あれは、雨の降る日の放課後の教室だった。
あの日は湿度も高くて、癖毛を直していたはずなのに毛先がくるんとまがってしまっていた。
掃除も終わって、いざ部活へ行こうとしていた。
“寿司”の間違いだと思いたい。
放課後だからお腹が空いていたんだ、きっと…。そう思い聞かせた。まさか、そんな言葉が私に対しての言葉だったなんて、思うはずがないだろう。
私と君しかいない教室で、戸惑いが残る中
私は逃げるように言ってしまった。
「わ、私、寿司あんまり食べれないんだよね!じゃあまた明日ー!!」
なんてことだ……。
やってしまった。
しかも不幸中の不幸…あの人と席が隣なのである…。
(詰んだ……終わった…寿司とか変なこと言ったし……。)
私はこの関係を変えることはできるのか…?
🍣1話🍣
―――ちょいお待ち!!―――
さーてさてさて、昨日の1件(先程の話)があって私はとても気まずいです。
隣の席が拓海だから。告白されたから。
(まじでキツイって無理無理…)
「ゆき」
「アッ…?!なん、なんだ!?」
いや慌てて変な声を出してしまったじゃあないか。冷静に。頑張れ私。
「はい」
拓海から渡されたのはただのプリント。うん。なんだけどさ
(目合いそう気まずい気まずい!!)
「…((チラッ」
「…どした」
「いっいやなんでもないよ!!はは…」
言い忘れていたが拓海は普通にイケメンだ。
運動部だからかガタイも良く、まつ毛も長くて普通に整った顔立ちの青年といったところ。
しかも優しく、礼儀正しい。
なんなのだろうか。
普通にモテる男が、なぜ最近仲良くなり始めた私を好きになる。
理由も分からないし理解できない。し難い。
モテる人の思考も分からないし。
なんなのだろうか。
しかも今ガッツリ目合ったし。
なんだよイケメンがよーー!!!!!!!?
「…なあ、ゆき」
「うわぁぁぁ?!なっなに?!」
急に話しかけんでくれ…心拍数爆上がりしてしまうだろうが…。
あ、一応言いますね。拓海のこと好きじゃないからね?!
「…」
少し困ったような顔をして 拓海は私を見た。
「昨日…さ」
おいおい待て待て…
この初め方、完全にアレだよな?!アレのことだよな?!無理無理なんも分からないって!!
どうにかして…そらすしか…!!
「え、あ、いやっ、そのね!! 」
「あ…うん」
強引に私は話を変えようとする。
「私、あんまり寿司食べれないけど、嫌いじゃないからね?!?!うん!!!!!ははは!」
。。。
なんの話をしてんだぁぁぁぁぁぁぁ?!
え?え?寿司嫌いじゃない??いやいや拓海が聞きたいのは告白の返事だっつーーの!!なのに逸らした話題が寿司?!
あーーダメだ…完全にやらかした……。
拓海くん…君が好きになった人はこんなにやばい人なんだぞ。もっと可愛いくて頭の良い人がお似合いじゃないか…??
私は、恐る恐る拓海の返答を固唾を呑んで待った。
「…ンフフ」
「…え?」
「あはははははッッ …ゆき…寿司の話好きなの?…フフフ」
あれ。あれ。なんだこれ。
(どうにかなってる…逸らせてるぞ?!)
「…まあ、そんな感じかな?!あははは…?」
「そっか…」
。。。
えぇ?どういうことーー?!ちょっと待って
何この人ーー???
全然考えてることが読めない…。
世間一般的に言う、不思議な人?
いや、私の理解力不足?わかんないけれど。
なんだか、不思議な会話をしたような…
そんな変な気持ちになったのだったー…
続く…🍣