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「ジェル、一旦深呼吸しよう、ほら、ゆっくり。」
ひく、と体内が痙攣してうまく喋れないジェルの背中をななもりは優しく摩る。きっと過呼吸になっているのだ。ゆっくり呼吸させる事で改善しないだろうか。と声をかけるが余計に焦ったジェルは「で、き、…できい、…っ、ぅ…」などと涙をぼろぼろ流し始めてしまった。
ジェルは最近こういう不安定な期間が増えてきたように思える。俺がどうにか安心させてやりたいのに。自分自身への悔しさで胸が嫌な方向にひしゃげたような感覚に陥る。俺の。俺のジェル。ななもりはその拍子にジェルを抱きしめた。ただただ優しく抱きしめた。
「…っぅ、…は、…っぁ、…す、…ぅ、」
抱きしめた温もりが互いの体に浸透していくようなとろとろとぬるい空気が溢れている感覚に身を委ねて数分、ジェルの呼吸は安定してきた。
呼吸のリハビリをするようにゆっくりと息を吸い込んでゆっくりと吐く。
「ジェル。大丈………」
呼吸が落ち着いたジェルを抱きしめたままだったななもりは腕を離そうとジェルの顔を伺ってみた。するといつものように「なーくん!見て見て!」と忠犬のように鳴くジェルでも「ごめん、なーくん…」としょぼくれた表情をするジェルがいるわけでもなく、ななもりの肩に顔をのせたまま、すやすやと泣き疲れて寝てしまったジェルがいた。可愛い。と流石のななもりも心の中で唱えてしまう。
そのままジェルをベッドまで運び、布団をかける。布団の外に放られた腕に目をやれば、内側の部分。白くて皮膚の薄いゾーンに無数の切り傷がある。リストカットの跡だろう。ココに跡がある事は少し前から知っていた。ジェルは溜め込んでしまうタイプだから、それを発散できるのが自傷という選択肢しか無かったのだろう。
俺はジェルを守らなければいけないのに。
少しはだけた首元の方を見れば、鎖骨にまたもや切り傷を見つけた。リストカット、あまりやらない方がいいよ。と警告したのにまた新しい傷をつけたのか。
あぁ、ジェル。俺はお前の傷まで受け入れて、背負って、お前を愛すから。
どうか。愛の存在を忘れたりなんかしないでよ。ななもりはジェルの額にキスを落とし、寝室を後にした。