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「揃ったか」
リヴァイの低い声で、
新リヴァイ班(特別作戦班)は背筋を伸ばす。
レイを除く4人は、
緊張した面持ちで敬礼している。
「俺はリヴァイ。お前らは」
リヴァイが先に名前を言い、
順に名乗りが上がる──
━━━
「これで、全員か」
リヴァイの視線がレイへ向く。
「はい」
レイは問いかけに、軽く頷いた。
「お前らは今日から俺の班だ。多少訓練はしんどいだろうが、死ぬ気でついてこい。」
「ここでへばってるようじゃ、壁外では巨人共の餌にしかなれねぇからな。」
「「「「 心得ております!! 」」」」
リヴァイの威圧感に怖気付いているのか、
4人は震える声で叫んだ。
「兵長、実際に訓練をした方が皆の実力もわかるかと思いますので、そろそろ……」
4人のあまりの緊張具合を見たレイは、
その場の空気に気を遣い、
訓練場の方を見ながらリヴァイに話しかけた。
「あぁ、そうだな。」
「お前ら、全員訓練場に移動だ。」
クイッと顎で訓練場を指しながら言う。
「「「「 了解! 」」」」
━━━
訓練場───
木々が密に絡み合う立体機動向きの地形。
「まず最初は、お前らの実力を見せてもらう。」
そう告げた後、レイに目線をやる
「レイ」
「はい」
レイは静かに返事をし、訓練内容を伝える。
「前に見える森の中に、巨人を模した仕掛けを用意してる。2人1組で立体機動に移り、最初の2体は各々1体ずつ討伐。後に出てくる2体は、2人で連携を取って討伐してもらう。」
「個人の能力と、仲間との連携がどこまで取れるのか、それを見るための訓練」
「組分けは、エルドとグンタ・オルオとペトラ
この2組で行ってもらうから、それぞれ準備をお願い。」
淡々と述べられた訓練内容。
一見簡単に思われるが、
かなり難易度の高い訓練だ。
通常、森の中に用意されている巨人模型は、
訓練補佐をする兵士によって、ランダムに繰り出される。
これを、数人の兵士が立体機動で飛び回り、
見つけ次第 討伐をしていく。
しかし今回の訓練は、最初の2体を1人1体必ず仕留める必要がある。立体機動訓練中に立ち止まる事は禁止されている為、次の連携討伐に行くには、確実に一撃で仕留めなければならない。
また連携訓練においても、事前に知らされていなかった相手・人数での行動になる為、いくら同じ班で活動しているとはいえ、作戦もなしにいきなり実行するのは難しい。
──この訓練は、絶対に失敗が出来ない。
内容を聞いた4人は、無言で顔を見合わせる。
弱音は決して吐かないが、
視線が揺れ、固唾を呑む。
その様子を見たリヴァイは、鋭い声で言う。
「壁外では、新兵だろうが熟練者だろうが、
巨人共は見境なく襲ってくる。」
「その時周りに誰がいるかは分からねぇし、戦闘場所が立体物の無い平野かもしれねぇ。」
「どんな状況下でも、生きる為にはやるしかない。たった1回の失敗が、死に繋がる。」
「訓練だろうがなかろうが、毎日死にものぐるいでもがけ。」
「それが、今お前たちに出来る事だ。」
レイを含む、班員の顔つきが変わる。
「全員分かったら装備の準備をしろ。」
リヴァイの声がけで、皆が一斉に取り掛かる。
そして、
新特別作戦班による訓練が始まった──
━━━
1組目─エルド・グンタ
エルドは状況に応じた的確な判断で、
合理的に巨人模型を討伐。
続くグンタも、持ち前の瞬発力を生かし、
木陰から出てきた巨人模型を討伐。
その後もエルドの指揮下のもと、グンタが飛び回り巨人模型の位置を把握。見事な連携で残り2体も討伐完了。
2組目─オルオ・ペトラ
戦闘力に優れているオルオは、巧みな動きであっという間に巨人模型を討伐。
機動力に長けるペトラは、一撃では仕留めきれないものの、小刻みな連撃で巨人模型を討伐。
残りについても、オルオの対巨人スキルとペトラの補佐能力が噛み合い、2体同時に討伐完了。
誰一人として失敗せず、
訓練を最後までやり遂げた。
「エルヴィン達がコイツらを選ぶのも納得だな」
「悪くねぇ」
4人の動きを見たリヴァイが呟く。
「あの4人は、他の新兵達から尊敬され、
頼りにもされていましたから。」
優秀な同期の姿を見ながら、
レイは仲間の事を誇らしげに語る。
「そうか」
微かに笑みを浮かべる彼女を見て、
リヴァイは短く応える。
そして──
「あいつらの訓練は終了した。
最後はお前の番だぞ、レイ。」
レイは目を見開き、
少し困惑したように尋ねる。
「え、っと……
私は1人で4体討伐すれば良いのでしょうか?」
「1人でやったら、
今日の訓練の意味がねぇだろうが。」
「お前の相手は、俺がしてやる。」
その言葉に、胸の奥がひどく昂る。
「兵長が私の相手を……?」
「なんだ、俺じゃ不満か?」
「い、いえ……むしろ光栄です。」
「そうか、ならさっさと準備しろ。」
「……はい!」
レイは急ぎ装備を整える。
昂る気持ちを落ち着けながら、
一つ一つ。確実に。
「……行くぞ」
リヴァイの低い声を合図に、
2人は飛び出した──
━━━
森の中に入り、まず動いたのはレイ。
アンカーが木幹に食い込み、
身体が斜め上へ引き上げられる。
身体が枝葉をかすめる音。
模型の背後へ滑り込み、迷いなく加速。
次の瞬間、うなじ部分が深く裂ける。
(……動きが速い、そして 淀みない。)
レイの姿を見たペトラは、
無意識に呼吸を止め、その動きに見入った。
レイがうなじを切り裂いたその瞬間、
その背後では、
刃の閃く音と共に、リヴァイが姿を見せた。
そして、残り2体──
リヴァイは一瞬、レイに視線を送った。
レイは即時に状況を判断し、
リヴァイの死角になる位置へ動く。
移動の最中、2人は交差し距離も近い。
しかし接触する事はなく、
お互いの死角を埋める形で移動し、体勢を整える。
その動きを見て、オルオが呟く。
「……今、合図あったか?」
エルドとグンタは、
驚きを隠せない様子で、首を横に振る。
「「 ……いや 」」
2人の目の前には、二体の模型。
一体の模型が横に揺れ、
レイの視界が、枝の影に遮られる。
刹那の迷い。
その一瞬、ほんの僅かに軌道が鈍る。
他の4人は気付かない。
だが──
レイの迷いを察知したリヴァイは、
既に動きを変えていた。
(……遅れた)
レイも即時に気づき、すぐに修正。
アンカーを打ち直し、加速する。
二つの斬撃が、ほぼ同時に落ちた。
うなじの切れる乾いた音と共に、
巨人模型が崩れた。
━━━
訓練終了──
2人の息は、一切乱れていない。
レイはブレードを鞘に収め、
リヴァイの前に立つ。
「……判断が鈍りました。すみません。」
静かに頭を下げ、謝罪した。
オルオが眉を寄せる。
「……は?」
何に対してだ。
そう言いたげな顔。
他の班員も同じような表情をしていた。
「修正は早かった、問題ねぇ。」
「ただ、戦場では一瞬の迷いが生死を左右する。 肝に銘じておけ。」
「はい。」
叱責でも、称賛でもない。
そこにあるのは、
“理解している者”同士のやり取り。
その様子を見て、ペトラはハッキリと感じる。
私たちはきっと強い。
だから、リヴァイ兵長の班に選ばれた。
でも、あの2人は──
次元が違う。
思考や動きの基準が全く違う。
“圧倒的強さ” を持った者同士にしか
理解が及ばない領域。
追いかける背中は、あまりにも遠い。
訓練後の森には涼しい風が吹き、
班員たちの頬を撫でていた。
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