるわけじゃないよ。もめたくないならなんで命令無視したのかなーって」

「あの状況において最も合理的な行動だと思いました。それがあんな騒動に」

「なるほど。でもまぁ騒動になんてなってないよ。たぶんね。普段はそういうの全部組織がもみ消しちゃう。事件は事故になるし悲劇は美談になる。今回のもきっと表向きには別の事になってるよ」


 鮮花は半壊したタワーを電波塔を見る。


「最後の大事件も今や平和のシンボル」

「でしたら……私は何をしたのでしょうか?」

「さて、ね。別に何もしてないんじゃない?」

「何もしてないなら、なんでッ」

「こういう不幸や理不尽は突然訪れるものだよ。嘆いても、悔やんでも、死神は現れる。問題は、それを受けてどう立ち回るか、だよ。闇雲に動くより、落ち着いて、冷静に、調べて、準備して、自分にできる最適解を見つけ、行動する。それが重要」

「どう、立ち回るか……」

「あっ。沙保里さーん!」


 手をあげて、阿部さんからストーカー被害を受けていた女性が現れる。

 大筋は阿部さんから渡された資料で知っていたが、改めて自己紹介のあとに話を聞く。


「この写真をSNSに上げてから?」

「ええ。脅迫リプも来たから怖くなってすぐ消したけど」

「その後彼も私もずっと変な奴に付きまとわれてて」

「前の交際相手とか?」

「それ! 警察も痴情のもつれだって取り合ってくれないけど前の人なんていない。ほんとに心当たりないのよ」

「どこで恨みを買うかわからない時代ですからね~」

「あの、このビルは」


 アレクシアが指さした背景に写っているビルは先日アレクシアが機銃掃射を商人と味方を皆殺しにしたビルだった。


「そうそう!ガス爆発事件のビル!窓ガラス割れて大変だったとかいう。爆発の3時間くらい前かな?』

「ガス爆発だって」

「ずいぶん早くから開けてるお店なんですね」

「そうなの。朝日のインスタ映えスポットで有名なのよ」


 背景に銃のケースとスーツを着た人物の足元が映り込んでいた。


「ぶーっ!」 


 思わず鮮花はコーヒーを吹き出した。


「な……何かわかったの?」

「あ……いや……この写真もらえます?」

「ええ、大丈夫よ」


 後ろを向いてたきなと小声で会話する。


『取引の現場映ってるじゃん!』

『知らないですよ!』

『銃は消えたんじゃなくてとっくに引き渡されてたんだよ』

『その相手があの写真をSNSで見て…』

『めちゃヤバなのに狙われてるよ~沙保里さん! というか銃取引するマフィアがSNSでクソリプ送ったりするのかい!』


 そうして、話を聞き終える。


「ありがとう二人とも。刑事さんにもお礼言っといてね」

「沙保里さん。今夜はとりあえず一緒にいません?」

「えっ? いいよ。じゃあうちに来てよ!」

「ほんとー!?じゃあ親睦も兼ねてパジャマパーティーなんてどうです?」

「いいわね」

「やったー!」


 鮮花はアレクシアに言う。


『しばらく任せるね。ストーカーは推定無罪だけど射程に入ったら即始末して』

『はい』


 鮮花の言葉は内容とは裏腹にいつも通りの軽いノリだった。


「じゃあ沙保里さん。私支度してきますね。今夜はおおいに盛り上がりましょ~」


 そうして、二人は別れた。鮮花は別れたふりをして、たきなと護衛目標の後ろからストーカーを見つけるために追跡を開始した。

 アレクシアにつけた盗聴器から声が聞こえる。

 鮮花はドミネーターと呼ばれる携帯型鎮圧執行システムを銃を右手に持ち、左手の手首につけてある透明化ホログラフ装置を起動させる。そして左手にはスタングレネードを用意する。


『テンション高い子ね。不安が吹っ飛んじゃった。行きましょ』

『私は……あの人不安ですよ』

『じゃあ二人は今日初めて会ったの?』

『はい。優秀な人らしいですが……見えませんよね』

『で、前のバイトに戻りたいと。嫌なことがあったから辞めたんじゃないの?』

『いえ。少し誤解があっただけです』

『そんなに戻りたいの?』

『戻りたいです、あっ…』

『そっか。私も協力するよ。こう見えてバイト経験豊富なお姉さんだからね!』

『早速ですが…いいですか?』

『もちろん!』

『ありがとうございます。では先に行っててください』

『えっ?』

『すぐに戻りますので!』

『う…うん』


 アレクシアが離れた。それを見たストーカー達は車で護衛目標を引き飛ばす。速度は出ていないが、衝撃で地面を転がる。頭を強く打ったのか血が流れている。しかしストーカーたちはすぐに護衛目標を車に連れ込む。

 鮮花は護衛目標を連れ込む時の振動に合わせて静かに車の上に登る。


「写真あったか!?」

「ありました」

「さっさと消せ!写真は他には拡散してないか!?他には撮ってないな!?」

「どうなんだ!? おい! 起きろ!!」

「誰か! 誰か助けて!!」

「消しました」

「何止まってんだ!出せよ!」 


 車の前にはアレクシアが立ち塞がり、銃を撃つ。


「取引した銃の所在を言いなさい!」

「無茶苦茶撃ってくるぞ!」

「なんで取引の事知ってんだ!?」

「武器商人を皆殺しにした奴等じゃないっすか?」


 車の上にいることを知らないたきなは銃を容赦なく撃っている。流れ弾が当たることが予想できて鮮花は舌打ちしたい気持ちになる。


 鮮花は車の上からドミネーターを下に向ける。そしてスキャンを行い、ストーカーのみをターゲットロックする。


「執行」

『執行モード リーサル エリミネーター 慎重に照準を定め 対象を排除して下さい』


 トリガーを何度か引く。

 青い光が車の天井を透過して、ストーカーギャング達に命中する。殺傷電磁波の一撃で対象の肉体は粉々に吹き飛ぶ。そして次は、護衛目標に照準を向ける。


『ノンリーサル パラライザー 慎重に照準を定め 対象を制圧して下さい』 


 トリガーを引く。

 電気ショックが護衛目標に命中して気絶する。

 鮮花は透明化ホログラフを解除する。そして車の上から降りながら、連絡する。


「司令、消えた銃の行方の手掛かりと思われる情報を入手しました。データを送信します。あとそれを狙った敵性存在を排除したので隠蔽処理お願いします。目撃者は一名、パラライザーで気絶させてあります」


 数回言葉を交わしたあと、連絡を終える。そしてアレクシアの肩を叩く。


「お疲れ様。喫茶店に帰って美味しいもの食べようか」

「あの、聞きたいことが」

「need.to.know」

「情報は知る必要のある人のみに伝え、知る必要のない人には伝えない……私ではアクセルレベルが低いってことですか。わかりました。何も聞きません」


 その言葉に鮮花は笑う。


「上に従順な姿勢のたきなは可愛いなー、頭も回るし知識もある。大丈夫、私が貴方をファーストクラスにしてあげる。一緒に頑張ろう!」

 

世界を守る殺戮の救世主

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