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オメガバースです。
説明程度にるぅ莉犬出てきます。
本番無し× 番ところまで
以上が大丈夫な方のみどうぞ⤵︎ ︎
「えっ ジェル、ななもりとまだ番になってないの?」「……うん」
閑静な住宅のリビングは、広い窓から手入れの行き届いた庭が見える穏やかな空間。差し込む柔らかな光が木製の家具を優しく照らし、落ち着いた雰囲気を作り出している。そしてテーブルの向かいでは、この家の主人である莉犬が驚いた表情を浮かべている。
「俺はなりたいと思ってるんだけど、なーくんが嫌だって……」
オメガであるジェルが、アルファであるななもりと付き合ってから約2ヶ月。同棲も始めて、毎日一緒にご飯を食べたり、映画を見たりと幸せな時間を共にし、既に行為にも及んだ。順調に交際できてはいるのだが、ジェルには1つだけ不満があった。
ななもりが番になってくれないのだ。また定期的にくるヒートの時は、薬を買ってきたり家事を全てやってくれたりと優しくはしてくれるが、絶対に抱いてくれない。ヒート中に何度か抱いてくれ、番になってくれとお願いしたが、それはダメだと毎度断られてしまう。自分は大好きな彼と番いたいのに、なぜいけないのだろう。ななもりと自分の相手を想う気持ちの強さにひどく差があるように感じてしまい、辛くなった。
だから今日は、自分と同じオメガで、アルファであるるぅとの恋人兼番である莉犬のお宅に相談に来たのだ。
ジェルの悩みを聞いた莉犬は、整った顔に穏やかな微笑を浮かべた。
「心配になっちゃう気持ちも分かるけど、たぶんなーくんはジェルのことを愛していないわけではないと思うよ。ただ…怖いんじゃない?」
「怖い?」
「うん。番になるってことは、一生相手の人生に寄り添い続ける必要が生じる。ましてやヒート中に犯して子供なんかできちゃったら…きっとなーくんはジェルを、自分の人生に縛りつけたくないんじゃないかな?」
「そんな……っ」
そんなこと重々承知だ。一生をななもりと共に歩む覚悟なんて、とっくのとうにできている。というか、この先ななもり以上に大切に思える存在が現れるはずもない。だから、自分は番になってほしいと頼んでいるのだ。
「んふふ。僕もるぅちゃんと付き合いたての頃は、同じようなことを考えたよ。でも、しっかり自分の想いをるぅちゃんに伝えたら、番ってくれた。」
「自分の想い……?」
「うん。ジェルはなーくんの思っている以上に色々考えて、その上で覚悟を持って番になってくれと頼んでいるんだよー、って丁寧に伝えれば、きっとわかってくれるよ。ななもりは我慢しているだけで、ジェルとそういう関係になりたくない訳じゃないと思うから」
確かに。いつも軽く話を流されてしまうから、自分の考えをきちんと細かく話したことはなかったかもしれない。今日帰ってなーくんに伝えてみよう。自分は一生をなーくんと共にしたいと本気で思っていることを。
莉犬にお礼を告げ、帰路に着いた。莉犬からのアドバイスのおかげで沈んでいた気持ちはだいぶ晴れやかになり、足取りも軽い。
「ただいま〜。ってあれ、なーくんいないじゃん」
一緒に暮らしているマンションに戻ると、部屋になーくんはいなかった。代わりにダイニングテーブルの上に1枚のメモ。
『夕飯の買い出し行ってくる』
なーくん帰ってくるまで何をしよう。ゲームでもするか、と手を洗って自室に向かう。
ドアノブに手を掛けようとした瞬間、ドクン、と心臓が鳴った。視界がぼやけ、体の力が急速に抜けていく。壁に手をつこうとするが、その手も言うことを聞かない。全身が燃えるように暑く、口からは甘い吐息が漏れ出た。
「…うそ、だろ……、発情期、かっ……」
思考が溶けて、うまく頭が回らなくなる。
なーくん、はやく会いたい、帰ってきて、はやく。
重い体を引きずってなーくんの部屋に入り、クローゼットから持てるだけの服を無造作に引っ張り出す。ほとんど這うようにして寝室に行き、2人でいつも一緒に寝ている大きなベッドに倒れ込む。
さびしい。なーくんの声がききたい。触れてほしい。なまえを呼んで、抱きしめてほしい。目から生理的な涙がポロポロとこぼれる。集めた衣服に顔をうずめ、寂しさを誤魔化すように思い切り匂いを吸い込んだ。
ガチャリ、と玄関のドアを開ける音がした。
「ただいま〜!ごめん、色々見てたら遅くなっちゃって……っ⁉︎ …っこの匂い…、おい、ジェルまさか……!」
ドサリと買い物袋を置き、ドタドタと駆けてくる音がしたと思うと、バン、と思い切りドアを開けられた。
「な、くん……っ」
緩りと頭を動かしドアの方に向けると、獲物を狙う捕食者のように、熱を孕み抑えきれない欲望を秘めたななもりの瞳と目が合った。次の瞬間、気づいたときには既にななもりに覆い被さられていた。両手は強い力でベッドに縫い付けられ、身動きが取れない。自分に向けられるななもりの熱い視線と吐息にお腹の奥がキュンと疼く。荒い呼吸を繰り返しながら、残っている理性を必死にかき集めてななもりが上体を起こす。
「っごめ…ジェル、待ってろよ。今抑制剤取ってきちゃるから……」
「ん……いやぁ…、いか、ないで……そば、いてっ……」
いやいやと首を振り、ななもりの服の袖をきゅうきゅうと引っ張るジェルに、ななもりが苦しそうな表情を浮かべながらも優しく話しかける。
「ジェル、こんなに素敵な巣作って、頑張って待っててくれたのは、わかるよ。でもほら、薬ないと、辛いのが続くから……。薬飲も、な?」
「やだ…やら、ね、噛んで……噛んでよぉ」
「……それはダメだ、ジェル」
まただ。やっぱり断られた。うまく回らない頭でぼんやりと莉犬の話を思い出す。彼はなんて言ってただろう……、自分の想いを、丁寧に……
「…お、ねがい、噛んで。番、なってほしぃの、だいすき、だから。なーくんが、いい、」
「ジェル……」
「ずっと、いっしょが、いい……ずっと、はなれないで、一生、おねがい、しぬまで、俺といっしょ、いて……」
「わ、おい、っ」
力を振り絞ってななもりをぐい、と自分の方に引き寄せる。後頭部を押さえつけ、自分の項に顔がうずまるようにする。
「なーくん、おねがい……ずっと、いっしょに…、いきて、いきたい。だから…おれと、つがいに、なって……」
「……ッ」
ゴクリ、とななもりの唾を呑む音が聞こえる。
「ほんとに……、いいのか?」
発情したオメガに密着して、今すぐにでも噛みつきたいだろうに、それでも最後まで確認を取ってくれるなーくんに、愛しさを感じる。「愛してるよ」という想いを精一杯込めて、
ゆっくり頷くと、
「_____〜〜〜ッい、った、ぁ……んんっ♡♡」
項に鋭い痛みが走るとと同時に、とてつもなく強い快感と多幸感に包まれる。ななもりの舌が項を執拗に舐め上げ、やがてじゅっと音を立てて唇が離れた。
噛んでもらえた。なーくんと番になれた。嬉しい。うれしい……
「ありがと……なーくん」
彼にに向かってふにゃりと笑いかけると、優しく笑みを返された。